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父が思ってたのと違ったが。
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さて、ハインリヒトに婚約破棄を突きつけて学園からとんぼ返りしてきたその足で父親のいる執務室に乗り込んだルージュココがあれからどうなったかというと……。
***
こうゆう事は勢いが大切だと思う(持論)。王子に不敬を働き、王家との政略的な婚約を勝手に断ち切ったのだから父はきっと怒り狂うだろうと思う。でも、ゲーム内の悪役令嬢の父親は厳しいイメージではあるがお父様がルージュココを大切に扱ってくれているのはなんとなく感じている。だから、父の手では殺されたりはしないはずだ。
私の未来は修道院送りか、縁を切られて平民として放り出されるか……どちらにしても冤罪で王子に殺されるよりはずっといいけれど。
どちらの処分の方が公爵家にダメージが少ないのかは、お父様の判断に任せるしかないだろう。
「お父様、お話があります!」
目尻に残る涙を袖で擦り、お父様に対面する。
「ルージュココ」
ゲームでのルージュココの父、ヴォルティス公爵は亡き妻にそっくりな娘を愛してはいるが、妻と同じく痩せ細り傲慢になっていく娘の姿に悩んでもいた。だんだん悪事に手を染めているのではと疑いつつ(これについては悪役令嬢が邪魔になった王子が裏から手を回して冤罪を作り上げたからだが)それでも我が子だからと目を反らしていた。だが、あまりに目に余る言動(これも王子が作った冤罪)が増えてそして王子の怒りに触れてしまい(ヒロインを虐めたから)断罪された娘に対してヴォルティス公爵は娘の存在を諦めてしまったのだ。
……だが、この父親が「悪役令嬢を殺したい」などという描写はなかった。だから、私は父の情に賭ける!
「お父様、突然申し訳ありません。実は、ハインリヒト殿下との婚約についておはな「やっと婚約破棄できたのか?!」へ?」
悪役令嬢と同じ色をした父の瞳が爛々と輝いた気がした。
「あの王子め、第二王子という肩書きを使って好き勝手しおって!奴がこの数ヶ月で何をしたと思う?!かわいいお前のスリーサイズから行動履歴、どこの店で何を買ったか何を食べたか。毎日の摂取カロリー数に運動量をあらゆる手を使って調べ上げ、さらにルージュココの新しい制服を作ると知ったら匿名で金を送り制服になんともハレンチな仕掛けをしろと要求していたんだぞ!あ、あのハレンチ王子の依頼を断ったお針子軍団の皆さんには臨時ボーナスだしといたからね、ルージュたん!」
……あの匿名の依頼、殿下だったんだ。うん?なぜお父様はそんなこと知って……、へ?「ルージュたん」?
「しかもルージュたんと言う最高に可愛くて素晴らしい婚約者がいながらどこぞのお花畑男爵令嬢と噂になるなど言語道断!他の者に付け入られる隙を与えるなどたるんどる証拠だ!そんな男などルージュたんの婿になど認めるわけにいくかぁ!
あのストーカー変態王子などこの父が成敗してくれるぅ!!」
「あ、あの……お父様?」
「しかし、どうやって婚約破棄できたのだ?これまで再三と陛下に婚約破棄を申し込んでいたがハインリヒト殿下が承知しないからとことごとく断られていたのに……。やはり男爵令嬢に浮気しおったのか?!まさかルージュたんに冤罪でもふっかけようものならあの首を捻って千切ってやるが……!」
「えっと、あの。婚約破棄は私から突きつけて来たので……でも殿下も何もおっしゃらなかったし了承してもらえたかと……」
「そうか、よくやった!さすがは父の娘だ!これまでは(一応)王子の婚約者だから厳しくせねばと我慢していたが、これでルージュたんは自由の身だ!この父に存分に甘えていいんだぞ!やったーっ!」
万歳三唱をして「今すぐ陛下に婚約破棄の書類に判を押してもらってくるからな!帰ってきたらパーティーだぁ!!」と叫びながら嵐のように屋敷を飛び出していったお父様。
……あれ?今、再三と陛下に婚約破棄を申し込んでたって言った?お父様、婚約破棄に賛成だったの~っ?!
