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004_入学
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004_入学
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王立レイジング学園の試験結果が発表される日になったが、手続きは本人でなくていいから執事が学園に向かった。
合格すると思っているが、まかり間違って不合格になった時は万歳三唱しちゃうかもしれない。
執事が帰って来て俺の合格を告げた時は、ちょっと落ち込んでしまった。
「落ちていればいいと思っていただろ?」
「いやですねー、あの程度の試験問題で落ちるほうが難しいですよ……」
残念だけど。
「まあいい。それとリーン様のことだがな」
「ん? 王女様がどうかしましたか?」
「お前、興味失うの早すぎだぞ」
「平民と王族は一生交わることのない存在ですよ」
パパは深いため息を吐いた。幸運が逃げると言いますから、ため息を吐いたらダメですよ。
「国王陛下がお前に謝罪したいと言っている」
「意味が分かりません」
「陛下はお前とリーン様の婚約をこのまま進めたいと仰っているのだ」
「リーン様にその気がなく、俺のことを嫌っていそうな感じでした。それなのに婚約とか国王の頭は腐っているのですか?」
「間違っても陛下の前でそんな口はきくなよ」
「いやですねー。俺が二枚舌なのはパパも知っているでしょ」
「自分のことを二枚舌と言う奴は、お前くらいなものだ」
目頭を揉みほぐす仕草が渋いですね。目薬を調合してあげますよ。
「とにかくだ。後日時間を作って直接謝罪すると仰っている。そのつもりでいるように」
「分かりました。そのつもりで心を殺して待っています」
「心を殺すような話か?」
「俺にとっては、とても大きなことです」
「まあ、陛下が謝罪するのだから、大きなことなんだがな……」
パパが下がっていいと言うので、部屋に戻った。
・
・
・
入学式の朝、俺はいつものようにミネルバに起こされた。
ミネルバが額の上で跳ねるから、すぐに朝だと分かる。
学園の入学式は、学園長の長い話に意識が飛びそうになった。
あの白髪の学園長は、この国でも有数の魔法使いだ。昔は数々の戦場で敵や魔物を殺しまくったらしい。怖いよね~。
そんな学園長も今は好々爺然とした雰囲気を纏った老人だ。
入学式には国王やパパも来ている。
国王が参列しているということは、リーン様はちゃんと合格して入学したことを示している。
在校生代表からの言葉があり、次は新入生代表の言葉だ。
舞台に上ったのは、あのリーン様だ。相変わらずの美少女で見ているだけなら目の保養になる。
美人は手が届かないほうがいい。下手に届いてしまうと、その性格の悪さだとかが見えてしまうからね。
入学式が終わったら、各教室で待機。
だけど、俺だけ別室に連れて行かれた。
そこで国王とパパがソファーに座っていたので、慇懃に挨拶した。
国王は謝罪を口にした。国王が真剣に謝罪しているのは、その顔を見れば分かる。
一国の国王がここまで頭を下げるんだから、謝罪を受け入れるのが筋なんだろう。いくら俺が奇人変人でもそれくらいは理解できる。
ただその謝罪を受け入れてしまうと、婚約話が復活してしまう。どうしたものか。
「陛下がここまで仰っているのですから、今回のことは水に流すとしましょう」
俺が考えていると、パパが謝罪を受け入れてしまった。しかも俺が言葉を発しようとすると、テーブルの下で足を踏んで来た。意外とそれ痛いから。
「お前はもう戻りなさい」
厄介払いする気だな。ちっ、しょうがない。ここはパパの顔を立ててやるか。
Sクラスは成績優秀な者が集められたクラスらしい。
残念ながらリーン様もSクラスで、どうしても顔を合わせてしまう。
俺は絶妙なタイミングで視線が合わないようにしている。俺は空気を読める奴なのだ。
