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囚われの姫君(ヒロイン視点)
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悪の根源たるルージュココさんから王子様を救い出すと決意してから約1か月。あれからあたしはというと……。
「いやーん☆いい加減にここから出してよぉっ!」
なぜか男爵家の地下にある牢屋に囚われていた。なんでぇ?!
あの日、屋敷に帰ってから現役男爵である義父に協力を求めるために全てを打ち明けたのだ。あたしが王子様から寵愛されて愛し合っていること。それをルージュココさんが邪魔していること。たぶん王子様がルージュココさんに捕まっていて、そのせいで王太子すらも真実を公表できないでいること。あたしが公爵家に乗り込んで王子様を助け出してくるから、たぶん来るだろう追手を誤魔化して欲しいこと。
「あたしが王子様と正式に結ばれれば、お義父さんの老後も安泰だよ☆未来の王妃を養女にして育てたってわかれば、きっと王様もお義父さんの事を褒めてくれるわ!」そう言って養父を説得した。
こんなあたしを養女にしてくれた義父にはとても感謝している。あたしが幸せになれば安心してもらえるし、将来のお義父さんの介護にだって王妃の養父になら王家から援助してもらえると思うのだ。
だからこそ、ここで頑張らないといけないのに!
なのに、なんでお義父さんは悲しい顔をしてあたしをこんなところに閉じ込めたの?!
「お願い!ここから出してよぉっ」
鉄格子を挟んであたしの目の前にいるお義父さんに懇願するが、お義父さんは顔色を悪くしたままあたしを見つめるだけで決して鍵を開けようとはしてくれなかった。
「わしは、素直で純粋なお前がただ元気でいてくれたらそれでよかったのに……。まさか婚約者のいる相手に擦り寄ったり、ましてやその地位を奪おうとするなんて。いつからそんな強欲な娼婦のような子になってしまったんだ!しかも王子と公爵令嬢の婚約を壊そうとするなど国家反逆罪にも等しいことを……なんて情けない……!王家や公爵家がこんな老いぼれの命ひとつで許して下さればいいが……」
「お、お義父さん……?」
お義父さんが震える声でブツブツと呟いたが、うまく聞き取れない。“公爵家”とか“老いぼれの命”とか……。
「……お前は事が収まるまでここにいなさい。風呂も食事もメイドがちゃんとしてくれる。わしが、なんとかしてやるから」
そう言ってお義父さんは立ち去ってしまった。
誰もいなくなり、シーンと静まり返った空間であたしは気づいてしまった。
……はっ!まさか?!と。まさに閃きの天才かもしれないと自画自賛したくなったけどここは我慢する。あたしだってそんな場合じゃないことくらいわかってるんだから!
とにかく、あたしはわかってしまったのだ。これはきっとルージュココさんの仕業に違いない。
どうやったのかはわからないが、あたしの行動を予測して先回りし、お義父さんに嘘八百を吹き込んだのだろう。そして言うことを聞かないとお義父さんの命を奪うと脅したんだわ……!公爵令嬢から言われたら、男爵のお義父さんには逆らえないもの!
もう……もう絶対に許さないんだからぁ!!
ガコッ!
あたしが怒りに震え、力いっぱい壁を殴ろうとした瞬間。あたしの拳があたる前に、ゴツゴツとした岩壁の一部が動き出した。そして……
「ここから出るぞ。ラースタニア・フルーレ嬢」
「あ、あなたは……!」
岩壁が剥がれ、ポッカリと開いた穴から最初に見えたのは赤みの強い錆色の髪に細身の銀縁眼鏡の奥に光る深緑の瞳だった。
「せ、生徒会長……!?なんでこんなところに……(まさか……)」
そう、そこにいたのはフレデリック・カッセラード。学園の生徒会長だったのである。
まさか、あたしを助けに来てくれたの?!これじゃまるであたしは囚われたお姫様……そして会長は王子様……?!
