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第3章 アールスト国の章

〈37〉復讐を終えた後で

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「……これで復讐も終わりですね」

    翌日、私は隣国に別れを告げ異国へと向かう馬車の中で呟きました。





    あれから王子は私の宣言通り全てを奪われ、名前も戸籍も何もない存在となりました。平民ですらいられなくなった元王子は『異国の聖女に無礼を働いた罪』として広場に3日間吊し上げられ見せしめの刑になります。そして奴隷としてどこかへ売られていくそうですが、気持ち悪いままなので専門の所に送るよ。とジルさんが言っていました。

    変態専門の奴隷……私では想像しきれません。

    そして王家はどうなったかというと……。まず国王陛下は「息子の罪は親の罪」として王位を返還なされました。しかし跡継ぎがいないと問題になるも、ジルさんが「異国に取り込まれちゃえば?」とかなんとか言ったらしく国王と上位貴族がそれを了承。なんと隣国は異国の領土になってしまったのです。後程異国から領主がくることになり、隣国と言う国は消えてしまうことになりました。国王と王妃様は異国の一貴族としてお腹の子供を育てる決意をなさったのです。

    私の個人的な復讐のせいでひとつの国が消えてしまいましたが後悔はありません。せめて聖女の加護がある領地として栄えればと思います。領民やその他の貴族たちはそのまま変わりなくすごせるようにとはお願いしましたが……後悔はなくても、誰かに恨まれる覚悟はしなくてはいけないかな、とは思いました。

    ちなみに王子を影で操っていた宰相ですが……ジルさんが首を切り落としたそうです。

    元を辿ればその宰相が王子をあんな風に育てたせいでレベッカ様の事件が起きたのですから、私が手を下してやろうと思っていたのですがジルさんに止められました。

「君はそのままでいい」と。

    ジルさんは私に甘いですね。一緒に罪を背負わせてくれればいいのに……。ここまで来たら一蓮托生だと思いませんか?と言ってもジルさんは承諾しないでしょうけど。




***




「そういえば、あの王子はなんであんなに気持ち悪くなってしまったんですか?
    ……まさかとは思いますけど、なにか予定と違うことしました?」

    最初の予定では王子に気持ちを不安定にする薬を摂取させたあと、プライドを煽って激昂させて私に襲いかかってこさせるはずでした。聖女に暴行したとなればそれなりの罪になります。不安が掻き立てられれば薬の作用で自分の中で不安に思っていることを全てしゃべりだす。と、聞いていたのですが……。

    まさかドM宣言された上にロックオンされるなんて思いもしませんでした。

    それでなくても気持ち悪かったのに、さらにパワーアップして気持ち悪くなってましたね。何を仕込んだらあんなに気持ち悪くなるんでしょうか。

「やだなぁ、ちょーっとだけ気持ち良くなってちょーっとだけ自分の深層心理に眠る欲望に素直になれる薬を混ぜただけだよ?自白させるにも本人の気持ちが重要だからね。ただ、あそこまで過激になるわけないはず……あ、アルコールが入ると急激にヤバくなる欠陥品の薬だったかも☆もしかしてあの王子ってばお酒飲んじゃったのかなぁ~」

    なんですか、その「てへぺろ☆」みたいな効果音を背負った顔は。絶対わざと間違えましたね?!

「なにやってるんですか……」

「……ごめん。ただ……あの王子が君に触れるのは我慢出来なかったから、つい」

    そう言ってジルさんは優しく微笑み、私の頬に手を添えたのでした。

    それって、あの変態王子が私に触れるのが嫌だったって事ですか?……なんででしょうか?

    意味がわからなくて首を傾げる私にジルさんはにこりと笑うだけでした。

    相変わらず、ジルさんの言動は意味がわかりませんね。


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