リーン様の周りに貴族たちが集まるが、俺が近づかない限りは向こうは何もしないだろう。
「王女様に挨拶をしなくて良いのですか」
そう言ってきたのは、真っ赤な髪をした大柄なロックだ。
ロックは騎士家の五男で、その騎士家は公爵家に仕えている。
俺とは幼馴染になり、幼い時から一緒に剣の稽古をしてきた仲だ。そのロックも俺と同じSクラスだ。まあ、従者枠だけどね。
一応、貴族には従者枠がある。
男爵家と子爵家の子供は1人、伯爵と侯爵は2人、公爵と王族は3人だ。
従者も入学試験を受けて合格しないといけないが、成績が悪くても主人と同じクラスになる。
逆に主人の成績が悪いと、Jクラスということもある。
平民に従者枠はないが、成績が良ければSクラスに入ることができる。
俺の従者枠は3枠あるんだが、使っているのはロック1人だ。
俺は要らないと言ったんだが、パパがどうしてもと言うのでロックだけにしてもらった。
「王女様に話しかけないと約束したから大丈夫だ」
「でも、そこら辺の話は国王陛下から再考してほしいと言われているのでしょ?」
再考どころか先ほど謝罪されて、パパが受けちゃったよ。はぁ……。
「陛下からそう言われていても、リーン様から言われてないから放置で問題なし」
Sクラスの多くは貴族の子供で、リーン様に群がっている。
その集団から離れているのは、俺とロック、他に数人が居る。この数人は平民なんだろう。王族や貴族に声をかけると、不敬だとか言われるからね。
身分社会なんてこんなものだよ。
「当主様からスピナー様が問題を起こさないように、しっかりと監視するように言われているので問題は起こさないでくださいよ」
従者のくせに、なんてこと言うんだよ。俺はこれでも清廉潔白な少年だぞ。問題なんか起こさないぞ。
「俺よりお前のほうが問題起こすなよ」
「いやだなー。俺はいつもスピナー様の命令で悪事に加担させられているんですよ。おかげでオヤジに何度鉄拳制裁されたか分かっているのですか?」
「人聞きの悪いこと言うなよ。俺が悪党みたいじゃないか」
まったくこいつは。
004_入学
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王立レイジング学園の試験結果が発表される日になったが、手続きは本人でなくていいから執事が学園に向かった。
合格すると思っているが、まかり間違って不合格になった時は万歳三唱しちゃうかもしれない。
執事が帰って来て俺の合格を告げた時は、ちょっと落ち込んでしまった。
「落ちていればいいと思っていただろ?」
「いやですねー、あの程度の試験問題で落ちるほうが難しいですよ……」
残念だけど。
「まあいい。それとリーン様のことだがな」
「ん? 王女様がどうかしましたか?」
「お前、興味失うの早すぎだぞ」
「平民と王族は一生交わることのない存在ですよ」
パパは深いため息を吐いた。幸運が逃げると言いますから、ため息を吐いたらダメですよ。
「国王陛下がお前に謝罪したいと言っている」
「意味が分かりません」
「陛下はお前とリーン様の婚約をこのまま進めたいと仰っているのだ」
「リーン様にその気がなく、俺のことを嫌っていそうな感じでした。それなのに婚約とか国王の頭は腐っているのですか?」
「間違っても陛下の前でそんな口はきくなよ」
「いやですねー。俺が二枚舌なのはパパも知っているでしょ」
「自分のことを二枚舌と言う奴は、お前くらいなものだ」
目頭を揉みほぐす仕草が渋いですね。目薬を調合してあげますよ。
「とにかくだ。後日時間を作って直接謝罪すると仰っている。そのつもりでいるように」
「分かりました。そのつもりで心を殺して待っています」
「心を殺すような話か?」
「俺にとっては、とても大きなことです」
「まあ、陛下が謝罪するのだから、大きなことなんだがな……」
パパが下がっていいと言うので、部屋に戻った。
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入学式の朝、俺はいつものようにミネルバに起こされた。
