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王子の苦悩(ヴィンセント視点)
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エターナが俺に別れの伝言(アレフによりだいぶ誇張されていたと思いたい)を告げて姿を消してからすでに数ヶ月が過ぎた。
世間的にはエターナは体調を崩し領地で引き籠もってる事になっているが、エターナが賢者であることを知っている王家には本当の事が教えられたのだ。……というか、主にエターナの両親から苦情だったが。
「ヴィンセント殿下は、そんなにエターナが気に入らないのですか?!」
「あの子は自分を犠牲にしてでも殿下の幸せを願っているのに、家出するまで追い詰めるなんて……賢者として使命を果たせと仰るならちゃんと協力なさってください!」
だから!どこの世界に娘を婚約破棄前提で王子と婚約させたい親がいるんだよぉぉぉ?!と叫びたいのをぐっと我慢する。
「本当に婚約する気がないのなら、なぜいつまでもエターナを婚約者候補のひとりになさっているのですか?賢者の予言など信じないと仰るなら、今すぐエターナと縁を切ってください。そうすればあの子は賢者の使命から解放され、自由に生きられます。今回のループが最後ならば、我々は親としてあの子を幸せにしてあげたいのです」
ラナセン公爵夫妻に真剣な顔でそう詰め寄られ、息を飲み込む。そう、俺はエターナに婚約などしないと言いながら、俺の婚約者候補のリストに未だにエターナの名前を残しているのだ。俺が正式に婚約者を決めない限りエターナは別の婚約者を探すことができない。
賢者の予言通りにするならば婚約を、予言を無視するならば縁切りをーーーー。
「で、でも。本人が、俺と婚約したいと言い張るから……っ」
「ですが、殿下にその意志がないのならば不可能でしょう。婚約者候補から除名されればあの子も諦めて別の方法を探すかもしれません。
というかーーーー婚約破棄前提が嫌だとかぬかしているらしいですが、婚約した後に破棄しなきゃいいだけでしょうがぁ?!なんで殿下まで破棄する気満々で婚約を渋ってるんですか?!つまり、殿下は聖女候補やらと浮気してエターナを捨てる気なんでしょう?!うちの娘になんの不満があるんだーーーーっ!殿下が態度をハッキリさせないからエターナが傷心の家出なんかしたんでしょうがぁあぁぁっ!!このヘタレ王子!」
ラナセン公爵の言い分は最もだ。婚約をした後に聖女が現れようが俺が婚約破棄をしなければいいんだろうけど……お前の娘が婚約と破棄をワンセットで契約書を書かせようしてるから困ってるんだってばぁぁぁ!!
婚約破棄に同意しなければいいのではとは、俺だって考えた。だが、エターナがちょいちょい俺にサインさせたがっていた書類の下の方に小さな字で「17歳になって聖女が現れたら婚約破棄します!この契約を破ったら王家を滅亡させちゃうぞ☆」と書かれているを目撃してしまったからこうやって誤魔化しているのだ。しかもその文面は俺にしか見えないらしく、その書類を見せても誰もが「そんなに婚約破棄が嫌なら、破棄しなければいいんじゃ?」と言ってくる始末である。
俺にしか読めない文字なんて……サインしたら絶対に強制的に執行されるに決まってる!そこに俺の意志なんか関係無いはずだ。
「と、とにかく!今の現状を変える気はない!」
「ちょ、殿下?!まだ話は終わってませんよ?!」
証拠がない以上誰も俺の気持ちなどわかってくれない。と、俺はとにかく逃げ回ったのだが……。
ラナセン公爵夫妻の苦情は俺の父親……国王陛下にまでも伝わっていた。
聖女と名乗るあの女が俺の前に現れた時に「婚約者だ」と言っていたが、それはデタラメでもなんでもなく真実だったのだと思い知る。
なんと、あの女……ミレイユ・イーノス男爵令嬢は本当に俺の婚約者候補だった。教会が育てた聖女の最有力候補であるミレイユは、元平民だか男爵家の養女となり俺の前に現れたのだ。なんと国王は俺がいつまでも婚約者を決めないことに痺れを切らし、“賢者のお告げ”で発見されたという聖女候補ミレイユを特別枠として王子の婚約者候補になることを認めてしまったのだ。(何をお告げなんてしてるんだあいつは!)
