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17 断罪された男1(エドガー視点)
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「ち、父上?!それに、兄上までなんでここに……!?」
「エドガー、お前という奴は……!」
なぜか俺を睨みつけながら拳をぷるぷると震えさせる父上の姿に思わず首を傾げてしまう。なぜこんなところにいるんだ?それに、 突然現れた銀髪の男が癪に障る笑みを浮かべながら「断罪劇」と口にした。その笑みにも非常にむかつくが、なぜかその男に父上と兄上がこくりと頷いてみせたのだ。
なんだこいつは?なぜこんなにも偉そうにしているんだ。こっちは貴族……子爵家なんだぞ!
ん?よく見たらこいつ灰色の目をしているじゃないか。確か灰眼は桃色の髪と同じく不吉な象徴だと言われているはずだ。ふん!こいつもロティーナと同じで劣等生物の仲間というわけか。
するとその灰眼の男はまだ鬱陶しくメソメソと泣いているロティーナの涙を指先で拭い出したのだ。その女は俺の所有物だというのに!人の婚約者に対してなんて馴れ馴れしいのか。非常識極まりないな。
そして俺の方に、まるで挑発するかのようにその不吉な灰眼を向けてきたのだ。
「うちの大切な……“異国の聖女様”を泣かせたんだ、それなりの覚悟はあるんだろうね?」
はぁ?聖女?い、異国って……え、まさかロティーナのことか?いや、そんなものお伽噺の中にしか存在しないだろう。だいたい、もしもそんなものが本当にいたとしても聖女は神聖な存在のはずだ。そう、例えるならばアミィのような女性のことを言うのだ。まさか、この愚かな女が聖女だなんて、一体何の冗談のつもりだ?
そこまで思考を巡らせて、俺は真実に気付いた。なんて素晴らしい推理だろうか。流石は俺だな!天才とは俺のことを言うのだろうな。
やはり、そういうことだったのだ。あの助言は正しかった。
「くくく、やはりそうだったのか!ロティーナ、お前は浮気をしていたんだな?!俺と言う婚約者がいながらなんたる不貞だ!この尻軽の最低な女め!
ほら父上、見てください!この女がどれほど愚かかわかったで「こんのクズがぁぁぁぁぁ!!」ぐふぉっ?!」
な、なんだ?!なぜ父上は急に激昂して俺を殴るんだ?!
「この!「がはっ!」最低の!「げほぉっ!!」ゲスがぁぁぁ!!「ぐぇっ!?」お前のような者は、もう息子でも何でもない!勘当だ!いいや、それだけじゃ生温い!死んで詫びろ!!今すぐこの場で殺してやる!!!」
「父上、落ち着いてください。本当に死んでしまいますよ「しかし、レルーク!」こんな簡単に死なせるよりもっと地獄を見せた方がいいのでは?」
い、痛い!痛いぞ?!父上にめちゃくちゃ殴られた!血が出てる!口の中が切れたんだ!しかも俺がこんなに目に遭っているのに兄上はまるで害虫でも見るかのような視線を向けてくるぞ?!
「まったくこの愚弟は……。あの愚かな女にそっくりだ。あれほど母親の差別思考を受け入れてはいけないと言い聞かせたのに……」
「あぁ、どうやら離縁して追い出してからもエドガーとこっそり会っていたようだな。しかしここまでそっくりになるとは……。レルークはまともに育ってくれたからと油断していたようだ」
なんだ、今度は母上の悪口まで言い出したじゃないか!せっかく俺が母上のアドバイス通りに伯爵家を乗っ取って父上たちにも楽をさせてやろうと思っていたのに、酷い裏切りだ!母上が言ったんだ。伯爵家を手に入れれば母上が戻ってくれると言ってくれたんだ!愚かな父上のことを許して、また家族に戻れると……!なのに、なぜ邪魔をするんだ?!
あぁ、やはり俺の事をわかってくれるのはアミィだけだと改めて思う。アミィは俺の母上のこともちゃんとわかってくれたのに。
「エドガー、お前はロティーナ嬢と婚約するときにアレクサンドルト伯爵たちになんて言ったか覚えているのか?