訳がわからず呆然とする私に侍女がお茶を勧めてくれたのだった。
✽✽✽
そんなわけで、翌日。私は学園を休んで自室の窓から空を眺めていた。あの後、帰宅したお父様は「陛下め、時間稼ぎしてきやがって……」とブツブツ言いながら爪を噛んでいたので、すぐさま婚約破棄には至らなかったらしい。でもまぁ、確かに王子から婚約破棄されたならまだしも下の位の公爵令嬢から言い出した婚約破棄では王家のメンツもあるのだろう。それに新たに男爵令嬢を王子の婚約者にするにしても時間がかかるはずだ。スムーズに男爵令嬢を王子の婚約者にするための準備期間の間の穴埋めに私を利用するつもりなのかもしれない。
それでも、公爵令嬢からの婚約破棄など不敬だとして公爵家を訴えられなくてよかった。それに時間稼ぎをされているだけならば婚約破棄は時間の問題だ。ハインリヒト殿下の様子からして準備が整い次第にヒロインと婚約したがるはずだし。
ちなみに私が修道院に行こうと考えている事を打ち明けたら「修道院(と言う名のリゾート地)か、婚約破棄の手続きが済んだら一緒に行こう!ルージュたんと親子旅行だ!」と喜ばれた。いえ、お父様まで修道院に行ってるどうするんです?今のお父様の様子なら私を追放することはないだろうが、それでもケジメをつけるためにも悪役令嬢が修道院に行った方が丸く収まると思うのだが。それに、王子が私の処分を言い出したら厄介だ。そうなる前に先手を打っておきたい。
まぁ、とりあえずは一段落か。調べてみると修道院にも色々あるらしく、問題行動を起こした貴族令嬢を鍛え直すような所もあるので合宿的な感覚で数年修道院に入れば王子の悪意も多少は逸れるだろう。
……やっと、殺されるかもしれないという恐怖から解放される。そう思ったら気が抜けた。
そんなとき。
何気に庭にある大きな樫の木に視線をやると、妙な違和感を感じた。
見覚えのある紺色の髪が風に揺れている。そう、木の枝にぐったりとした様子で誰かがぶらさがって……。
「えっ、エンデアイ先生?!」
なんで(公爵家の)庭の木に引っかかってるのーーーー?!
***
こうゆう事は勢いが大切だと思う(持論)。王子に不敬を働き、王家との政略的な婚約を勝手に断ち切ったのだから父はきっと怒り狂うだろうと思う。でも、ゲーム内の悪役令嬢の父親は厳しいイメージではあるがお父様がルージュココを大切に扱ってくれているのはなんとなく感じている。だから、父の手では殺されたりはしないはずだ。
私の未来は修道院送りか、縁を切られて平民として放り出されるか……どちらにしても冤罪で王子に殺されるよりはずっといいけれど。
どちらの処分の方が公爵家にダメージが少ないのかは、お父様の判断に任せるしかないだろう。
「お父様、お話があります!」
目尻に残る涙を袖で擦り、お父様に対面する。
「ルージュココ」
ゲームでのルージュココの父、ヴォルティス公爵は亡き妻にそっくりな娘を愛してはいるが、妻と同じく痩せ細り傲慢になっていく娘の姿に悩んでもいた。だんだん悪事に手を染めているのではと疑いつつ(これについては悪役令嬢が邪魔になった王子が裏から手を回して冤罪を作り上げたからだが)それでも我が子だからと目を反らしていた。だが、あまりに目に余る言動(これも王子が作った冤罪)が増えてそして王子の怒りに触れてしまい(ヒロインを虐めたから)断罪された娘に対してヴォルティス公爵は娘の存在を諦めてしまったのだ。
……だが、この父親が「悪役令嬢を殺したい」などという描写はなかった。だから、私は父の情に賭ける!
