24 / 58
妖精王は激おこだ(妖精王視点)
しおりを挟む
我が愛しい花嫁、アイリ。
約束の10年までまだ時間があったが、アイリを妖精として迎え入れる準備が早く整ったのでいてもたってもいられず彼女の元へと急いだ。
なんと、妖精世界でも滅多に咲かないとても珍しい高位な花の種が手に入ったのだ。これこそまさに女王の花。
この花の妖精に生まれ変われれば我の次かまたは同等の地位の妖精になれるはず。我が花嫁にこそふさわしい地位だろう。きっとアイリも喜んで受け入れてくれるはずだとアイリの気配を辿って行くと、そこには衝撃的な光景があった。
とても美しく成長したアイリの側に見知らぬ男がいた。最初はただの人間かと思ったが違和感を感じる。
そうだ、上手く擬態しているようだがこの男はアイリに呪いをかけた吸血鬼だ。
なんということだ、我が少し目を離した隙にまさか吸血鬼が直々にアイリを狙ってやって来ていたとは。きっと人間の姿でアイリを騙して近づき、呪いの成就をするつもりなのだろうがそんなことは我がさせない。
本当ならまずはアイリと運命の出会いを演出してから本人の意思でこの種を飲み込んでもらわねばならないのだが、あまり時間をかけていては吸血鬼に気づかれてしまうかもしれないからな。
そうだ、この種をアイリの体にそっと忍ばせよう。そしてアイリの生命力と吸血鬼の呪いの力を一気に吸いとらせればよい。体内でじっくり育てるのに比べて急速に生命力をすいとることになるからアイリに負担をかけてしまうことになるが、この種が発芽さえ出来ればすぐにでもアイリは人間としての生を終えて女王の花の妖精に生まれ変われる。
発芽するまで絶対に気づかれないように何重にも魔力をかけておけば、いくら吸血鬼といえど簡単には気づくまい。
風に乗せてアイリの髪の中に種を忍ばせる。大丈夫だ、吸血鬼は気づいていない。我があまり近くにいると勘づかれるかもしれないから、発芽するまで離れていよう。
女王の種が発芽したのを感じた。あの花は意思を持つから我を呼んでいるようだ。
急いでアイリの待つ部屋へと向かう。女王の種が我の想いをアイリに伝えてくれているはずだ。きっとアイリは我の事を待っているはずだろう。
しかし、次に聞こえたのは女王の種の悲鳴だった。窓の外から見えた光景に目を疑った。あの吸血鬼が女王の種を握り潰していたのだ。
そしてとんでもないことをしようとしているではないか。人間の擬態を解き、血のように赤い汚ならしい瞳をいやらしく細め、牙の覗く唇をつり上げて、アイリの服を脱がしていたのだ。
なんということだ、あの吸血鬼は無理矢理アイリに穢らわしいことをしようとしているのだ。
アイリは抵抗もできずにぐったりとしている。もしや何か薬でも盛られたのかもしれない。
おのれ吸血鬼め!
我はアイリを救おうと窓に手をかけるが、瞬時に弾かれてしまった。いつの間にか吸血鬼の作った結界が施されていたようだ。まさかこんな強力な結界を施しているなんて気付かなかった。これでは我は近づけない。
さらにその結界はだんだん不透明になり我の視界からアイリの姿を奪っていった。最後に見えたのは、吸血鬼が自身の服を脱ぎ捨てアイリの体を抱き寄せる姿だった。
完全に部屋の中は見えなくなり、我の体は結界に再び弾かれその衝撃で遠くに飛ばされた。
吸血鬼が憎い。我が運命の花嫁を我から奪い汚した。この罪は何千回殺しても償えるものではない。
さらには妖精世界の女王の種をも殺したのだ。その身を引き裂き、八つ裂きにしてもまだ足らない。この怒りをどうしてくれよう!
「この妖精王を敵に回したこと後悔させてやる」
どす黒いオーラが妖精王の体から溢れた。
約束の10年までまだ時間があったが、アイリを妖精として迎え入れる準備が早く整ったのでいてもたってもいられず彼女の元へと急いだ。
なんと、妖精世界でも滅多に咲かないとても珍しい高位な花の種が手に入ったのだ。これこそまさに女王の花。
この花の妖精に生まれ変われれば我の次かまたは同等の地位の妖精になれるはず。我が花嫁にこそふさわしい地位だろう。きっとアイリも喜んで受け入れてくれるはずだとアイリの気配を辿って行くと、そこには衝撃的な光景があった。
とても美しく成長したアイリの側に見知らぬ男がいた。最初はただの人間かと思ったが違和感を感じる。
そうだ、上手く擬態しているようだがこの男はアイリに呪いをかけた吸血鬼だ。
なんということだ、我が少し目を離した隙にまさか吸血鬼が直々にアイリを狙ってやって来ていたとは。きっと人間の姿でアイリを騙して近づき、呪いの成就をするつもりなのだろうがそんなことは我がさせない。
本当ならまずはアイリと運命の出会いを演出してから本人の意思でこの種を飲み込んでもらわねばならないのだが、あまり時間をかけていては吸血鬼に気づかれてしまうかもしれないからな。
そうだ、この種をアイリの体にそっと忍ばせよう。そしてアイリの生命力と吸血鬼の呪いの力を一気に吸いとらせればよい。体内でじっくり育てるのに比べて急速に生命力をすいとることになるからアイリに負担をかけてしまうことになるが、この種が発芽さえ出来ればすぐにでもアイリは人間としての生を終えて女王の花の妖精に生まれ変われる。
発芽するまで絶対に気づかれないように何重にも魔力をかけておけば、いくら吸血鬼といえど簡単には気づくまい。
風に乗せてアイリの髪の中に種を忍ばせる。大丈夫だ、吸血鬼は気づいていない。我があまり近くにいると勘づかれるかもしれないから、発芽するまで離れていよう。
女王の種が発芽したのを感じた。あの花は意思を持つから我を呼んでいるようだ。
急いでアイリの待つ部屋へと向かう。女王の種が我の想いをアイリに伝えてくれているはずだ。きっとアイリは我の事を待っているはずだろう。
しかし、次に聞こえたのは女王の種の悲鳴だった。窓の外から見えた光景に目を疑った。あの吸血鬼が女王の種を握り潰していたのだ。
そしてとんでもないことをしようとしているではないか。人間の擬態を解き、血のように赤い汚ならしい瞳をいやらしく細め、牙の覗く唇をつり上げて、アイリの服を脱がしていたのだ。
なんということだ、あの吸血鬼は無理矢理アイリに穢らわしいことをしようとしているのだ。
アイリは抵抗もできずにぐったりとしている。もしや何か薬でも盛られたのかもしれない。
おのれ吸血鬼め!