“ロティーナが誰かに傷つけられても俺が守ります”と宣言したんだぞ!その言葉を信じて格下の子爵家次男との婚約を承諾して下さったんだ!しかもアレクサンドルト伯爵は子爵家に支援までしてくれていたのに……!
それなのにお前は、自分が次期伯爵だと触れ回り、伯爵領での横暴な振る舞いに強奪紛いのことまでして、さらに伯爵夫妻の大切なロティーナ嬢をこんな風に裏切るなんて……!」
「桃色の髪のせいで陰口を言われているロティーナ嬢に婚約を申し込んだと聞いた時は驚いたが、お前が差別等に惑わされずに成長してくれたのだと、父上はとても喜んでおられたのに……。お前は勉強だって下から数える程だったし何の取り柄も無い弟だったが、ここまでクズだとはな」
「はぁ?な、なんで俺にそんな酷い事を……だって俺は、惨めな女に優しくしてやったんですよ?!慈善事業みたいなもんです!俺は優秀ですごい男なんだから、この俺に好きになってもらえたんだから両手を上げて喜びそれなりの報酬を払うべきでしょう?!」
だって、母上もアミィもそう言っていた!俺はすごい男だから、それくらい当然だって!伯爵家もこの領地も俺の好きにしていいんだって……!
母上は俺のしたことをいつも誉めてくれるし、アミィは頑張ってる俺にご褒美をくれるんだ!だから俺はアミィに感謝と愛を示して贈り物をする。母上には伯爵当主の聖母として優雅に暮らしてもらう。それが正当な報酬だ。ならばその贈り物の金はロティーナが出すべきだ。だってロティーナのくせに俺に愛されるんだから、当たり前だろう?
「もうお前の言葉など聞きたくはないが……伯爵領から強奪した金品はどこへやった?まさかどこかで遊ぶ金に換金したのではないだろうな」
「あ、遊んだりなんかしていない!それはアーーーーむぐっ?!」
“アミィへのプレゼントにしただけだ”。そう言おうとした。ちゃんとアミィの事を話せば兄上たちもすぐにアミィの素晴らしさに気づくだろうと思ったからだ。だから俺が正しいとわかるだろうと。だが次の瞬間、俺の口には丸めた布が押し込められてしまったのだ。
「むぐぐ?!」
「はーい、おしゃべりはそこまでにしようか」
くそぉ!この灰眼めがぁ!おい!いつの間にか俺の体がロープでぐるぐる巻きにされているじゃないか?!これじゃ口の布が取れない!なんとか吐き出さねば……おぉい!布の上からさらに猿轡だとぉ?!吐き出すどころか喉の奥に入って息がしづらいじゃないか!おぇぇぇっ!
「ロティーナ!」
「お母様……っ」
今度はいつの間にかアレクサンドルト伯爵夫妻が増えていた。なぜだ?今は王城に行っていて不在のはずだったんじゃないのか?!せっかくゴロツキに金を握らせて情報収集したのに……。そして自分を奮い起たせるために伯爵領でもらってやった酒をたらふく飲んでから来たのに……!
くそぉっ!アレクサンドルト伯爵が俺をすごく睨んでるぞ!?逆恨みもいいところだ!お前らが甘やかして育てた何の役にも立たない女と結婚してやろうと言う希少な俺を睨むなんて、やはりあの女の親と言うことか!碌でもないな!
「……エルサーレ子爵、今さらだがこの婚約はこちらから破棄させてもらう。異論は?」
「もちろんありません!この馬鹿が奪った金品や無銭飲食代も全て弁償致します!慰謝料もそちらの望むままにお支払い致しますので……!」
おい、父上!そんな女の父親に土下座などするなんてみっともない!そんなだから母上に愛想を尽かされるんだぞ!情けないと思わないのか!?
