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第4章 呪われた王子の章
〈60〉ヘタレの悩み(ジル視点)
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異国を整えるための仕事も一段落ついた頃、オレはあることに悩んでいた。
それはロティーナへのプロポーズである。
オレはロティーナが好きだ。恥ずかしいが初恋だ。これからもオレの隣にずっといて欲しいと思っている。
以前にも雰囲気の流れで「好きだ」と言おうとした事はあったがターイズに邪魔されてしまった。だから改めて告白してプロポーズしようと思っているのだが……。1度タイミングを逃しているせいか、やたら意識してしまってうまくいかないのだ。
せっかく貿易を口実に婚約指輪も取り寄せたのに!あの姫め、ロティーナを見て気に入ったらしくなにかとオレをからかってくるのだが、そのセンスだけは認めざるえないだろう。そして商売上手だ。
「プロポーズが成功したら婚礼衣装はぜひ我が国に御依頼してくださいね♪サービスさせて頂きますわよ~」と見せてきたウェディングドレスのデザイン画はどれもすごく良かった。……ロティーナが着たら絶対可愛い!
しかしそのドレスを着たロティーナの姿を想像したら余計に緊張してしまい、いまだ告白すら出来ていない始末である。ターイズには「このヘタレ」と散々怒られたのは言うまでもない。
この3年の間に、ロティーナは聖女として異国の為に頑張ってくれた。
何と言っても医学の進歩だろうか。それまで怪しい薬の開発しかしてこなかった研究者たちを説得してマトモな薬を作らせたのも凄いが、ロティーナから医学の知識を伝授され興味が出たようで他の国に医学の勉強に行ったり薬草の研究をしたり……。ロティーナは「本で読んだだけの知識ですわ」と言うが彼女の愛用本『世界の薬草とその薬効~毒と薬は紙一重~』はその分厚さにゲッソリする程だ。しかもその内容を全て記憶しているなんてすごいとしか言いようがない。『人体の変化に関する原因と症状の1から1050まで』も凄まじい分厚さだったが。
……『上手な落とし穴の作り方と無駄のない活用法』の背表紙には大根とゴボウのイラストが載っていたけど、あれはなんなんだろう。
いや、それはいいんだ。とにかくロティーナのおかげで研究者たちにうれしい変化が起こったのだから。もう変な毒を作る必要がなくなれば無駄な争いも減るだろう。
ロティーナはあれだけ短かった髪もすっかり伸び、なんだか大人びてきた気がする。時折オレを悲しげな顔で見てくるが声をかけると逃げる事も多いし、先日もやっとまともに話が出来ると勢いをつけて告白しようとしたら勢い余って舌を噛んでしまった。
もうすぐ約束の3年が終わってしまう。ロティーナが帰ってしまったら次はいつ会えるかわからないじゃないか。こんなだからいつまでもターイズに「ヘタレ王」と言われてしまうんだ。
「……今度こそ言うぞぉ!」
オレは指輪の入った箱を握り締めて自分を鼓舞した。まさにその時だ。
「ジルしゃん!いましゅぐはくじょーなしゃい!」
「……ロティーナ?!」
長かったはずの髪をまたもやバッサリ切り、ベロンベロンに酔っ払っている様子のロティーナがオレの部屋に乗り込んで来たのだった。
それはロティーナへのプロポーズである。
オレはロティーナが好きだ。恥ずかしいが初恋だ。これからもオレの隣にずっといて欲しいと思っている。
以前にも雰囲気の流れで「好きだ」と言おうとした事はあったがターイズに邪魔されてしまった。だから改めて告白してプロポーズしようと思っているのだが……。1度タイミングを逃しているせいか、やたら意識してしまってうまくいかないのだ。
せっかく貿易を口実に婚約指輪も取り寄せたのに!あの姫め、ロティーナを見て気に入ったらしくなにかとオレをからかってくるのだが、そのセンスだけは認めざるえないだろう。そして商売上手だ。
「プロポーズが成功したら婚礼衣装はぜひ我が国に御依頼してくださいね♪サービスさせて頂きますわよ~」と見せてきたウェディングドレスのデザイン画はどれもすごく良かった。……ロティーナが着たら絶対可愛い!
しかしそのドレスを着たロティーナの姿を想像したら余計に緊張してしまい、いまだ告白すら出来ていない始末である。ターイズには「このヘタレ」と散々怒られたのは言うまでもない。
この3年の間に、ロティーナは聖女として異国の為に頑張ってくれた。
何と言っても医学の進歩だろうか。それまで怪しい薬の開発しかしてこなかった研究者たちを説得してマトモな薬を作らせたのも凄いが、ロティーナから医学の知識を伝授され興味が出たようで他の国に医学の勉強に行ったり薬草の研究をしたり……。ロティーナは「本で読んだだけの知識ですわ」と言うが彼女の愛用本『世界の薬草とその薬効~毒と薬は紙一重~』はその分厚さにゲッソリする程だ。しかもその内容を全て記憶しているなんてすごいとしか言いようがない。『人体の変化に関する原因と症状の1から1050まで』も凄まじい分厚さだったが。
……『上手な落とし穴の作り方と無駄のない活用法』の背表紙には大根とゴボウのイラストが載っていたけど、あれはなんなんだろう。
いや、それはいいんだ。とにかくロティーナのおかげで研究者たちにうれしい変化が起こったのだから。もう変な毒を作る必要がなくなれば無駄な争いも減るだろう。
ロティーナはあれだけ短かった髪もすっかり伸び、なんだか大人びてきた気がする。時折オレを悲しげな顔で見てくるが声をかけると逃げる事も多いし、先日もやっとまともに話が出来ると勢いをつけて告白しようとしたら勢い余って舌を噛んでしまった。
もうすぐ約束の3年が終わってしまう。ロティーナが帰ってしまったら次はいつ会えるかわからないじゃないか。こんなだからいつまでもターイズに「ヘタレ王」と言われてしまうんだ。
「……今度こそ言うぞぉ!」
オレは指輪の入った箱を握り締めて自分を鼓舞した。まさにその時だ。
「ジルしゃん!いましゅぐはくじょーなしゃい!」
「……ロティーナ?!」
長かったはずの髪をまたもやバッサリ切り、ベロンベロンに酔っ払っている様子のロティーナがオレの部屋に乗り込んで来たのだった。
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