25 / 44
だって人間だもの(錬金術師視点)
しおりを挟む
「ここで死んだら、師匠に殺される!」
『なんなら今すぐ死ね。僕が引導を渡してやる』
なんとか死の淵から生還し、思わずそんなこと叫びながら起あがると……目の前には黄水晶のように煌めく髪と瞳を持ったとんでもない美少年が虫けらでも見るかのように冷たい視線で俺を見下ろしていた。
ーーーーゾクリ。と、視線が合わさった瞬間に悪寒が背筋を駆け巡る。あ、これヤバイやつ。と俺の本能がサイレンのように危険を訴えた。
「あ、あの、どちら様で……」
これでも師匠に鍛えられてまぁまぁ強くなったはずの俺だが、この美少年の威圧の凄さに再び気絶しそうになる。だが殺意に満ちた猛獣の前で気を失っらそれこそ絶命だ。師匠に殺される前に殺されてしまうだろう。助かる道を探すべく辺りに視線を動かすがそこは洞窟のような場所で地面も壁しっとりと濡れている。俺はこの危機を脱するべく脳内の知識をフル回転させた。
『……』
怖い。黙ったまま俺を見下ろす美少年がマジ怖い。まず人間じゃないだろうとは思っているが、完璧な人型になれる魔獣なんてそれこそ伝説級の生き物確定の証拠である。いくら俺が有能な錬金術師でも勝てる見込みはかなり低いと推察するしかない。
しかしその美少年の背後に大きな湖が見えた時、ほんの一筋の希望の光が差し込んだ気がした。
このひんやりした空気感、密閉されてるようにぐるっと囲む洞窟の壁。さらには湖だ。十中八九あの湖は地下水路として地上と繋がっているだろう。それにこの世界の魔物事情はわかっている。師匠も言っていたが“お約束”とか“フラグ回収”とか様々な要因は必ず事件を起こすものだ。
……この洞窟、きっと水系の魔物が住んでいる!
この美少年も魔物だろうが、水系の魔物といえば人魚や怪魚などレア度の高い高位魔物だ。特に人魚ならば水を操ってこの美少年を捕えることも可能なはず。俺の錬金術で魔物を呼び寄せればきっと人魚が現れ、この美少年と戦うだろう。そうなれば、魔物同士が争っている間に地下水路から逃げ『アンバー様、お申し付け通り賢者様の足留めをして参りましたぁ!さぁ、バレないうちにその錬金術師をヤッてしまいましょう!』人魚現れたーーーーっ!?へ?人魚?!でも男?!人魚って女しかいないはずじゃ……『うるさい、ベクター』『ごめんなさい~っ!』いやその前にこの人魚、美少年に土下座してる?!
『アンバー様は手厳しいです……。ワタクシこんなに美しいのに』
『早くしろ、エターナに気付かれたら全員が怒られるんだぞ』
『わかってますよぅ。こほん。では、そこの人間……あなたは錬金術師ということで合ってますか?』
「え、あ、錬金術師、だけど……」
まさかこの美少年、人魚を手懐けているとは……。もはや戦闘は避けられないのか。まさかこの美少年と人魚の両方を相手にするはめになるなんてこんなの死亡フラグじゃないかぁぁぁあ!!しかし、黙って殺されるのも嫌だ。こうなったら錬成陣を展開してーーーー。
俺が冷や汗をかきながら、後ろに隠した手でこっそりと錬成陣を作ろうとしたその時。
『錬金術師殿、我々のお願いを聞いて下さいませんか?』
人魚がにっこりと笑って頭を下げたのだった。
『こんな人間に頼まないといけないなんて……僕はこいつ嫌いだ!もっと齧ってやればよかった!』
『まぁまぁ、そう言わずに。賢者様に内緒で特別なアイテムを作って頂くためにはこうやってお願いするしかありません。ああ、申し訳ありません、アンバー様は少々拗ねてらっしゃるのです。まだ子供ですので』
『子供じゃない!こうやって自力で変身する練習もして魔力のコントロールもだいぶ出来るようになったし!ベクターの馬鹿!』
『それでも、まだ賢者様に魔力付与なさるのは危ないですよ。ちょっとでも加減を間違えれば賢者様のお体が爆発しかねません。それくらいにアンバー様の魔力は凄まじいのですから』
『あんな奴、僕が巨大化して丸呑みドンしてやる!』
『賢者様から拾い食いは禁止されているでしょう』
俺は夢でも見てるのだろうか。あれから人魚が低姿勢で俺にお願い事をしてきて、拗ねて頬を膨らませる美少年(俺を丸呑みするとか恐ろしい事を言っているが)をなだめている。というか、あんなに殺気だらけの威圧を放ってきてたくせに拗ねてただけとかもう意味わからん!!
