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37 幸運の風向き(隣国の王子視点)
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おかしい。おかしいぞ……!なにがどうなっているんだ?!
さっきの聖女の素っ気ない素振りといい、父の態度といい、どれもが予想と違い過ぎていて俺は混乱していた。
「しかし……」
混乱しながらもソワソワしてしまう自分がいるのも確かだ。実はさっきの聖女の素っ気なく冷たい態度が気になって仕方ないのだ。あんなに慈愛に満ちた優雅な微笑みを浮かべているのに言葉の端々に感じる冷たい拒否の意思。それに、俺を見つめる時だけ突き刺さるような感情を感じた。
そう、つまりあれは俺だけに向けられた特別な感情なのだと。
それを思い出すだけで、なんだか……背筋がゾクゾクとしてなんとも不思議な快感が体の芯を突き抜ける。 こんな感情は生まれて初めてだ。
あの時のロティーナの顔と態度を脳裏に思い浮かべれば、なにやら体温が上がり息が荒くなってきた。
一瞬、昔の婚約者……レベッカの姿を思い出すが、あいつは俺のお気に入りを虐めた上に尻軽だったからな。まぁ今となってはアミィを虐めていたことなどどうでもいいことだ。ただ俺という婚約者がいながら他の男にすり寄ったらしいという噂を聞いて俺の存在を軽く見られたと感じた。それが許せなかっただけだ。今頃は俺に逆らった事を悔いながら惨めな生活をしているだろう。
俺は特別なのだ。生まれながらにしてアールスト国の第1王子という地位を手にした。なにもかもが俺の思う通りになり、どんな願いもすぐに叶えられる。それが俺なのだ。特に幼い頃から忙しい父や母に代わって俺を育ててくれた宰相が一際俺を可愛がってくれていた。宰相のアドバイスさえ聞いていれば俺は間違えることはない。
だから、いくら父上の命令とは言え婚約者を自分で選べなかったのは不満だった。宰相にも訴えたがさすがに婚約者問題だけは口を出せないと言われた。
国の為の政略結婚とはいえ、あんな女になど何の価値もない。だいたい婚約者だというのに唇すらも俺に許さなかったんだ。あの女はなんとも傲慢で生意気な女だったのだ!
アミィはちょっとワガママを聞いてやればなんでもやらせてくれたのだけは良かったが、書き置きだけで姿を消すような身勝手な女だと判明したしもうそんなに興味もない。
やはり、俺には聖女が相応しいと改めて感じた。今までの女には無いあの素っ気ない反応、俺の芯を射抜くあの眼差し、そして心の奥に見え隠れする俺にだけわかる俺への熱い想い。
なによりも、聖女だけが与えてくれるこの未知の快感! あぁ、またあの冷たい眼差しで見つめられたい!
ロティーナはたぶんツンデレなのだろう。そしてかなりの恥ずかしがり屋だ。だがどんなに隠そうとも俺にかかれば女心など手に取るようにわかってしまう。ならば、そんなロティーナの心を解放して素直にさせてやるのも男の手腕というものだろう。
よし、これでロティーナの事は解決だな。俺たちは相思相愛で決まりだ。
だが問題は父上だ。何を考えているのかさっぱりわからなくなってしまった。てっきりロティーナを俺の婚約者にしようとしているのだと思っていたのに、さっきの父上の態度にはまったくそんな気配を感じ取れなかった。しかも、母上が臥せっているなんて初耳だったし……。
「ま、まさか……!」
なんてことだ。俺は大変な事に気付いてしまった。
きっと父上はロティーナを狙っているんだ!愛人……いや、側室か?もしこのまま母上が不幸に見舞われたとなれば聖女と再婚しようなどと企んでいるということでは?!
まさか父上が若い女にうつつを抜かすなど、母上に対するなんたる裏切りか!しかし父上は国益を1番に考える金の亡者な節がある。俺が第1王子なのに立太子されないのも父上が「まだそのときではない」と渋っているからだが、俺はその理由を王太子には金がかかるからだろうと推測しているくらいだ。
だって、他に俺が立太子されない理由が思い付かない。
つまり、あの父上は国益の為に自分の娘程の年齢の女に手を出そうとしているとんだエロジジイということだ!