……やだぁ!トキメキの予感!あたしって罪な女だったのね☆
「いやーん☆いい加減にここから出してよぉっ!」
なぜか男爵家の地下にある牢屋に囚われていた。なんでぇ?!
あの日、屋敷に帰ってから現役男爵である義父に協力を求めるために全てを打ち明けたのだ。あたしが王子様から寵愛されて愛し合っていること。それをルージュココさんが邪魔していること。たぶん王子様がルージュココさんに捕まっていて、そのせいで王太子すらも真実を公表できないでいること。あたしが公爵家に乗り込んで王子様を助け出してくるから、たぶん来るだろう追手を誤魔化して欲しいこと。
「あたしが王子様と正式に結ばれれば、お義父さんの老後も安泰だよ☆未来の王妃を養女にして育てたってわかれば、きっと王様もお義父さんの事を褒めてくれるわ!」そう言って養父を説得した。
こんなあたしを養女にしてくれた義父にはとても感謝している。あたしが幸せになれば安心してもらえるし、将来のお義父さんの介護にだって王妃の養父になら王家から援助してもらえると思うのだ。
だからこそ、ここで頑張らないといけないのに!
なのに、なんでお義父さんは悲しい顔をしてあたしをこんなところに閉じ込めたの?!
「お願い!ここから出してよぉっ」
鉄格子を挟んであたしの目の前にいるお義父さんに懇願するが、お義父さんは顔色を悪くしたままあたしを見つめるだけで決して鍵を開けようとはしてくれなかった。
「わしは、素直で純粋なお前がただ元気でいてくれたらそれでよかったのに……。まさか婚約者のいる相手に擦り寄ったり、ましてやその地位を奪おうとするなんて。いつからそんな強欲な娼婦のような子になってしまったんだ!しかも王子と公爵令嬢の婚約を壊そうとするなど国家反逆罪にも等しいことを……なんて情けない……!王家や公爵家がこんな老いぼれの命ひとつで許して下さればいいが……」
「お、お義父さん……?」
お義父さんが震える声でブツブツと呟いたが、うまく聞き取れない。“公爵家”とか“老いぼれの命”とか……。
「……お前は事が収まるまでここにいなさい。風呂も食事もメイドがちゃんとしてくれる。わしが、なんとかしてやるから」
そう言ってお義父さんは立ち去ってしまった。
誰もいなくなり、シーンと静まり返った空間であたしは気づいてしまった。
……はっ!まさか?!と。まさに閃きの天才かもしれないと自画自賛したくなったけどここは我慢する。あたしだってそんな場合じゃないことくらいわかってるんだから!
とにかく、あたしはわかってしまったのだ。これはきっとルージュココさんの仕業に違いない。
どうやったのかはわからないが、あたしの行動を予測して先回りし、お義父さんに嘘八百を吹き込んだのだろう。そして言うことを聞かないとお義父さんの命を奪うと脅したんだわ……!公爵令嬢から言われたら、男爵のお義父さんには逆らえないもの!
もう……もう絶対に許さないんだからぁ!!
ガコッ!
あたしが怒りに震え、力いっぱい壁を殴ろうとした瞬間。あたしの拳があたる前に、ゴツゴツとした岩壁の一部が動き出した。そして……
「ここから出るぞ。ラースタニア・フルーレ嬢」
「あ、あなたは……!」
岩壁が剥がれ、ポッカリと開いた穴から最初に見えたのは赤みの強い錆色の髪に細身の銀縁眼鏡の奥に光る深緑の瞳だった。
「せ、生徒会長……!?なんでこんなところに……(まさか……)」
そう、そこにいたのはフレデリック・カッセラード。学園の生徒会長だったのである。
まさか、あたしを助けに来てくれたの?!これじゃまるであたしは囚われたお姫様……そして会長は王子様……?!
……やだぁ!トキメキの予感!あたしって罪な女だったのね☆
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