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そして、その日がやってくる

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「うぅぅ……、もうこんにゃく飽きた……」

 厳しいダイエット生活。それはルージュココの精神をザックザクと削り取っていた。

 毎日のブートキャンプはもちろん、ハインリヒト考案によるダイエットメニューによってルージュココのスケジュールはギッチギチに固められ、もはやがんじがらめだった。

 朝から晩までブートキャンプによる激しい運動。そしてお菓子はもちろん禁止だ。食事制限により毎回メニューはこんにゃくと鶏のささみ、塩がかけられた丸ごとレタス(たぶんサラダ)の食事のみ。水分だって紅茶すら出てこず毎度ぬるい常温の水だ。

 なんの楽しみもない、あまりに過酷なダイエット生活にルージュココは限界寸前だった。

 それでもルージュココは頑張った。

 例え、ハインリヒトがダイエットには厳禁だと言ったその口でルージュココの目の前でお菓子を食べていたとしても。


 例え、ハインリヒトがルージュココが茹でただけのササミをモソモソと食べている目の前で肉汁したたるステーキにデミグラスソースをたっぷりとかけて食べていたとしても、だ。

 ルージュココは耐え忍んだのだ。

 最初は、ただ少しだけ痩せたいだけだった。ハインリヒトと駆け落ち(と言う名の脱出)をするために平民の服を着たい。それだけだったはずなのに……。










「食べ物の恨み、思い知るがいいわ……!」




 ハインリヒトは、いつの間にかルージュココからめちゃくちゃ恨まれていた。

 なにせ、たっぷりブートキャンプをしてぐったりしながら魂が抜けかけているルージュココの目の前で「疲れたら甘いものだよね~」とか言いながら躊躇いなくチョコレートを食うような空気の読めない男である。

 さらには「ココはそのままでも可愛いけど、僕との真実の愛を貫くために頑張って痩せてね!」と言いながらルージュココが我慢している食べ物を平然と自分の口に入れ、極めつけは「もっと頑張らないと痩せれないよ(笑)いくら僕がぽっちゃりココも好きだからって油断しすぎ!」と体重計に乗って落ち込むルージュココにツッコミを入れる始末。

 ルージュココとは両想いだからもう大丈夫だろうとすっかり油断しきっているハインリヒトは、気が抜けすぎていた。それはもう、抜けすぎてすでに修復不可能なくらいだった。本人はちょっぴり毒の効いたブラックジョークでウケを狙っているつもりのようだが、ことあるごとにやらかすハインリヒトにルージュココがどんな気持ちを育んでいたかというと……。




 ハインリヒトの言動が、ダイエット中の女性に嫌われないわけがない。とだけ言っておこう。



 これからハインリヒトがどうなるのか……。それは神のみが知る。(または予知能力に長けた読者)
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