我はアイリを救おうと窓に手をかけるが、瞬時に弾かれてしまった。いつの間にか吸血鬼の作った結界が施されていたようだ。まさかこんな強力な結界を施しているなんて気付かなかった。これでは我は近づけない。
さらにその結界はだんだん不透明になり我の視界からアイリの姿を奪っていった。最後に見えたのは、吸血鬼が自身の服を脱ぎ捨てアイリの体を抱き寄せる姿だった。
完全に部屋の中は見えなくなり、我の体は結界に再び弾かれその衝撃で遠くに飛ばされた。
吸血鬼が憎い。我が運命の花嫁を我から奪い汚した。この罪は何千回殺しても償えるものではない。
さらには妖精世界の女王の種をも殺したのだ。その身を引き裂き、八つ裂きにしてもまだ足らない。この怒りをどうしてくれよう!
「この妖精王を敵に回したこと後悔させてやる」
どす黒いオーラが妖精王の体から溢れた。
6
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
婚約者は幼馴染みを選ぶようです。
香取鞠里
恋愛
婚約者のハクトには過去に怪我を負わせたことで体が不自由になってしまった幼馴染がいる。
結婚式が近づいたある日、ハクトはエリーに土下座して婚約破棄を申し出た。
ショックではあったが、ハクトの事情を聞いて婚約破棄を受け入れるエリー。
空元気で過ごす中、エリーはハクトの弟のジャックと出会う。
ジャックは遊び人として有名だったが、ハクトのことで親身に話を聞いて慰めてくれる。
ジャックと良い雰囲気になってきたところで、幼馴染みに騙されていたとハクトにエリーは復縁を迫られるが……。
アリシアの恋は終わったのです。
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
義妹がすぐに被害者面をしてくるので、本当に被害者にしてあげましょう!
新野乃花(大舟)
恋愛
「フランツお兄様ぁ〜、またソフィアお姉様が私の事を…」「大丈夫だよエリーゼ、僕がちゃんと注意しておくからね」…これまでにこのような会話が、幾千回も繰り返されれきた。その度にソフィアは夫であるフランツから「エリーゼは繊細なんだから、言葉や態度には気をつけてくれと、何度も言っているだろう!!」と責められていた…。そしてついにソフィアが鬱気味になっていたある日の事、ソフィアの脳裏にあるアイディアが浮かんだのだった…!
※過去に投稿していた「孤独で虐げられる気弱令嬢は次期皇帝と出会い、溺愛を受け妃となる」のIFストーリーになります!
※カクヨムにも投稿しています!
大好きだったあなたはもう、嫌悪と恐怖の対象でしかありません。
ふまさ
恋愛
「──お前のこと、本当はずっと嫌いだったよ」
「……ジャスパー?」
「いっつもいっつも。金魚の糞みたいにおれの後をついてきてさ。鬱陶しいったらなかった。お前が公爵令嬢じゃなかったら、おれが嫡男だったら、絶対に相手になんかしなかった」
マリーの目が絶望に見開かれる。ジャスパーとは小さな頃からの付き合いだったが、いつだってジャスパーは優しかった。なのに。
「楽な暮らしができるから、仕方なく優しくしてやってただけなのに。余計なことしやがって。おれの不貞行為をお前が親に言い付けでもしたら、どうなるか。ったく」
続けて吐かれた科白に、マリーは愕然とした。
「こうなった以上、殺すしかないじゃないか。面倒かけさせやがって」
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
元妃は多くを望まない
つくも茄子
恋愛
シャーロット・カールストン侯爵令嬢は、元上級妃。
このたび、めでたく(?)国王陛下の信頼厚い側近に下賜された。
花嫁は下賜された翌日に一人の侍女を伴って郵便局に赴いたのだ。理由はお世話になった人達にある書類を郵送するために。
その足で実家に出戻ったシャーロット。
実はこの下賜、王命でのものだった。
それもシャーロットを公の場で断罪したうえでの下賜。
断罪理由は「寵妃の悪質な嫌がらせ」だった。
シャーロットには全く覚えのないモノ。当然、これは冤罪。
私は、あなたたちに「誠意」を求めます。
誠意ある対応。
彼女が求めるのは微々たるもの。
果たしてその結果は如何に!?
成り上がり令嬢暴走日記!
笹乃笹世
恋愛
異世界転生キタコレー!
と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎
えっあの『ギフト』⁉︎
えっ物語のスタートは来年⁉︎
……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎
これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!
ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……
これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー
果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?
周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる