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35 何かが違う?(隣国の王子視点)
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そうして、待ちに待ったこの日がやってきた。あれから聖女から愛の告白をされたらどう対応するかを何パターンも考えたし、聖女がどんな反応を見せてもこれなら完璧だろう。まぁ十中八九、俺の顔を見るなり頬を赤らめて擦り寄ってくるだろうがな。
さぁ、今日俺はあの異国をも手に入れる偉業を成すのだ!その偉業のためなら、聖女がどれだけ不気味で不細工だろうと我慢してやるさ……!
「ーーーーあれは」
初めて目にする聖女は、噂とは全く違っていた。
確かに不気味だと言われる桃色の髪だが、その纏う雰囲気は不気味どころか逆にとても神聖なものに感じられる。厳かな気持ちになるとでも言うところだろうか。
女ではあり得ないくらい短く整えられた髪はレースで作られた白薔薇の造花と銀細工の髪止めで飾られていた。だが決して短い髪を隠すものではなく、綺麗な後頭部のカーブがより際立ち彼女の凛とした雰囲気によく似合っていた。なんだかいい匂いまでしてきそうだ。
今まで女とはやたら長い髪をゴテゴテと飾る生き物だと思っていたし、髪の短い女など女として価値がないと教えられてきたのに根底から覆された気分だった。
遠目から見ても上等だとわかるシルクのドレスには銀の糸をふんだんに使った豪華な刺繍が施されていて下世話だがどれほどの金貨をつぎ込んでいるのかと計算したくなった。それほど異国がこの聖女を評価してるという証拠でもある。
聖女が足を進める度にシンプルながらも上品な真珠のアクセサリーが細やかに揺れるが、それすらも彼女の美しさを引き立てているように思えて仕方ない。
なにかを決意した力強い目元、慈愛に満ちた微笑み。そこにいるのは不気味な桃毛をしたつまらない伯爵令嬢なんかではなく、正真正銘の聖女だったのだ。
美しい。素直にそう思った。
そして、これからこの聖女が俺のモノになるのだと思ったらゾクゾクと快感がこみ上げてくる。異国の聖女を愛人として侍らす姿はなんとも優越感に満ちていた。
「せ……」
「お初にお目にかかります、異国の聖女様」
自分の目の前までやって来た聖女に真っ先に挨拶をしてやろうと声を出そうとした瞬間、父である国王が立ち上がり恭しく頭を下げた。
「アールスト国はあなたを歓迎致します。どうか、この国にも聖女のご加護があらんことを」
おい!このクソ親父!この国のトップが簡単に頭を下げるなんて品位が下がるぞ?!せっかく俺が聖女を射止めてやろうとしているのに邪魔をするな!俺が声をかけさえすれば、すぐにでも聖女が跪くのがわからないのか?!
しかしあの腹黒い父王のことだ。なにか企んでいるに決まっている。いつも息子である俺の婚約者には国に利益をもたらす女でなければ認めないと口を酸っぱくして言っていたしな。だったらアミィとの婚約を認めておけばあの国の公爵家が手に入ったのに……まぁ、今となってはどうでもいいことだが。
……あぁ、そういうことか。俺はすぐに父の考えがわかった。父は、この聖女を俺の婚約者に据え置こうとしているのだろう。俺も最初は愛人にして侍らせてやろうと思っていたが、想像以上に美しいし……体もなかなか良さそうだ。なによりもかなりの利益が見込める希少な女だからな、妻に娶ってやろうじゃないか。
俺は父王に挨拶をする聖女の体を上から下まで舐めるように視線を動かした。胸が大きいだけの女にも飽きてきたし、スレンダーではあるがまぁ合格だな。
「私は異国の聖女、ロティーナと申します。家名も女の証とも言われる髪も捨て、聖女として神に身を捧げるつもりです。
この度は異国へ行く前に新たな聖女としてこちらの国と是非友好関係を築けたらと思い馳せ参じました」
聖女のその言葉に思わず口の端がつり上がる。
そうか、やはり予想通り聖女は俺に気があるようだ。異国の聖女は数年程の勤めを果たしたら後は自由だと聞く。ふふん。まぁ、数年くらいなら待ってやらないでもないぞ。俺は寛大な男だからな。
ほら、父上。そろそろ俺を紹介しろ。そして婚約者にと勧めるんだ。諸手を上げて泣いて喜ぶに違いなーーーー。
「今夜は聖女様の歓迎パーティーを開きます。是非ともご参加を。……それにしてもお美しい。このような老いぼれですが恋に堕ちてしまいそうです」
「まぁ、お上手ですこと。王妃様に叱られてしまいましてよ?」
楽しそうに軽口を言い合うふたり。コロコロと笑う聖女の声はまるで鈴を転がしたようだ。……って!ん?俺の紹介はどうした?!
「ふふふ、申し訳ございません。聖女様のあまりの魅力につい。王妃もあなた様とお話が出来るのを楽しみにしていたのですが、実は少し体調を崩していまして……」
「まぁ、それは大変ですわ。是非お見舞いさせて頂きたいです」
「それは王妃も喜びます!ではこちらに「父上!」……なんだ、聖女様の御前でそのような大声を出すなどはしたない」
俺の存在などまるでなかったかのように談笑しこの場から立ち去ろうとする父上と聖女の姿に思わず声が出てしまった。
「あ、あの……俺も聖女に挨拶を……」
ギロリと俺を睨んでくる父上の威圧にたじろぐが、父上ともあろう方がなにをしているんだろう?と首を傾げそうになった。
聖女を俺の婚約者にするんじゃないのか?俺を紹介して聖女にアピールさえすれば聖女の方から尻尾を振ってくるというのに、こんなチャンスを逃すなんて腹黒い父上らしくないではないか。……というか、最近母上の姿を見ないと思ったら体調を崩してたのか?
「……そうか。聖女様にご挨拶がしたいのか。ーーーー聖女様、お目汚しかもしれませんが、これが第1王子であるアシードでございます」
「聖女、いや、ロティーナ嬢。どうか俺の事はアシードと……」
「そうですか。第1王子殿下、よろしくお願い致します。私の事を名前で呼んで頂くなど恐れ多いですわ。どうか、聖女とお呼びください」
そう言って魅惑的な微笑みを浮かべたまま優雅なカーテシーを披露した聖女は「では、王妃様のお見舞いに行きますので失礼致します」とあっさりと立ち去ってしまったのだった。
なんだ?どうなってるんだ?!
なにかが、おかしいぞ!聖女は俺が好きなんじゃなかったのか?!
さぁ、今日俺はあの異国をも手に入れる偉業を成すのだ!その偉業のためなら、聖女がどれだけ不気味で不細工だろうと我慢してやるさ……!
「ーーーーあれは」
初めて目にする聖女は、噂とは全く違っていた。
確かに不気味だと言われる桃色の髪だが、その纏う雰囲気は不気味どころか逆にとても神聖なものに感じられる。厳かな気持ちになるとでも言うところだろうか。
女ではあり得ないくらい短く整えられた髪はレースで作られた白薔薇の造花と銀細工の髪止めで飾られていた。だが決して短い髪を隠すものではなく、綺麗な後頭部のカーブがより際立ち彼女の凛とした雰囲気によく似合っていた。なんだかいい匂いまでしてきそうだ。
今まで女とはやたら長い髪をゴテゴテと飾る生き物だと思っていたし、髪の短い女など女として価値がないと教えられてきたのに根底から覆された気分だった。
遠目から見ても上等だとわかるシルクのドレスには銀の糸をふんだんに使った豪華な刺繍が施されていて下世話だがどれほどの金貨をつぎ込んでいるのかと計算したくなった。それほど異国がこの聖女を評価してるという証拠でもある。
聖女が足を進める度にシンプルながらも上品な真珠のアクセサリーが細やかに揺れるが、それすらも彼女の美しさを引き立てているように思えて仕方ない。
なにかを決意した力強い目元、慈愛に満ちた微笑み。そこにいるのは不気味な桃毛をしたつまらない伯爵令嬢なんかではなく、正真正銘の聖女だったのだ。
美しい。素直にそう思った。
そして、これからこの聖女が俺のモノになるのだと思ったらゾクゾクと快感がこみ上げてくる。異国の聖女を愛人として侍らす姿はなんとも優越感に満ちていた。
「せ……」
「お初にお目にかかります、異国の聖女様」
自分の目の前までやって来た聖女に真っ先に挨拶をしてやろうと声を出そうとした瞬間、父である国王が立ち上がり恭しく頭を下げた。
「アールスト国はあなたを歓迎致します。どうか、この国にも聖女のご加護があらんことを」
おい!このクソ親父!この国のトップが簡単に頭を下げるなんて品位が下がるぞ?!せっかく俺が聖女を射止めてやろうとしているのに邪魔をするな!俺が声をかけさえすれば、すぐにでも聖女が跪くのがわからないのか?!