待っていろ、ロティーナ。俺がお前を守ってやろう。
今夜のパーティーでお前は俺の物だと父上に見せしめ、既成事実をもって正式な婚約者にしてやるからな!
「そうと決まれば、行動あるのみだな。ここは特別に俺からエスコートを申し出てやるか……ふっふっ、きっと喜ぶぞぉ……!」
俺は早速ロティーナのいる客間へと足を進めた。さすがに父上がエスコートをしたりはしないと思うが、もしもということがある。それに俺が聖女をエスコートしてパーティー会場に現れれば貴族共もきっと俺を認めるだろう。そう考えると足の動きも自然と早くなるというものだ。
そしてついにロティーナのいる部屋が見える所まで来た途端、その部屋の扉が開いた。
「ロティ……」
扉の影から桃色の髪が見え、声をかけようとした。しかしすぐ後にあの灰眼の男が連なって出てきたせいで彼女の名前が喉の奥に引っ込んでしまう。
……あの男、異国の大使だったか?大使のくせに聖女にあんなに馴れ馴れしくベタベタと……!ふん、あんな不吉な灰眼の男など俺が異国を手に入れたら真っ先に八つ裂きにしてやるからな!
本当なら今すぐふたりの間に割り入ってあの男にエスコートされているロティーナを奪い取りたかったが、なぜか足が動かなかった。
「くそっ……!」
悔しくて拳を作るが振り下ろす場所がない。イライラとした感情を抑えながらしばらくその場に突っ立っていると……1度閉められたはずの扉が再び開いた。そして、確か聖女の侍女だとかいう胸の大きい女が姿を現したのだ。その他は特に目立つ点ら何も無いがとにかく胸が大きいことだけはよく覚えている。昼間のパーティーでも壁際に立っていたが動いていないのに胸がかすかに揺れていたからだ。やはり大きい。
せっかくだし、この鬱憤をあの侍女で晴らしてもいいかもしれない。そう思っていたら、巨乳侍女の様子がおかしいではないか。焦ったようにやたらと辺りをキョロキョロと見ていて何か小さな物を握りしめているようだった。
「まさか……」
その時、直感が働いた。あの巨乳侍女は聖女からなにかを盗んだに違いない!それも重要な何かだ!
「おい、そこのお前!」
俺はやっと足を動かせすことが出来た。そして俺の存在に気付き怯える侍女を捕まえることに成功したのだ。やはり胸が大きい……ロティーナの3倍はあるな。
「あ、あなたは王子様……!?」
「お前、ロティーナの部屋から何を持ち出した?!俺に嘘は通じないからな!」
王子である俺に発見されて観念したのか、巨乳侍女はポロポロと涙を流してすぐさま頭を下げてきた。その拍子に大きな胸が激しく揺れる。思わず生唾を飲み込みそうになるがここは我慢だ。
「も、申し訳ありません……!許して下さい……!!」
侍女が体を震わせる度に揺れる胸が俺の視線を奪おうとする。いかんいかん、集中しなくては。
「さぁ、正直に話せ!」
「じ、実は……」
すると巨乳侍女はとんでもないことを口にしたのだ。
「な、なんだと……。まさか異国にそんな秘密がーーーー」
その侍女が持ち出したのは、異国で国家機密扱いされているという“香水”だった。なんとこの香水を自身に一振りかければ意中の者を魅力して従わせる事ができるらしい。しかもあの灰眼の大使はこの香水の力によって聖女を意のままに従わせているのだとか。侍女が持ち出した小瓶には少し淡い色をした液体が揺らめいている。どうやらこの香水を使ってこの国の貴族を誑かし聖女から逃げようと策略していたようだ。しかし、見た目は普通の香水なのにまさかこれが異国の国家機密だとは。
「……聖女様のお世話が嫌だったんです。お嬢様はいつも影で横暴な振る舞いをなさってきて、平民を人間扱いしてくれません。少しでも気に障るとわざわざ素足になって踏みつけてきたり、お尻をぶってくるんです。聖女に選ばれて異国へ行かれる事になったからやっと逃れられると思ったのに、わたしはお気に入りだからと無理矢理連れてこられてしまい……」
涙ながらに語られたのはまさかの聖女の本性だった。そうか、聖女はこの侍女がお気に入りなのか。確かにいい胸をしているしな。
「それにしても……もしや、む、鞭を使ったりとか……」
「そんな……わたしの口からはとても言えませんが、その……清楚な見た目なのに、裏の顔はとても淫らな方なんです」
ハァハァハァ。なんてことだ!なんてことだ!!
