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《14》悪役令嬢は求婚される

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 は ず か し ぬ 。

 今の私の心情を表すなら、もうこれしかない。

 突然お母様付きのメイドたちに拉致された時は驚いたが、まさかお母様へ宛てられたお父様からの手紙の内容が暗号になっていて私の恋路の相談がされていたなんて恥ずかしすぎて顔から煙が出そうになった。

 お父様が、私のルークへの気持ちに気付いていたなんて……!しかも初恋(最推し)で拗らせている事まで丸バレだったなんて……!!

 いつから?どこからバレてたの?!

 慌てふためきパニック状態の私をメイドたちは淡々とした様子でお母様の座る椅子の後ろに押し込んでくる。もうオーバーヒート寸前の私はふかふかのクッションの上に借りてきた猫状態でちょこんと座るしかなかったのだ。

 そしてしばらくするとルークがつれてこられ、先程のお母様との会話となったのである。




 メイドたちにルークの前まで連れてこられたが、ルークの顔をまともに見ることが出来ない。

 ルークが、私のことを?ほんとに?

 夢でも見てるんじゃないかと頬をつねろうとすると、その手をルークの手が優しく包んできた。

「……御主人様、もしかして本当にオレの気持ちに気付いてなかったんだ?」

「ル、ルーク……だって、まさかそんな……」

 その悲しそうな声に思わず顔をあげると、優しく微笑むルークが私を見つめていた。

「好きだよ」

 私も好き。大好きなの。

「ずっと側にいてほしいと思ってる」

 私も、ルークの側にいたい。ずっと一緒にいたいの。

 触れ合っている手が熱を帯びて熱い。これはもしかして、本当に私の気持ちを伝えても大丈夫だと、神様がくれたチャンスなのかもしれない。と思った。

「わ、私……も。私も、ルークの事がーーーー「ちょっとまったぁぁぁーーーーっ!」ひゃん?!」

 なにやらファサッとした衝撃が体に触れた。よく見るとあの猫耳美少年がいつの間にか私に抱きついてきていたのだ。

「エメリアの事ならぼくだって好きだぞ!」

 そう言って「シャーッ!」とルークに威嚇し始める猫耳美少年。その有様はものすごく可愛らしいのだが、ルークに告白しようとしているところを目撃された恥ずかしさで死にそうだ。

「あら、いいところだったのに」

 離れた所から見守ってくれていたお母様が残念そうにしていた。……そういえばお母様やメイドがいたんだったわ。舞い上がってすっかり存在を忘れていた。

「エメリア!ぼくもエメリアが好きだぞ!どうしてもぼくをペットにするのは嫌なのか?!それなら……

ぼくの番になって結婚してくれ!」

 まさかのプロポーズ。つ、つがい?って何?!

「こぉんのクソガキ!御主人様から離れろ!」

「うるさいぞ生意気従者!エメリアはぼくのものだ!」

 猫耳美少年はルークを威嚇しながら私から離れようとしない。困った私はお母様に助けを求めたのだが……お母様も困っていた。

「あら、どうしましょう。ルークくん、その子に危害を加えてはダメよ。国際問題になってしまうわ」

「え?国際問題?」

 するとお母様は肩を竦めた。こんな風に困っているお母様はかなり希少だ。だいたいのことは力技で蹴散らしてしまう人なのに、今だけは公爵夫人の顔をしている。

 そして、ものすごい爆弾発言をしてきたのだ。

「実はその子、獣人の国の皇太子なのよ。獣人は生涯の伴侶を“番”と呼び一生を添い遂げる種族なんだけど……。つまり、エメリアちゃんは公爵令嬢として一国の皇太子から結婚を申し込まれてしまったわ。今のエメリアちゃんは婚約者もいない状態だし、獣人は一度決めたらなかなか諦めないから……大変よ」

ため息をつきつつ「せめてペットにするのを了承しておけばよかったのに」と呟かれたが、いやいや、一国の皇太子をペットにするのは余計にダメなのでは?!

「エメリアの母上。いや、公爵夫人。ぼくは正式にエメリアに結婚を申し込むぞ!獣人は自分の番は自分で決める。それが獣人の決まりだ。獣人の皇帝と、カーウェルド公爵に連絡を頼む」

「……仕方ありませんわね。承知致しました」

 さすがに他国の皇太子に逆らえるはずなく、お母様が(珍しく)ちゃんと対応しているのにも驚いたがなによりも力が抜けて私はその場にヘナヘナと座り込んでしまったのだった。


 ……あれ?結局私の告白はお預けなのでは……?!と気づいたのはもう少し後の事である。

    
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