「お父様、突然申し訳ありません。実は、ハインリヒト殿下との婚約についておはな「やっと婚約破棄できたのか?!」へ?」
悪役令嬢と同じ色をした父の瞳が爛々と輝いた気がした。
「あの王子め、第二王子という肩書きを使って好き勝手しおって!奴がこの数ヶ月で何をしたと思う?!かわいいお前のスリーサイズから行動履歴、どこの店で何を買ったか何を食べたか。毎日の摂取カロリー数に運動量をあらゆる手を使って調べ上げ、さらにルージュココの新しい制服を作ると知ったら匿名で金を送り制服になんともハレンチな仕掛けをしろと要求していたんだぞ!あ、あのハレンチ王子の依頼を断ったお針子軍団の皆さんには臨時ボーナスだしといたからね、ルージュたん!」
……あの匿名の依頼、殿下だったんだ。うん?なぜお父様はそんなこと知って……、へ?「ルージュたん」?
「しかもルージュたんと言う最高に可愛くて素晴らしい婚約者がいながらどこぞのお花畑男爵令嬢と噂になるなど言語道断!他の者に付け入られる隙を与えるなどたるんどる証拠だ!そんな男などルージュたんの婿になど認めるわけにいくかぁ!
あのストーカー変態王子などこの父が成敗してくれるぅ!!」
「あ、あの……お父様?」
「しかし、どうやって婚約破棄できたのだ?これまで再三と陛下に婚約破棄を申し込んでいたがハインリヒト殿下が承知しないからとことごとく断られていたのに……。やはり男爵令嬢に浮気しおったのか?!まさかルージュたんに冤罪でもふっかけようものならあの首を捻って千切ってやるが……!」
「えっと、あの。婚約破棄は私から突きつけて来たので……でも殿下も何もおっしゃらなかったし了承してもらえたかと……」
「そうか、よくやった!さすがは父の娘だ!これまでは(一応)王子の婚約者だから厳しくせねばと我慢していたが、これでルージュたんは自由の身だ!この父に存分に甘えていいんだぞ!やったーっ!」
万歳三唱をして「今すぐ陛下に婚約破棄の書類に判を押してもらってくるからな!帰ってきたらパーティーだぁ!!」と叫びながら嵐のように屋敷を飛び出していったお父様。
……あれ?今、再三と陛下に婚約破棄を申し込んでたって言った?お父様、婚約破棄に賛成だったの~っ?!
訳がわからず呆然とする私に侍女がお茶を勧めてくれたのだった。
✽✽✽
そんなわけで、翌日。私は学園を休んで自室の窓から空を眺めていた。あの後、帰宅したお父様は「陛下め、時間稼ぎしてきやがって……」とブツブツ言いながら爪を噛んでいたので、すぐさま婚約破棄には至らなかったらしい。でもまぁ、確かに王子から婚約破棄されたならまだしも下の位の公爵令嬢から言い出した婚約破棄では王家のメンツもあるのだろう。それに新たに男爵令嬢を王子の婚約者にするにしても時間がかかるはずだ。スムーズに男爵令嬢を王子の婚約者にするための準備期間の間の穴埋めに私を利用するつもりなのかもしれない。
それでも、公爵令嬢からの婚約破棄など不敬だとして公爵家を訴えられなくてよかった。それに時間稼ぎをされているだけならば婚約破棄は時間の問題だ。ハインリヒト殿下の様子からして準備が整い次第にヒロインと婚約したがるはずだし。
ちなみに私が修道院に行こうと考えている事を打ち明けたら「修道院(と言う名のリゾート地)か、婚約破棄の手続きが済んだら一緒に行こう!ルージュたんと親子旅行だ!」と喜ばれた。いえ、お父様まで修道院に行ってるどうするんです?今のお父様の様子なら私を追放することはないだろうが、それでもケジメをつけるためにも悪役令嬢が修道院に行った方が丸く収まると思うのだが。それに、王子が私の処分を言い出したら厄介だ。そうなる前に先手を打っておきたい。
まぁ、とりあえずは一段落か。調べてみると修道院にも色々あるらしく、問題行動を起こした貴族令嬢を鍛え直すような所もあるので合宿的な感覚で数年修道院に入れば王子の悪意も多少は逸れるだろう。
……やっと、殺されるかもしれないという恐怖から解放される。そう思ったら気が抜けた。
そんなとき。
何気に庭にある大きな樫の木に視線をやると、妙な違和感を感じた。
見覚えのある紺色の髪が風に揺れている。そう、木の枝にぐったりとした様子で誰かがぶらさがって……。
「えっ、エンデアイ先生?!」
なんで(公爵家の)庭の木に引っかかってるのーーーー?!
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