「いつも氷のように冷たい視線でわたしを見下して、時にはあんなことやそんなことも……」
あ、あんなことやそんなこともだとぉっ?!
俺は腹の奥が熱くなるのを感じながらいいことを考えついた。まさに名案だ。
「おい、侍女よ。この香水は1度つければずっと効果があるのか?」
「い、いえ。確か、意中の相手の目の前で自分に振りかけなければいけないと言っていました。その行為を目撃させることによって効果が出る不思議な香水だと……わたしも盗み聞きしただけなのであまり詳しくは……。ただ、お嬢様は大使様にどんな無茶振りをされても逆らいませんので効果は確かかと……!」
なるほどなるほど。つまりロティーナの目の前でこの香水を被ってそのままプロポーズしてやればロティーナは俺に従うということか!
「よし、それならその香水を俺に渡せ。そうすればお前のことは俺が保護してやろう。城で雇ってもいいし、他の貴族に紹介してやってもいいぞ」
「ほ、本当ですか?!ありがとうございます!」
こうして俺は異国の秘密を手に入れたのだ。この侍女は……まぁ、俺の世話係にでもしてやればいいだろう。
これで俺は聖女を確実に手に入れられる。異国の弱味も握った。そして父上が失態を犯したのだとわかれば、俺が次の国王に決まりだ。
俺は、俺の言いなりとなりながらも俺に向かって鞭を振るっているロティーナの姿を想像しながら香水瓶を握り締めた。ロティーナと一緒にいれば俺は新しい世界への扉を開ける気がしていた。それがどんな世界かはまだわからないが、きっと輝かしい未来だろうと確信していたのだ。
ふふふ、運が向いてきたぞ! 聖女を妻に娶り、俺がこの国と異国を手にするのだ!ふははははは!!
さっきの聖女の素っ気ない素振りといい、父の態度といい、どれもが予想と違い過ぎていて俺は混乱していた。
「しかし……」
混乱しながらもソワソワしてしまう自分がいるのも確かだ。実はさっきの聖女の素っ気なく冷たい態度が気になって仕方ないのだ。あんなに慈愛に満ちた優雅な微笑みを浮かべているのに言葉の端々に感じる冷たい拒否の意思。それに、俺を見つめる時だけ突き刺さるような感情を感じた。
そう、つまりあれは俺だけに向けられた特別な感情なのだと。
それを思い出すだけで、なんだか……背筋がゾクゾクとしてなんとも不思議な快感が体の芯を突き抜ける。 こんな感情は生まれて初めてだ。
あの時のロティーナの顔と態度を脳裏に思い浮かべれば、なにやら体温が上がり息が荒くなってきた。
一瞬、昔の婚約者……レベッカの姿を思い出すが、あいつは俺のお気に入りを虐めた上に尻軽だったからな。まぁ今となってはアミィを虐めていたことなどどうでもいいことだ。ただ俺という婚約者がいながら他の男にすり寄ったらしいという噂を聞いて俺の存在を軽く見られたと感じた。それが許せなかっただけだ。今頃は俺に逆らった事を悔いながら惨めな生活をしているだろう。
俺は特別なのだ。生まれながらにしてアールスト国の第1王子という地位を手にした。なにもかもが俺の思う通りになり、どんな願いもすぐに叶えられる。それが俺なのだ。特に幼い頃から忙しい父や母に代わって俺を育ててくれた宰相が一際俺を可愛がってくれていた。宰相のアドバイスさえ聞いていれば俺は間違えることはない。
だから、いくら父上の命令とは言え婚約者を自分で選べなかったのは不満だった。宰相にも訴えたがさすがに婚約者問題だけは口を出せないと言われた。
国の為の政略結婚とはいえ、あんな女になど何の価値もない。だいたい婚約者だというのに唇すらも俺に許さなかったんだ。あの女はなんとも傲慢で生意気な女だったのだ!
