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46 防御力って大切ですよね
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びしょ濡れのまま(ジルさんに殴られて)気絶した王太子を置き去りにして部屋を抜け出ると、ターイズさんの案内で隠し部屋へと入り込みました。ちょっと狭いですが通り抜けるには問題なさそうです……が、どこへ向かう道なのかしら?
「ここから抜け道を使いますが、その前にまず聖女様は着替えをなさった方がいいかと……」
ターイズさんがこほん。と咳払いをして視線をそらすのを見て、はっ!となりました。よく見れば私の着ているワンピースの後ろ部分が真っ赤に染まっていました。避けたつもりでしたがあの時王太子が投げたワインの中身を背中に被っていたようです。
「お、お見苦しい姿をお見せしてしまって……申し訳ありません」
なるほど、さっきジルさんが言いかけたことはこれのことだったんですね。きっとみっともないからどうにかしろと言いたかったのでしょう。うぅ、……恥ずかしいです。
「あ、あの!クローゼットにやたらスケスケの寝間着しか入っていなかったので、仕方なく持ってきていた簡素なワンピースを着ていたのですが……こんなに汚れてしまっていてはこのまま着ていられませんね。どうしましょう、他の着替えを持っていなくて……」
やっぱり聖女の正装のドレスを洗濯しなければよかったかも。とちょっぴり後悔してしまいました。まさかワインまみれになるなんて思わないじゃないですか。
「……は?クローゼットにスケスケの寝間着しか入ってなかったってーーーーまさか、あいつ最初から狙ってやがったんじゃ……くそっ、踏み潰して殺ればよかった」
ジルさんがなにやら眉を顰めながらブツブツと独り言を言い始めました。なんて言ってるのかはよく聞き取れませんでしたが、やっぱり兄弟とはいえ確執があるのでしょうか。
「あ、あの。こんな汚れた格好でごめんなさい……」
「いや、えーと……そうだな。とりあえず侍女用の服を着ておいてくれる?適当な服が他にないしドレスだと目立つから……」
「は、はい」
「……いや、でも素朴な格好もかわい……な、なんでもない!とにかく早く着替えて先に進もう!」
「?」
予備に置いてあったであろう侍女の制服を手渡し、ジルさんは壁と向き合ってなにやらブツブツ言い出しました。それをターイズさんがなぐさめるように肩をぽんぽんと叩いていますが何があったんでしょうか……。ついでにアニーがものすごい形相でジルさんをガン見しています。なんですかその顔。瞬きもしないなんて……目が乾燥してしまいますよ?
ふたりに後ろを向いてもらい、アニーも一緒に手早く着替えます。やはり侍女用の制服なので動きやすそうですね。丈夫そうですし普通のワンピースよりこれで防御力がだいぶあがった気がします!アニーも「お揃いですね!」となんだか嬉しそうなので私もちょっと気が楽になりました。
ただ、アニーに実は私は偽の聖女としてここに来たのだと告げるタイミングをずっと逃しているので罪悪感は残っているのですが……。さっきまでもそうですが、今ここで言うのもなんだか違う気がします。だって、それを言ったら絶対にジルさんを糾弾しそうですし……。私も納得してのことだと言ってもアニーが暴走しそうで怖いですしね。タイミングって難しいです……とりあえずは状況を見るしかないですね。
「お待たせしました。それで、これから行くという秘密の場所ってどんな所なんですか?」
「ん、あぁ……。まずは王宮の離れの屋敷に行くよ。そこにロティーナに会わせたい人がいるんだ。その人ならロティーナの味方になってくれるよ……きっとね」
ジルさんは優しく微笑み、私の手を握りしめました。
「……離れに移動しながら全部話すよ、オレのこと。もう絶対に嘘はつかないって約束するから、信じてくれる?」
「……いいですよ。約束です」
こうして私はジルさんの過去を知りました。そして、これからジルさんのお母様に会いに行くのだと……。
そういえば、なぜかアニーがずっとジルさんを睨んでいるようなんですが……どうしたのかしら?
「ここから抜け道を使いますが、その前にまず聖女様は着替えをなさった方がいいかと……」
ターイズさんがこほん。と咳払いをして視線をそらすのを見て、はっ!となりました。よく見れば私の着ているワンピースの後ろ部分が真っ赤に染まっていました。避けたつもりでしたがあの時王太子が投げたワインの中身を背中に被っていたようです。
「お、お見苦しい姿をお見せしてしまって……申し訳ありません」
なるほど、さっきジルさんが言いかけたことはこれのことだったんですね。きっとみっともないからどうにかしろと言いたかったのでしょう。うぅ、……恥ずかしいです。
「あ、あの!クローゼットにやたらスケスケの寝間着しか入っていなかったので、仕方なく持ってきていた簡素なワンピースを着ていたのですが……こんなに汚れてしまっていてはこのまま着ていられませんね。どうしましょう、他の着替えを持っていなくて……」
やっぱり聖女の正装のドレスを洗濯しなければよかったかも。とちょっぴり後悔してしまいました。まさかワインまみれになるなんて思わないじゃないですか。
「……は?クローゼットにスケスケの寝間着しか入ってなかったってーーーーまさか、あいつ最初から狙ってやがったんじゃ……くそっ、踏み潰して殺ればよかった」
ジルさんがなにやら眉を顰めながらブツブツと独り言を言い始めました。なんて言ってるのかはよく聞き取れませんでしたが、やっぱり兄弟とはいえ確執があるのでしょうか。
「あ、あの。こんな汚れた格好でごめんなさい……」
「いや、えーと……そうだな。とりあえず侍女用の服を着ておいてくれる?適当な服が他にないしドレスだと目立つから……」
「は、はい」
「……いや、でも素朴な格好もかわい……な、なんでもない!とにかく早く着替えて先に進もう!」
「?」
予備に置いてあったであろう侍女の制服を手渡し、ジルさんは壁と向き合ってなにやらブツブツ言い出しました。それをターイズさんがなぐさめるように肩をぽんぽんと叩いていますが何があったんでしょうか……。ついでにアニーがものすごい形相でジルさんをガン見しています。なんですかその顔。瞬きもしないなんて……目が乾燥してしまいますよ?
ふたりに後ろを向いてもらい、アニーも一緒に手早く着替えます。やはり侍女用の制服なので動きやすそうですね。丈夫そうですし普通のワンピースよりこれで防御力がだいぶあがった気がします!アニーも「お揃いですね!」となんだか嬉しそうなので私もちょっと気が楽になりました。
ただ、アニーに実は私は偽の聖女としてここに来たのだと告げるタイミングをずっと逃しているので罪悪感は残っているのですが……。さっきまでもそうですが、今ここで言うのもなんだか違う気がします。だって、それを言ったら絶対にジルさんを糾弾しそうですし……。私も納得してのことだと言ってもアニーが暴走しそうで怖いですしね。タイミングって難しいです……とりあえずは状況を見るしかないですね。
「お待たせしました。それで、これから行くという秘密の場所ってどんな所なんですか?」
「ん、あぁ……。まずは王宮の離れの屋敷に行くよ。そこにロティーナに会わせたい人がいるんだ。その人ならロティーナの味方になってくれるよ……きっとね」
ジルさんは優しく微笑み、私の手を握りしめました。
「……離れに移動しながら全部話すよ、オレのこと。もう絶対に嘘はつかないって約束するから、信じてくれる?」
「……いいですよ。約束です」
こうして私はジルさんの過去を知りました。そして、これからジルさんのお母様に会いに行くのだと……。
そういえば、なぜかアニーがずっとジルさんを睨んでいるようなんですが……どうしたのかしら?
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