しかしあの腹黒い父王のことだ。なにか企んでいるに決まっている。いつも息子である俺の婚約者には国に利益をもたらす女でなければ認めないと口を酸っぱくして言っていたしな。だったらアミィとの婚約を認めておけばあの国の公爵家が手に入ったのに……まぁ、今となってはどうでもいいことだが。
……あぁ、そういうことか。俺はすぐに父の考えがわかった。父は、この聖女を俺の婚約者に据え置こうとしているのだろう。俺も最初は愛人にして侍らせてやろうと思っていたが、想像以上に美しいし……体もなかなか良さそうだ。なによりもかなりの利益が見込める希少な女だからな、妻に娶ってやろうじゃないか。
俺は父王に挨拶をする聖女の体を上から下まで舐めるように視線を動かした。胸が大きいだけの女にも飽きてきたし、スレンダーではあるがまぁ合格だな。
「私は異国の聖女、ロティーナと申します。家名も女の証とも言われる髪も捨て、聖女として神に身を捧げるつもりです。
この度は異国へ行く前に新たな聖女としてこちらの国と是非友好関係を築けたらと思い馳せ参じました」
聖女のその言葉に思わず口の端がつり上がる。
そうか、やはり予想通り聖女は俺に気があるようだ。異国の聖女は数年程の勤めを果たしたら後は自由だと聞く。ふふん。まぁ、数年くらいなら待ってやらないでもないぞ。俺は寛大な男だからな。
ほら、父上。そろそろ俺を紹介しろ。そして婚約者にと勧めるんだ。諸手を上げて泣いて喜ぶに違いなーーーー。
「今夜は聖女様の歓迎パーティーを開きます。是非ともご参加を。……それにしてもお美しい。このような老いぼれですが恋に堕ちてしまいそうです」
「まぁ、お上手ですこと。王妃様に叱られてしまいましてよ?」
楽しそうに軽口を言い合うふたり。コロコロと笑う聖女の声はまるで鈴を転がしたようだ。……って!ん?俺の紹介はどうした?!
「ふふふ、申し訳ございません。聖女様のあまりの魅力につい。王妃もあなた様とお話が出来るのを楽しみにしていたのですが、実は少し体調を崩していまして……」
「まぁ、それは大変ですわ。是非お見舞いさせて頂きたいです」
「それは王妃も喜びます!ではこちらに「父上!」……なんだ、聖女様の御前でそのような大声を出すなどはしたない」
俺の存在などまるでなかったかのように談笑しこの場から立ち去ろうとする父上と聖女の姿に思わず声が出てしまった。
「あ、あの……俺も聖女に挨拶を……」
ギロリと俺を睨んでくる父上の威圧にたじろぐが、父上ともあろう方がなにをしているんだろう?と首を傾げそうになった。
聖女を俺の婚約者にするんじゃないのか?俺を紹介して聖女にアピールさえすれば聖女の方から尻尾を振ってくるというのに、こんなチャンスを逃すなんて腹黒い父上らしくないではないか。……というか、最近母上の姿を見ないと思ったら体調を崩してたのか?
「……そうか。聖女様にご挨拶がしたいのか。ーーーー聖女様、お目汚しかもしれませんが、これが第1王子であるアシードでございます」
「聖女、いや、ロティーナ嬢。どうか俺の事はアシードと……」
「そうですか。第1王子殿下、よろしくお願い致します。私の事を名前で呼んで頂くなど恐れ多いですわ。どうか、聖女とお呼びください」
そう言って魅惑的な微笑みを浮かべたまま優雅なカーテシーを披露した聖女は「では、王妃様のお見舞いに行きますので失礼致します」とあっさりと立ち去ってしまったのだった。
なんだ?どうなってるんだ?!
なにかが、おかしいぞ!聖女は俺が好きなんじゃなかったのか?!
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