アミィはちょっとワガママを聞いてやればなんでもやらせてくれたのだけは良かったが、書き置きだけで姿を消すような身勝手な女だと判明したしもうそんなに興味もない。
やはり、俺には聖女が相応しいと改めて感じた。今までの女には無いあの素っ気ない反応、俺の芯を射抜くあの眼差し、そして心の奥に見え隠れする俺にだけわかる俺への熱い想い。
なによりも、聖女だけが与えてくれるこの未知の快感! あぁ、またあの冷たい眼差しで見つめられたい!
ロティーナはたぶんツンデレなのだろう。そしてかなりの恥ずかしがり屋だ。だがどんなに隠そうとも俺にかかれば女心など手に取るようにわかってしまう。ならば、そんなロティーナの心を解放して素直にさせてやるのも男の手腕というものだろう。
よし、これでロティーナの事は解決だな。俺たちは相思相愛で決まりだ。
だが問題は父上だ。何を考えているのかさっぱりわからなくなってしまった。てっきりロティーナを俺の婚約者にしようとしているのだと思っていたのに、さっきの父上の態度にはまったくそんな気配を感じ取れなかった。しかも、母上が臥せっているなんて初耳だったし……。
「ま、まさか……!」
なんてことだ。俺は大変な事に気付いてしまった。
きっと父上はロティーナを狙っているんだ!愛人……いや、側室か?もしこのまま母上が不幸に見舞われたとなれば聖女と再婚しようなどと企んでいるということでは?!
まさか父上が若い女にうつつを抜かすなど、母上に対するなんたる裏切りか!しかし父上は国益を1番に考える金の亡者な節がある。俺が第1王子なのに立太子されないのも父上が「まだそのときではない」と渋っているからだが、俺はその理由を王太子には金がかかるからだろうと推測しているくらいだ。
だって、他に俺が立太子されない理由が思い付かない。
つまり、あの父上は国益の為に自分の娘程の年齢の女に手を出そうとしているとんだエロジジイということだ!
待っていろ、ロティーナ。俺がお前を守ってやろう。
今夜のパーティーでお前は俺の物だと父上に見せしめ、既成事実をもって正式な婚約者にしてやるからな!
「そうと決まれば、行動あるのみだな。ここは特別に俺からエスコートを申し出てやるか……ふっふっ、きっと喜ぶぞぉ……!」
俺は早速ロティーナのいる客間へと足を進めた。さすがに父上がエスコートをしたりはしないと思うが、もしもということがある。それに俺が聖女をエスコートしてパーティー会場に現れれば貴族共もきっと俺を認めるだろう。そう考えると足の動きも自然と早くなるというものだ。
そしてついにロティーナのいる部屋が見える所まで来た途端、その部屋の扉が開いた。
「ロティ……」
扉の影から桃色の髪が見え、声をかけようとした。しかしすぐ後にあの灰眼の男が連なって出てきたせいで彼女の名前が喉の奥に引っ込んでしまう。
……あの男、異国の大使だったか?大使のくせに聖女にあんなに馴れ馴れしくベタベタと……!ふん、あんな不吉な灰眼の男など俺が異国を手に入れたら真っ先に八つ裂きにしてやるからな!
本当なら今すぐふたりの間に割り入ってあの男にエスコートされているロティーナを奪い取りたかったが、なぜか足が動かなかった。
「くそっ……!」
悔しくて拳を作るが振り下ろす場所がない。イライラとした感情を抑えながらしばらくその場に突っ立っていると……1度閉められたはずの扉が再び開いた。そして、確か聖女の侍女だとかいう胸の大きい女が姿を現したのだ。その他は特に目立つ点ら何も無いがとにかく胸が大きいことだけはよく覚えている。昼間のパーティーでも壁際に立っていたが動いていないのに胸がかすかに揺れていたからだ。やはり大きい。
せっかくだし、この鬱憤をあの侍女で晴らしてもいいかもしれない。そう思っていたら、巨乳侍女の様子がおかしいではないか。焦ったようにやたらと辺りをキョロキョロと見ていて何か小さな物を握りしめているようだった。
「まさか……」
その時、直感が働いた。あの巨乳侍女は聖女からなにかを盗んだに違いない!それも重要な何かだ!