「いや、婚約破棄さえ同意してくれればいい。弁償もいらん。ただ今後、娘の前にその男が姿を現すことは許さない。この領地にも足を踏み入れさせるな。
……もし、娘が本当に聖女として異国へ旅立つことになれば婚約を白紙に戻してもらい謝罪せねばと思っていたのだが……申し訳無いがもう子爵家を支援することは出来ない。我が家とは縁を切ってくれ」
「本当に申し訳ございません!!」
おい!だからなぜ謝るんだ?!兄上まで頭を下げるな!そいつの地位はもうすぐ俺のものになるんだから、どうせなら俺を敬えよ!
「この愚弟は子爵家と縁を切らせます。だが平民に落とすだけではまた他人に迷惑をかけるでしょうから、奴隷として鉱山で働かせましょう。生と死のギリギリの狭間で生かし、苦しみ続けさせると約束致します」
「……では、そちらの処遇は任せる。もう二度と会うことは無いだろうが」
「はい。伯爵の御慈悲に感謝致します!」
なっ……!奴隷と言ったか?!俺が奴隷として働くだと?!何を言っているんだ!俺は伯爵になり、アミィを影から支える愛の騎士として母上から誉めていただくんだ……!
「むがぁーっ!むがぁーっ!」
しかし俺がどんなに体をくねらせ訴えても、父上と兄上は黙って俺を引きずり歩くだけだった。時折俺に向けられる視線は氷よりも冷たい。どうしてだ。どうしてこうなった……?!
……あれ?またあの灰眼の男が兄上近づいて来たと思ったら何かを渡しているぞ。え?「この薬を飲ませれば喉が潰れて一生声が出せなくなるから、口の布を取ったと同時に飲ませろ。この男の耳障りな声が少しでも聞こえたらーーーー異国は聖女を傷つけた男を子爵領ごと消してしまうかもしれない」って……?
青ざめた顔で頷く兄上は、黙ったままその薬を受け取った。
こうして俺の輝かしい人生は終わってしまったのだ。なんでこうなってしまったのか、全くわからない。だって俺は、ちゃんと母上の言う通りにしていたのに……。まさか、俺は本当に断罪されてしまうのか……?!
アミィ、母上、助けてくれ……!!
「エドガー、お前という奴は……!」
なぜか俺を睨みつけながら拳をぷるぷると震えさせる父上の姿に思わず首を傾げてしまう。なぜこんなところにいるんだ?それに、 突然現れた銀髪の男が癪に障る笑みを浮かべながら「断罪劇」と口にした。その笑みにも非常にむかつくが、なぜかその男に父上と兄上がこくりと頷いてみせたのだ。
なんだこいつは?なぜこんなにも偉そうにしているんだ。こっちは貴族……子爵家なんだぞ!
ん?よく見たらこいつ灰色の目をしているじゃないか。確か灰眼は桃色の髪と同じく不吉な象徴だと言われているはずだ。ふん!こいつもロティーナと同じで劣等生物の仲間というわけか。
するとその灰眼の男はまだ鬱陶しくメソメソと泣いているロティーナの涙を指先で拭い出したのだ。その女は俺の所有物だというのに!人の婚約者に対してなんて馴れ馴れしいのか。非常識極まりないな。
そして俺の方に、まるで挑発するかのようにその不吉な灰眼を向けてきたのだ。
「うちの大切な……“異国の聖女様”を泣かせたんだ、それなりの覚悟はあるんだろうね?」
はぁ?聖女?い、異国って……え、まさかロティーナのことか?いや、そんなものお伽噺の中にしか存在しないだろう。だいたい、もしもそんなものが本当にいたとしても聖女は神聖な存在のはずだ。そう、例えるならばアミィのような女性のことを言うのだ。まさか、この愚かな女が聖女だなんて、一体何の冗談のつもりだ?
そこまで思考を巡らせて、俺は真実に気付いた。なんて素晴らしい推理だろうか。流石は俺だな!天才とは俺のことを言うのだろうな。
やはり、そういうことだったのだ。あの助言は正しかった。
「くくく、やはりそうだったのか!ロティーナ、お前は浮気をしていたんだな?!俺と言う婚約者がいながらなんたる不貞だ!この尻軽の最低な女め!