ミネルバが額の上で跳ねるから、すぐに朝だと分かる。
学園の入学式は、学園長の長い話に意識が飛びそうになった。
あの白髪の学園長は、この国でも有数の魔法使いだ。昔は数々の戦場で敵や魔物を殺しまくったらしい。怖いよね~。
そんな学園長も今は好々爺然とした雰囲気を纏った老人だ。
入学式には国王やパパも来ている。
国王が参列しているということは、リーン様はちゃんと合格して入学したことを示している。
在校生代表からの言葉があり、次は新入生代表の言葉だ。
舞台に上ったのは、あのリーン様だ。相変わらずの美少女で見ているだけなら目の保養になる。
美人は手が届かないほうがいい。下手に届いてしまうと、その性格の悪さだとかが見えてしまうからね。
入学式が終わったら、各教室で待機。
だけど、俺だけ別室に連れて行かれた。
そこで国王とパパがソファーに座っていたので、慇懃に挨拶した。
国王は謝罪を口にした。国王が真剣に謝罪しているのは、その顔を見れば分かる。
一国の国王がここまで頭を下げるんだから、謝罪を受け入れるのが筋なんだろう。いくら俺が奇人変人でもそれくらいは理解できる。
ただその謝罪を受け入れてしまうと、婚約話が復活してしまう。どうしたものか。
「陛下がここまで仰っているのですから、今回のことは水に流すとしましょう」
俺が考えていると、パパが謝罪を受け入れてしまった。しかも俺が言葉を発しようとすると、テーブルの下で足を踏んで来た。意外とそれ痛いから。
「お前はもう戻りなさい」
厄介払いする気だな。ちっ、しょうがない。ここはパパの顔を立ててやるか。
Sクラスは成績優秀な者が集められたクラスらしい。
残念ながらリーン様もSクラスで、どうしても顔を合わせてしまう。
俺は絶妙なタイミングで視線が合わないようにしている。俺は空気を読める奴なのだ。
リーン様の周りに貴族たちが集まるが、俺が近づかない限りは向こうは何もしないだろう。
「王女様に挨拶をしなくて良いのですか」
そう言ってきたのは、真っ赤な髪をした大柄なロックだ。
ロックは騎士家の五男で、その騎士家は公爵家に仕えている。
俺とは幼馴染になり、幼い時から一緒に剣の稽古をしてきた仲だ。そのロックも俺と同じSクラスだ。まあ、従者枠だけどね。
一応、貴族には従者枠がある。
男爵家と子爵家の子供は1人、伯爵と侯爵は2人、公爵と王族は3人だ。
従者も入学試験を受けて合格しないといけないが、成績が悪くても主人と同じクラスになる。
逆に主人の成績が悪いと、Jクラスということもある。
平民に従者枠はないが、成績が良ければSクラスに入ることができる。
俺の従者枠は3枠あるんだが、使っているのはロック1人だ。
俺は要らないと言ったんだが、パパがどうしてもと言うのでロックだけにしてもらった。
「王女様に話しかけないと約束したから大丈夫だ」
「でも、そこら辺の話は国王陛下から再考してほしいと言われているのでしょ?」
再考どころか先ほど謝罪されて、パパが受けちゃったよ。はぁ……。
「陛下からそう言われていても、リーン様から言われてないから放置で問題なし」
Sクラスの多くは貴族の子供で、リーン様に群がっている。
その集団から離れているのは、俺とロック、他に数人が居る。この数人は平民なんだろう。王族や貴族に声をかけると、不敬だとか言われるからね。
身分社会なんてこんなものだよ。
「当主様からスピナー様が問題を起こさないように、しっかりと監視するように言われているので問題は起こさないでくださいよ」
従者のくせに、なんてこと言うんだよ。俺はこれでも清廉潔白な少年だぞ。問題なんか起こさないぞ。
「俺よりお前のほうが問題起こすなよ」
「いやだなー。俺はいつもスピナー様の命令で悪事に加担させられているんですよ。おかげでオヤジに何度鉄拳制裁されたか分かっているのですか?」
「人聞きの悪いこと言うなよ。俺が悪党みたいじゃないか」
まったくこいつは。
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