上 下
23 / 44

それとこれとは別問題だ

しおりを挟む
ぐーきゅるきゅるきゅる……ぐぅぅぅぅぅーーーーっ!


「……生きてはいるみたいだけど、どうしたらいいかしら」

 とりあえず黒マントの下でプルプルしながら動いてはいるみたいだが、ただ単にお腹が空いて行き倒れてる人なのだろうか。

 すると「ご、ごはん……」と小さな声が聞こえてきた。やはり空腹なだけの人のようだ。

「さっき買った携帯食ならあるけど、食べられ「ごぉはぁぁあぁーーーーん!」きゃあっ」

 手に持っていた紙袋からさっきのお店で買った携帯食を取り出そうとガサゴソした途端、虫の息だった黒マントの人が私に向かって飢えた獣のように飛びかかってきたのだ。




 それはまるで、時間がゆっくりと動いているかのように見えた。

 ゆっくりとゆっくりと……少し泥で汚れた大きな手のひらが、私を捕らえようと近づいた瞬間ーーーー。








『ぴぎぃ!』『わん!』「ぎゃぁぁぁぁあ!?」









 真っ黒マントの不審者(空腹)は、アンバーとフラムにめちゃくちゃお仕置きされていた。







 うーん……。と、私は悩んでいた。

 確かに急に襲われそうになり(携帯食を奪われそうになり)驚いたわけだが……。


 アンバーがその不審者の足を咥えてぶんぶんと振り回し、フラムがその上半身を炎でこんがりと炙っている現状になんとなくデジャヴを感じつつ、やっぱり止めないとなー。なんて思うわけである。

 まぁ、確かに突然襲いかかられて驚いたし、大人の男の人に襲いかかられた恐怖心がないわけではないからしばらくはその状況を見守っていたのだが、不審者なる真っ黒マントの男性の髪型が焦げてアフロになり黒い煙が燻ってきているとなるとこのままではいけない気がするわけだ。さすがに真っ黒焦げにするのはいただけない。

「アンバー、フラム!もう、そのへんで……」

 アンバーとフラムを止めようと手を伸ばす。しかし、その手がアンバーに届く前に……アンバーとフラムの体は天高く吹っ飛ばされていたのだ。

「え?!」

 私が驚きのあまり声をあげると、さっきまでこんがり炙られていた黒マントが仁王立ちし両手を天に向かって掲げたのである。

「オレのご飯を邪魔する奴らは許さぁぁぁん!!」

 そう叫ぶと同時に男の手のひらが光り……その上に探し求めていた陣の模様が浮かび上がった。




 そう、あれは……錬金術師が扱うという、“錬成陣”の模様だ!



 私はそれを瞬時に確認し、動き出したーーーー。





「ちぇすとぉぉぉぉぉ!!」

「ごふっ?!」


 風の魔法で高く飛び上がりアンバーとフラムを両手に抱きしめると、その勢いのまま黒マント男に向かって踵落としを御見舞いしたのである。踵は見事に顔面にクリーンヒットし、男は泡を吹いて気絶したのだった。


 まったく!錬金術師だろうがなんだろうが、うちの子になにするのよ?!この子たちの安全が最優先です!











    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
幼い頃から天の声が聞こえるシラク公爵の娘であるミレーヌ。 この天の声にはいろいろと助けられていた。父親の命を救ってくれたのもこの天の声。 そして、進学に向けて騎士科か魔導科を選択しなければならなくなったとき、助言をしてくれたのも天の声。 ミレーヌはこの天の声に従い、騎士科を選ぶことにした。 なぜなら、魔導科を選ぶと、皇子の婚約者という立派な役割がもれなくついてきてしまうからだ。 ※完結しました。新年早々、クスっとしていただけたら幸いです。軽くお読みください。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

溺愛パパは勇者!〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

ハルン
恋愛
最後の記憶は、消毒液の匂いと白い部屋と機械音。 月宮雫(20)は、長い闘病生活の末に死亡。 『来世があるなら何にも負けない強い身体の子供になりたい』 そう思ったお陰なのか、私は生まれ変わった。 剣と魔法の世界にティア=ムーンライドして朧げな記憶を持ちながら。 でも、相変わらずの病弱体質だった。 しかも父親は、強い身体を持つ勇者。 「確かに『強い身体の子供になりたい』。そう願ったけど、意味が全然ちがーうっ!!」 これは、とても可哀想な私の物語だ。

処理中です...