なんかモメてる(?)みたいだし、今のうちに逃げられないかな……。と、ズリっと体を後退させようとした途端、人魚が凄まじい速さで俺の肩を掴んだ。
そしてさっきまで困ったように笑っていた目が、スッと鋭くなり俺を射抜いた。
『……というわけでして、これ以上アンバー様がヘソを曲げられるとワタクシとしても非常に困るのです。もちろん、協力していただけますよね?』
「こ、断るって言っ『丸呑みされるのと細切れになって魚の餌になるの、お好きな方をお選びください』……きょ、協力させてイタダキマス……」
拝啓、師匠様。穏やかそうに見えた人魚が1番怖かったデス。
だってこの人魚からも美少年に負けないほどの殺気を感じるだよ!怖いよ!!師匠ならなんだかんだと対峙できそうだけど(規格外だから)、いくら錬金術師とはいえ俺は転生してきただけのだだの人間なんだよ~っ!!
『なんなら今すぐ死ね。僕が引導を渡してやる』
なんとか死の淵から生還し、思わずそんなこと叫びながら起あがると……目の前には黄水晶のように煌めく髪と瞳を持ったとんでもない美少年が虫けらでも見るかのように冷たい視線で俺を見下ろしていた。
ーーーーゾクリ。と、視線が合わさった瞬間に悪寒が背筋を駆け巡る。あ、これヤバイやつ。と俺の本能がサイレンのように危険を訴えた。
「あ、あの、どちら様で……」
これでも師匠に鍛えられてまぁまぁ強くなったはずの俺だが、この美少年の威圧の凄さに再び気絶しそうになる。だが殺意に満ちた猛獣の前で気を失っらそれこそ絶命だ。師匠に殺される前に殺されてしまうだろう。助かる道を探すべく辺りに視線を動かすがそこは洞窟のような場所で地面も壁しっとりと濡れている。俺はこの危機を脱するべく脳内の知識をフル回転させた。
『……』
怖い。黙ったまま俺を見下ろす美少年がマジ怖い。まず人間じゃないだろうとは思っているが、完璧な人型になれる魔獣なんてそれこそ伝説級の生き物確定の証拠である。いくら俺が有能な錬金術師でも勝てる見込みはかなり低いと推察するしかない。
しかしその美少年の背後に大きな湖が見えた時、ほんの一筋の希望の光が差し込んだ気がした。
このひんやりした空気感、密閉されてるようにぐるっと囲む洞窟の壁。さらには湖だ。十中八九あの湖は地下水路として地上と繋がっているだろう。それにこの世界の魔物事情はわかっている。師匠も言っていたが“お約束”とか“フラグ回収”とか様々な要因は必ず事件を起こすものだ。
……この洞窟、きっと水系の魔物が住んでいる!
この美少年も魔物だろうが、水系の魔物といえば人魚や怪魚などレア度の高い高位魔物だ。特に人魚ならば水を操ってこの美少年を捕えることも可能なはず。俺の錬金術で魔物を呼び寄せればきっと人魚が現れ、この美少年と戦うだろう。そうなれば、魔物同士が争っている間に地下水路から逃げ『アンバー様、お申し付け通り賢者様の足留めをして参りましたぁ!さぁ、バレないうちにその錬金術師をヤッてしまいましょう!』人魚現れたーーーーっ!?へ?人魚?!でも男?!人魚って女しかいないはずじゃ……『うるさい、ベクター』『ごめんなさい~っ!』いやその前にこの人魚、美少年に土下座してる?!