ほら父上、見てください!この女がどれほど愚かかわかったで「こんのクズがぁぁぁぁぁ!!」ぐふぉっ?!」
な、なんだ?!なぜ父上は急に激昂して俺を殴るんだ?!
「この!「がはっ!」最低の!「げほぉっ!!」ゲスがぁぁぁ!!「ぐぇっ!?」お前のような者は、もう息子でも何でもない!勘当だ!いいや、それだけじゃ生温い!死んで詫びろ!!今すぐこの場で殺してやる!!!」
「父上、落ち着いてください。本当に死んでしまいますよ「しかし、レルーク!」こんな簡単に死なせるよりもっと地獄を見せた方がいいのでは?」
い、痛い!痛いぞ?!父上にめちゃくちゃ殴られた!血が出てる!口の中が切れたんだ!しかも俺がこんなに目に遭っているのに兄上はまるで害虫でも見るかのような視線を向けてくるぞ?!
「まったくこの愚弟は……。あの愚かな女にそっくりだ。あれほど母親の差別思考を受け入れてはいけないと言い聞かせたのに……」
「あぁ、どうやら離縁して追い出してからもエドガーとこっそり会っていたようだな。しかしここまでそっくりになるとは……。レルークはまともに育ってくれたからと油断していたようだ」
なんだ、今度は母上の悪口まで言い出したじゃないか!せっかく俺が母上のアドバイス通りに伯爵家を乗っ取って父上たちにも楽をさせてやろうと思っていたのに、酷い裏切りだ!母上が言ったんだ。伯爵家を手に入れれば母上が戻ってくれると言ってくれたんだ!愚かな父上のことを許して、また家族に戻れると……!なのに、なぜ邪魔をするんだ?!
あぁ、やはり俺の事をわかってくれるのはアミィだけだと改めて思う。アミィは俺の母上のこともちゃんとわかってくれたのに。
「エドガー、お前はロティーナ嬢と婚約するときにアレクサンドルト伯爵たちになんて言ったか覚えているのか?
“ロティーナが誰かに傷つけられても俺が守ります”と宣言したんだぞ!その言葉を信じて格下の子爵家次男との婚約を承諾して下さったんだ!しかもアレクサンドルト伯爵は子爵家に支援までしてくれていたのに……!
それなのにお前は、自分が次期伯爵だと触れ回り、伯爵領での横暴な振る舞いに強奪紛いのことまでして、さらに伯爵夫妻の大切なロティーナ嬢をこんな風に裏切るなんて……!」
「桃色の髪のせいで陰口を言われているロティーナ嬢に婚約を申し込んだと聞いた時は驚いたが、お前が差別等に惑わされずに成長してくれたのだと、父上はとても喜んでおられたのに……。お前は勉強だって下から数える程だったし何の取り柄も無い弟だったが、ここまでクズだとはな」
「はぁ?な、なんで俺にそんな酷い事を……だって俺は、惨めな女に優しくしてやったんですよ?!慈善事業みたいなもんです!俺は優秀ですごい男なんだから、この俺に好きになってもらえたんだから両手を上げて喜びそれなりの報酬を払うべきでしょう?!」
だって、母上もアミィもそう言っていた!俺はすごい男だから、それくらい当然だって!伯爵家もこの領地も俺の好きにしていいんだって……!
母上は俺のしたことをいつも誉めてくれるし、アミィは頑張ってる俺にご褒美をくれるんだ!だから俺はアミィに感謝と愛を示して贈り物をする。母上には伯爵当主の聖母として優雅に暮らしてもらう。それが正当な報酬だ。ならばその贈り物の金はロティーナが出すべきだ。だってロティーナのくせに俺に愛されるんだから、当たり前だろう?
「もうお前の言葉など聞きたくはないが……伯爵領から強奪した金品はどこへやった?まさかどこかで遊ぶ金に換金したのではないだろうな」
「あ、遊んだりなんかしていない!それはアーーーーむぐっ?!」
“アミィへのプレゼントにしただけだ”。そう言おうとした。ちゃんとアミィの事を話せば兄上たちもすぐにアミィの素晴らしさに気づくだろうと思ったからだ。だから俺が正しいとわかるだろうと。だが次の瞬間、俺の口には丸めた布が押し込められてしまったのだ。
「むぐぐ?!」
「はーい、おしゃべりはそこまでにしようか」
くそぉ!この灰眼めがぁ!おい!いつの間にか俺の体がロープでぐるぐる巻きにされているじゃないか?!これじゃ口の布が取れない!なんとか吐き出さねば……おぉい!布の上からさらに猿轡だとぉ?!吐き出すどころか喉の奥に入って息がしづらいじゃないか!おぇぇぇっ!
「ロティーナ!」
「お母様……っ」
今度はいつの間にかアレクサンドルト伯爵夫妻が増えていた。なぜだ?今は王城に行っていて不在のはずだったんじゃないのか?!せっかくゴロツキに金を握らせて情報収集したのに……。そして自分を奮い起たせるために伯爵領でもらってやった酒をたらふく飲んでから来たのに……!
くそぉっ!アレクサンドルト伯爵が俺をすごく睨んでるぞ!?逆恨みもいいところだ!お前らが甘やかして育てた何の役にも立たない女と結婚してやろうと言う希少な俺を睨むなんて、やはりあの女の親と言うことか!碌でもないな!
「……エルサーレ子爵、今さらだがこの婚約はこちらから破棄させてもらう。異論は?」
「もちろんありません!この馬鹿が奪った金品や無銭飲食代も全て弁償致します!慰謝料もそちらの望むままにお支払い致しますので……!」
おい、父上!そんな女の父親に土下座などするなんてみっともない!そんなだから母上に愛想を尽かされるんだぞ!情けないと思わないのか!?
「いや、婚約破棄さえ同意してくれればいい。弁償もいらん。ただ今後、娘の前にその男が姿を現すことは許さない。この領地にも足を踏み入れさせるな。
……もし、娘が本当に聖女として異国へ旅立つことになれば婚約を白紙に戻してもらい謝罪せねばと思っていたのだが……申し訳無いがもう子爵家を支援することは出来ない。我が家とは縁を切ってくれ」
「本当に申し訳ございません!!」
おい!だからなぜ謝るんだ?!兄上まで頭を下げるな!そいつの地位はもうすぐ俺のものになるんだから、どうせなら俺を敬えよ!
「この愚弟は子爵家と縁を切らせます。だが平民に落とすだけではまた他人に迷惑をかけるでしょうから、奴隷として鉱山で働かせましょう。生と死のギリギリの狭間で生かし、苦しみ続けさせると約束致します」
「……では、そちらの処遇は任せる。もう二度と会うことは無いだろうが」
「はい。伯爵の御慈悲に感謝致します!」
なっ……!奴隷と言ったか?!俺が奴隷として働くだと?!何を言っているんだ!俺は伯爵になり、アミィを影から支える愛の騎士として母上から誉めていただくんだ……!
「むがぁーっ!むがぁーっ!」
しかし俺がどんなに体をくねらせ訴えても、父上と兄上は黙って俺を引きずり歩くだけだった。時折俺に向けられる視線は氷よりも冷たい。どうしてだ。どうしてこうなった……?!
……あれ?またあの灰眼の男が兄上近づいて来たと思ったら何かを渡しているぞ。え?「この薬を飲ませれば喉が潰れて一生声が出せなくなるから、口の布を取ったと同時に飲ませろ。この男の耳障りな声が少しでも聞こえたらーーーー異国は聖女を傷つけた男を子爵領ごと消してしまうかもしれない」って……?
青ざめた顔で頷く兄上は、黙ったままその薬を受け取った。
こうして俺の輝かしい人生は終わってしまったのだ。なんでこうなってしまったのか、全くわからない。だって俺は、ちゃんと母上の言う通りにしていたのに……。まさか、俺は本当に断罪されてしまうのか……?!
アミィ、母上、助けてくれ……!!
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