「おい、そこのお前!」
俺はやっと足を動かせすことが出来た。そして俺の存在に気付き怯える侍女を捕まえることに成功したのだ。やはり胸が大きい……ロティーナの3倍はあるな。
「あ、あなたは王子様……!?」
「お前、ロティーナの部屋から何を持ち出した?!俺に嘘は通じないからな!」
王子である俺に発見されて観念したのか、巨乳侍女はポロポロと涙を流してすぐさま頭を下げてきた。その拍子に大きな胸が激しく揺れる。思わず生唾を飲み込みそうになるがここは我慢だ。
「も、申し訳ありません……!許して下さい……!!」
侍女が体を震わせる度に揺れる胸が俺の視線を奪おうとする。いかんいかん、集中しなくては。
「さぁ、正直に話せ!」
「じ、実は……」
すると巨乳侍女はとんでもないことを口にしたのだ。
「な、なんだと……。まさか異国にそんな秘密がーーーー」
その侍女が持ち出したのは、異国で国家機密扱いされているという“香水”だった。なんとこの香水を自身に一振りかければ意中の者を魅力して従わせる事ができるらしい。しかもあの灰眼の大使はこの香水の力によって聖女を意のままに従わせているのだとか。侍女が持ち出した小瓶には少し淡い色をした液体が揺らめいている。どうやらこの香水を使ってこの国の貴族を誑かし聖女から逃げようと策略していたようだ。しかし、見た目は普通の香水なのにまさかこれが異国の国家機密だとは。
「……聖女様のお世話が嫌だったんです。お嬢様はいつも影で横暴な振る舞いをなさってきて、平民を人間扱いしてくれません。少しでも気に障るとわざわざ素足になって踏みつけてきたり、お尻をぶってくるんです。聖女に選ばれて異国へ行かれる事になったからやっと逃れられると思ったのに、わたしはお気に入りだからと無理矢理連れてこられてしまい……」
涙ながらに語られたのはまさかの聖女の本性だった。そうか、聖女はこの侍女がお気に入りなのか。確かにいい胸をしているしな。
「それにしても……もしや、む、鞭を使ったりとか……」
「そんな……わたしの口からはとても言えませんが、その……清楚な見た目なのに、裏の顔はとても淫らな方なんです」
ハァハァハァ。なんてことだ!なんてことだ!!
「いつも氷のように冷たい視線でわたしを見下して、時にはあんなことやそんなことも……」
あ、あんなことやそんなこともだとぉっ?!
俺は腹の奥が熱くなるのを感じながらいいことを考えついた。まさに名案だ。
「おい、侍女よ。この香水は1度つければずっと効果があるのか?」
「い、いえ。確か、意中の相手の目の前で自分に振りかけなければいけないと言っていました。その行為を目撃させることによって効果が出る不思議な香水だと……わたしも盗み聞きしただけなのであまり詳しくは……。ただ、お嬢様は大使様にどんな無茶振りをされても逆らいませんので効果は確かかと……!」
なるほどなるほど。つまりロティーナの目の前でこの香水を被ってそのままプロポーズしてやればロティーナは俺に従うということか!
「よし、それならその香水を俺に渡せ。そうすればお前のことは俺が保護してやろう。城で雇ってもいいし、他の貴族に紹介してやってもいいぞ」
「ほ、本当ですか?!ありがとうございます!」
こうして俺は異国の秘密を手に入れたのだ。この侍女は……まぁ、俺の世話係にでもしてやればいいだろう。
これで俺は聖女を確実に手に入れられる。異国の弱味も握った。そして父上が失態を犯したのだとわかれば、俺が次の国王に決まりだ。
俺は、俺の言いなりとなりながらも俺に向かって鞭を振るっているロティーナの姿を想像しながら香水瓶を握り締めた。ロティーナと一緒にいれば俺は新しい世界への扉を開ける気がしていた。それがどんな世界かはまだわからないが、きっと輝かしい未来だろうと確信していたのだ。
ふふふ、運が向いてきたぞ! 聖女を妻に娶り、俺がこの国と異国を手にするのだ!ふははははは!!
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