『アンバー様は手厳しいです……。ワタクシこんなに美しいのに』
『早くしろ、エターナに気付かれたら全員が怒られるんだぞ』
『わかってますよぅ。こほん。では、そこの人間……あなたは錬金術師ということで合ってますか?』
「え、あ、錬金術師、だけど……」
まさかこの美少年、人魚を手懐けているとは……。もはや戦闘は避けられないのか。まさかこの美少年と人魚の両方を相手にするはめになるなんてこんなの死亡フラグじゃないかぁぁぁあ!!しかし、黙って殺されるのも嫌だ。こうなったら錬成陣を展開してーーーー。
俺が冷や汗をかきながら、後ろに隠した手でこっそりと錬成陣を作ろうとしたその時。
『錬金術師殿、我々のお願いを聞いて下さいませんか?』
人魚がにっこりと笑って頭を下げたのだった。
『こんな人間に頼まないといけないなんて……僕はこいつ嫌いだ!もっと齧ってやればよかった!』
『まぁまぁ、そう言わずに。賢者様に内緒で特別なアイテムを作って頂くためにはこうやってお願いするしかありません。ああ、申し訳ありません、アンバー様は少々拗ねてらっしゃるのです。まだ子供ですので』
『子供じゃない!こうやって自力で変身する練習もして魔力のコントロールもだいぶ出来るようになったし!ベクターの馬鹿!』
『それでも、まだ賢者様に魔力付与なさるのは危ないですよ。ちょっとでも加減を間違えれば賢者様のお体が爆発しかねません。それくらいにアンバー様の魔力は凄まじいのですから』
『あんな奴、僕が巨大化して丸呑みドンしてやる!』
『賢者様から拾い食いは禁止されているでしょう』
俺は夢でも見てるのだろうか。あれから人魚が低姿勢で俺にお願い事をしてきて、拗ねて頬を膨らませる美少年(俺を丸呑みするとか恐ろしい事を言っているが)をなだめている。というか、あんなに殺気だらけの威圧を放ってきてたくせに拗ねてただけとかもう意味わからん!!
なんかモメてる(?)みたいだし、今のうちに逃げられないかな……。と、ズリっと体を後退させようとした途端、人魚が凄まじい速さで俺の肩を掴んだ。
そしてさっきまで困ったように笑っていた目が、スッと鋭くなり俺を射抜いた。
『……というわけでして、これ以上アンバー様がヘソを曲げられるとワタクシとしても非常に困るのです。もちろん、協力していただけますよね?』
「こ、断るって言っ『丸呑みされるのと細切れになって魚の餌になるの、お好きな方をお選びください』……きょ、協力させてイタダキマス……」
拝啓、師匠様。穏やかそうに見えた人魚が1番怖かったデス。
だってこの人魚からも美少年に負けないほどの殺気を感じるだよ!怖いよ!!師匠ならなんだかんだと対峙できそうだけど(規格外だから)、いくら錬金術師とはいえ俺は転生してきただけのだだの人間なんだよ~っ!!
1
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
幼い頃から天の声が聞こえるシラク公爵の娘であるミレーヌ。
この天の声にはいろいろと助けられていた。父親の命を救ってくれたのもこの天の声。
そして、進学に向けて騎士科か魔導科を選択しなければならなくなったとき、助言をしてくれたのも天の声。
ミレーヌはこの天の声に従い、騎士科を選ぶことにした。
なぜなら、魔導科を選ぶと、皇子の婚約者という立派な役割がもれなくついてきてしまうからだ。
※完結しました。新年早々、クスっとしていただけたら幸いです。軽くお読みください。
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる