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まさに、因縁の戦いに決着をつけたのだ

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 みなさん、こんにちは。冒険者のエナことエターナだよ☆私の正体は内緒でお願いします!

 さて、孤児院のみんなに別れを告げ次の目的地へと来た私だが……。そう、ドラゴン退治だ!私を丸飲みドン!した例のあいつだ!

 なんとこのドラゴン、山のてっぺんに巣を作ってるらしい。この山に狩りにくると逆にドラゴンに狩られてしまうとは恐ろしきは弱肉強食の世界よ。そういえばこのドラゴンに丸飲みドン!された時もたまたまその山の上空付近をうろついていたんだっけ。私も狩られとりますがな。

 確かにあのときのドラゴンは強かった。そして大きかった。……だが、今の私は絶対にかぁつ!!




  





「ちぇすとぉぉぉぉぉーーーー!!」


 ちゅどーん!!   


『ぴぎぃ』

「えっ!たまご……?!」




 結果から言えば、私を丸飲みドン!したいつぞやのドラゴンは倒す事が出来た。……というか、和解した。





『……このたまごはワタシの子供です』

「あなたメスだったのね」



 私とドラゴンは(私の一方的な)因縁の戦いの末、お互いを認め合う存在となったのだ。


『そうですか、あなた様は賢者様でしたか。まさかループの世界であなた様を丸飲みドンしていたとはまことに申し訳ございません』

 器用に三つ指をついて頭を下げるドラゴンの姿に逆にこちらが申し訳なくなってきた。

「もういいのよ。たぶん時間軸的にその時のあなたは産まれたばかりの子供を守るためにピリピリしていたんだわ。そんな時に不審な私が近くをうろついていたらそりゃあ丸飲みドンするわよ!」

『ありがとうございます……。最近はこの巣の近くに人間や他のモンスターもやって来るので安心して眠ることも出来ませんでした。普段なら威嚇するだけで人間を殺したりしないのですが……つい』

 てへ☆とこれまた器用にテヘペロするドラゴンママ。そんなテヘペロでどうにかなる案件でもないのだが、大事なたまごがある巣に武器を持った人間が近づいてきたらついやっちゃうのも仕方がないか。だって、村で聞いた話と違うよ!村の人たちに情報収集した時は山に一歩入っただけでドラゴンに襲われるって聞いたのに、ドラゴンママが言うにはかなり巣に近づいたり威嚇しても向かってくる人間にだけテヘペロしたそうだし!

「こうなったら、私も手助けするわ!」

 こうして私は山に魔法をかけた。

 まず、山のてっぺんに進もうとすると霧が現れて道に迷ってそのまま下山してしまう魔法だ。もちろん巣も認識出来ないようにしてあるし、ドラゴン狙いだった場合は記憶があやふやになるようにもした。ドラゴンは恐ろしい伝説級モンスターだが、その鱗や牙は一攫千金並みのお金になるらしい。きっとドリームチャンスを夢見た愚かな輩がたくさんいるのだろう。この辺も殿下が聖女と結ばれたあかつきには逆にドラゴンを保護生物に認定してくれるはずだ。なにせ聖女は博愛主義!ドラゴンママだって人間が襲ってこなければ何もしないと約束してくれたし、聖女となら心を通わせてもいいと言ってくれた。

『本当にありがとうございます、賢者様。これで安心して暮らせます……。あの、厚かましいとは思いますがもうひとつだけお願いが』

『ぴぎぃ』

 ドラゴンママのお腹の下からもぞもぞとはい出てきたのはさっき産まれたばかりの赤ちゃんドラゴンだ。拙い動きで羽を動かし、なんと私の腕の中に飛びこんできた。その体にはドラゴンママと同じ黄色い鱗が黄水晶のように輝いている。

『その子が、賢者様と一緒に行きたいと言っているのです。本当なら産まれるのはまだ数年先だったはずなのですが、ここで孵化したのもなにかの縁だと思いまして』

「……連れて行っちゃっていいの?あなたの子供なのに」

『その子がそう望んでいますので。きっと賢者様のお役に立てると思います』

 赤ちゃんドラゴンに視線をうつすと、うるうるキュルンとした瞳で私を見つめてくる。その瞳の色は私と同じブルーサファイア色だった。

 確かにドラゴンが味方でいてくれるなら、断罪されたあとも生き残れる確率が上がるだろう。断罪後に死から逃げ切れたら、ドラゴンを連れた悪役令嬢兼賢者というのも悪くない。

「そうね……。でも私についてくるなら絶対に自分の命を優先すると約束出来る?今までのループでは私は必ず死んでいたの。今度は死なないようにするつもりだけど、私の死に巻き込まれそうになったら、私から離れてドラゴンママの元へ帰るのよ。絶対よ?」

『ぴぎぃ!』

 わかったのかわかってないのか、赤ちゃんドラゴンは尻尾をピン!として瞳を輝かせた。

「うーん、心配ね。もしものときはドラゴンママがこの子を迎えに来てくれない?生き残るつもりだけどこのテンプレ世界でどこまでやれるかはまだ自信がないのよ」

『それでしたらワタシの鱗をお持ち下さい。緊急事態にその鱗を割って下さればワタシにはその場所がわかります。そうすれば、即座にお迎えに上がりますので』

 そう言ってドラゴンママは黄水晶色の鱗を1枚渡してくれた。私はそれを魔法でネックレスに加工して首からぶら下げる。ドラゴンの鱗だとバレたら盗もうとする人間もいるから宝石に見えるように認識阻害の魔法もかけておいた。

「ありがとう、ドラゴンママ!もしものときはこの子を連れて逃げてね!赤ちゃんドラゴンは……あ、名前ってつけても大丈夫?このままじゃ呼びにくいし」

『もちろんです』

 こうして私は赤ちゃんドラゴンに「アンバー」と名付け、ドラゴンママに別れを告げたのだった。


















 ドラゴンママはエターナと我が子が消えた方向を見て、嬉しそうに目を細める。

『……賢者様。いいえ、きっとあの方こそが“真の聖女様”に違いない。ドラゴンであるワタシと心を通わせ、我が子があんなにも心を許す人間なのだから』

 聖女とは、果てしなく強く、そして全てを守り慈しむ存在。ドラゴンを恐れずに立ち向かい、話合いに応じる人間など聖女以外にはありえないだろう。

 ドラゴンは天に向かって吼えた。『聖女が現れた』と。

 それは空に、大地に、海に響き渡り、いまだ存在を隠しているモンスターたちに伝わった。真の聖女が現れたのならば災害を起こすのは控えねばならぬなと、暗黙の了解があったとかなかったとか。(もしも怪魚が生きていたら、即座に住処を変えていただろうに……残念!)









余談。

「もうあの山にドラゴンはいませんでした!どうやら他の山に住処を変えたようです!」

 ドラゴンに怯えていた村の村長に冒険者として調査を終え報告をしに行く。私が新米冒険者だと知り疑いの目で見て来たのでたまたま通りかかった他の冒険者に頼みさらに調査をしてもらった。

「いやぁ、本当にドラゴンはいませんでした。そちらが言われていた巣もありませんでしたよ」

 男性冒険者のその言葉にやっと納得してくれた村長だった。ちなみにアンバーは私の肩に乗っているが、他の人にはちょっと変わったトカゲだと認識されているはずだ。

 トカゲを連れた新米冒険者エナの爆誕である!







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