「わしは、お前はきっとエターナ嬢を婚約者に選ぶだろうと待っていたのだが……そろそろ時間切れだ。他の婚約者候補もいつまでも煮えきらないお前の態度に難色を示しだした。早く決めてくれなければ婚期を逃してしまう。その場合どう責任をとるつもりかと。
今現在、お前の婚約者候補はエターナ嬢とミレイユ嬢のみだ。エターナ嬢からは定期的に婚約届け(あとはヴィンセントが記入するのみの物)が送られてきているからしばらくは候補から外さないが……そろそろお前も腹を決めろ」
父にそう冷たく言い放たれ、俺は愕然としてしまった。このままでは、どのみち聖女と結婚するしかなくなってしまうのだ。
嫌だ。あんな、色んな男を手玉にとって結婚した後も複数の恋人を侍らせるような女と結婚するなんて嫌だぁぁぁ!!
だから俺は、ミレイユに嫌われようと彼女から逃げ回ることにした。運命がなんだ。幸せがなんだ。もう、誰でもいいからこの女を引き取ってくれ!ループ世界でミレイユと結ばれたというあの二人もしっかり篭絡されているようだし!あぁぁ、隣国の王子はいつになったら留学しにきてあの聖女を連れ帰ってくれるのだろうか?!アレフは……ダメだな。しっかりとミレイユを毛嫌いしている。だいたいミレイユも聖女のくせに詰めが甘いんだよ。超絶シスコンに育ったアレフに義姉の悪口なんか吹き込んだら嫌われるに決まってるじゃないか?!
俺は今日もミレイユから逃げる。途中でアレフに説教されてヘタレ呼ばわりされても、もしかしたら去勢されるかもしれない事に股がキュッとなっても。
もう一度エターナと会って、話し合いたいんだ。そして、婚約破棄しない婚約をしてくれってお願いするんだーーーーっ!
世間的にはエターナは体調を崩し領地で引き籠もってる事になっているが、エターナが賢者であることを知っている王家には本当の事が教えられたのだ。……というか、主にエターナの両親から苦情だったが。
「ヴィンセント殿下は、そんなにエターナが気に入らないのですか?!」
「あの子は自分を犠牲にしてでも殿下の幸せを願っているのに、家出するまで追い詰めるなんて……賢者として使命を果たせと仰るならちゃんと協力なさってください!」
だから!どこの世界に娘を婚約破棄前提で王子と婚約させたい親がいるんだよぉぉぉ?!と叫びたいのをぐっと我慢する。
「本当に婚約する気がないのなら、なぜいつまでもエターナを婚約者候補のひとりになさっているのですか?賢者の予言など信じないと仰るなら、今すぐエターナと縁を切ってください。そうすればあの子は賢者の使命から解放され、自由に生きられます。今回のループが最後ならば、我々は親としてあの子を幸せにしてあげたいのです」
ラナセン公爵夫妻に真剣な顔でそう詰め寄られ、息を飲み込む。そう、俺はエターナに婚約などしないと言いながら、俺の婚約者候補のリストに未だにエターナの名前を残しているのだ。俺が正式に婚約者を決めない限りエターナは別の婚約者を探すことができない。
賢者の予言通りにするならば婚約を、予言を無視するならば縁切りをーーーー。
「で、でも。本人が、俺と婚約したいと言い張るから……っ」
「ですが、殿下にその意志がないのならば不可能でしょう。婚約者候補から除名されればあの子も諦めて別の方法を探すかもしれません。
というかーーーー婚約破棄前提が嫌だとかぬかしているらしいですが、婚約した後に破棄しなきゃいいだけでしょうがぁ?!なんで殿下まで破棄する気満々で婚約を渋ってるんですか?!つまり、殿下は聖女候補やらと浮気してエターナを捨てる気なんでしょう?!うちの娘になんの不満があるんだーーーーっ!殿下が態度をハッキリさせないからエターナが傷心の家出なんかしたんでしょうがぁあぁぁっ!!このヘタレ王子!」
ラナセン公爵の言い分は最もだ。婚約をした後に聖女が現れようが俺が婚約破棄をしなければいいんだろうけど……お前の娘が婚約と破棄をワンセットで契約書を書かせようしてるから困ってるんだってばぁぁぁ!!
婚約破棄に同意しなければいいのではとは、俺だって考えた。だが、エターナがちょいちょい俺にサインさせたがっていた書類の下の方に小さな字で「17歳になって聖女が現れたら婚約破棄します!この契約を破ったら王家を滅亡させちゃうぞ☆」と書かれているを目撃してしまったからこうやって誤魔化しているのだ。しかもその文面は俺にしか見えないらしく、その書類を見せても誰もが「そんなに婚約破棄が嫌なら、破棄しなければいいんじゃ?」と言ってくる始末である。
俺にしか読めない文字なんて……サインしたら絶対に強制的に執行されるに決まってる!そこに俺の意志なんか関係無いはずだ。
「と、とにかく!今の現状を変える気はない!」
「ちょ、殿下?!まだ話は終わってませんよ?!」
証拠がない以上誰も俺の気持ちなどわかってくれない。と、俺はとにかく逃げ回ったのだが……。
ラナセン公爵夫妻の苦情は俺の父親……国王陛下にまでも伝わっていた。
聖女と名乗るあの女が俺の前に現れた時に「婚約者だ」と言っていたが、それはデタラメでもなんでもなく真実だったのだと思い知る。
なんと、あの女……ミレイユ・イーノス男爵令嬢は本当に俺の婚約者候補だった。教会が育てた聖女の最有力候補であるミレイユは、元平民だか男爵家の養女となり俺の前に現れたのだ。なんと国王は俺がいつまでも婚約者を決めないことに痺れを切らし、“賢者のお告げ”で発見されたという聖女候補ミレイユを特別枠として王子の婚約者候補になることを認めてしまったのだ。(何をお告げなんてしてるんだあいつは!)
「わしは、お前はきっとエターナ嬢を婚約者に選ぶだろうと待っていたのだが……そろそろ時間切れだ。他の婚約者候補もいつまでも煮えきらないお前の態度に難色を示しだした。早く決めてくれなければ婚期を逃してしまう。その場合どう責任をとるつもりかと。
今現在、お前の婚約者候補はエターナ嬢とミレイユ嬢のみだ。エターナ嬢からは定期的に婚約届け(あとはヴィンセントが記入するのみの物)が送られてきているからしばらくは候補から外さないが……そろそろお前も腹を決めろ」
父にそう冷たく言い放たれ、俺は愕然としてしまった。このままでは、どのみち聖女と結婚するしかなくなってしまうのだ。
嫌だ。あんな、色んな男を手玉にとって結婚した後も複数の恋人を侍らせるような女と結婚するなんて嫌だぁぁぁ!!
だから俺は、ミレイユに嫌われようと彼女から逃げ回ることにした。運命がなんだ。幸せがなんだ。もう、誰でもいいからこの女を引き取ってくれ!ループ世界でミレイユと結ばれたというあの二人もしっかり篭絡されているようだし!あぁぁ、隣国の王子はいつになったら留学しにきてあの聖女を連れ帰ってくれるのだろうか?!アレフは……ダメだな。しっかりとミレイユを毛嫌いしている。だいたいミレイユも聖女のくせに詰めが甘いんだよ。超絶シスコンに育ったアレフに義姉の悪口なんか吹き込んだら嫌われるに決まってるじゃないか?!
俺は今日もミレイユから逃げる。途中でアレフに説教されてヘタレ呼ばわりされても、もしかしたら去勢されるかもしれない事に股がキュッとなっても。
もう一度エターナと会って、話し合いたいんだ。そして、婚約破棄しない婚約をしてくれってお願いするんだーーーーっ!
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