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闇の訪れ
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天に被さる深い暗雲、広大無辺に轟く雷鳴。大気は震え、けたたましく嘶き、一帯の景色は歪に溶ける。
「おや、気色悪い魔力をお漏らししてるっすよー」
「湧きあがる魔力の奔流、今しばらく抑え込んでおくつもりだったが……残念ながら勇者アルテミアよ、もはや抑える必要はなくなった」
「いやそう言わず、ぜひ永遠に抑えててほしいっす」
「復活直後の肉体と魔力を馴染ませるため、魔力を抑え込んでいたのだ……だがもはや十分に馴染んだ、ここからは全開で相手をしてやろう」
溢れ出す闇の魔力は、重油のような粘性を帯びている。抑え込まれていたことで凝縮され、ドロドロと変質しているのだ。あまりにも濃く重い、この上なく異質な魔力である。
「力が有り余るとは、まさしく今の余を差した言葉だな」
「最悪っす、気色悪さ倍層っす」
「貴様等にとっての最悪はここからだ……ぬおおおっ!」
ガレウスは四本の腕を放射状に掲げ、勢いよく魔力を放出する。瞬く間に広がる様は、魔力の大氾濫といった様相だ。
「余を信奉する者に告ぐ、余の力の一端を受け取れ!」
「……これは、ガレウス様!」
「……ゴオオオオッ!」
広がる魔力はザナロワに、ヴァンナドゥルガに、ガレウスを信奉する全ての者に強大な力を授ける。
すなわちガレウスは自信の力を分配し、ガレウス邪教団そのものを強化しているのだ。まさに有り余るほどの力、魔力を有していなければ不可能な芸当である。
「そこまでっす、これ以上は──」
「邪魔はさせんぞ、出でよ我が眷属!」
「「「「「「ギュオオオォ!」」」」」」
「──うげっ!?」
ガレウスの呼び出し応じ、闇の濁流から六羽の怪鳥が飛び出してくる。
二対四枚の細長い翼、全身に生えた蠢く触手、敵を射すくめる三つの眼、並のドラゴンを凌駕する巨体。ガレウスに引けを取らない、邪神の眷属に相応しい異様さだ。
「我が眷属たる“兇鳥ギュエール”よ、しばらく勇者アルテミアと遊んでやれ」
「「「「「「ギュオオッ!」」」」」」
「ゴミの眷属だけあって、ゴミみたいに邪魔っすね!」
「「「「「「ギュオオオッ!!」」」」」」
「さっさと片づけるっすよ、神聖魔法──」
兇鳥ギュエールは並の魔物と比較にならないほど手強く、六羽を同時に相手取るとなれば、流石のアンナマリアでも苦戦は免れない。
とはいえアンナマリアの強さは別格である、苦戦はしても負けるようなことはない。斬撃と魔法を織り交ぜた高度な立ち回りで、一羽ずつ確実に沈めていく。
「これで最後っす……それっ!」
「ギュエエェ……ッ!?」
「はぁ……はぁ……、ああもう、無駄な時間を使わされたっす」
「こうも容易く我が眷属を退けるとは、勇者の名は伊達ではない……だが少し遅かったな、すでに余の魔力は全域へと広がった」
「うげぇ、気色悪い魔力まみれっす……ふぅ」
大量の魔力を放出したにもかかわらず、未だガレウスは溢れんばかりの魔力を漲らせている。
対照的にアンナマリアは疲弊している様子、やはりヨグソードなしの戦闘では限界があるのだろう。
「まったく面倒なことをしやがるっすね……」
「どうした勇者アルテミア、減らず口を忘れているぞ」
「おっと、まさかのご指摘っす。ははぁ、さてはまた私に口汚く罵られたくて下手な煽りを……気持ち悪っす!」
「まだまだ元気そうだな、そんな貴様に一つ教えよう……」
ガレウスは遥か彼方、沈む夕日で真っ赤に染まる地平線を差して一言。
「これより世界は夜を迎える、この意味は分かるな?」
日は沈み、闇に連なる者達の時間が訪れる──。
「おや、気色悪い魔力をお漏らししてるっすよー」
「湧きあがる魔力の奔流、今しばらく抑え込んでおくつもりだったが……残念ながら勇者アルテミアよ、もはや抑える必要はなくなった」
「いやそう言わず、ぜひ永遠に抑えててほしいっす」
「復活直後の肉体と魔力を馴染ませるため、魔力を抑え込んでいたのだ……だがもはや十分に馴染んだ、ここからは全開で相手をしてやろう」
溢れ出す闇の魔力は、重油のような粘性を帯びている。抑え込まれていたことで凝縮され、ドロドロと変質しているのだ。あまりにも濃く重い、この上なく異質な魔力である。
「力が有り余るとは、まさしく今の余を差した言葉だな」
「最悪っす、気色悪さ倍層っす」
「貴様等にとっての最悪はここからだ……ぬおおおっ!」
ガレウスは四本の腕を放射状に掲げ、勢いよく魔力を放出する。瞬く間に広がる様は、魔力の大氾濫といった様相だ。
「余を信奉する者に告ぐ、余の力の一端を受け取れ!」
「……これは、ガレウス様!」
「……ゴオオオオッ!」
広がる魔力はザナロワに、ヴァンナドゥルガに、ガレウスを信奉する全ての者に強大な力を授ける。
すなわちガレウスは自信の力を分配し、ガレウス邪教団そのものを強化しているのだ。まさに有り余るほどの力、魔力を有していなければ不可能な芸当である。
「そこまでっす、これ以上は──」
「邪魔はさせんぞ、出でよ我が眷属!」
「「「「「「ギュオオオォ!」」」」」」
「──うげっ!?」
ガレウスの呼び出し応じ、闇の濁流から六羽の怪鳥が飛び出してくる。
二対四枚の細長い翼、全身に生えた蠢く触手、敵を射すくめる三つの眼、並のドラゴンを凌駕する巨体。ガレウスに引けを取らない、邪神の眷属に相応しい異様さだ。
「我が眷属たる“兇鳥ギュエール”よ、しばらく勇者アルテミアと遊んでやれ」
「「「「「「ギュオオッ!」」」」」」
「ゴミの眷属だけあって、ゴミみたいに邪魔っすね!」
「「「「「「ギュオオオッ!!」」」」」」
「さっさと片づけるっすよ、神聖魔法──」
兇鳥ギュエールは並の魔物と比較にならないほど手強く、六羽を同時に相手取るとなれば、流石のアンナマリアでも苦戦は免れない。
とはいえアンナマリアの強さは別格である、苦戦はしても負けるようなことはない。斬撃と魔法を織り交ぜた高度な立ち回りで、一羽ずつ確実に沈めていく。
「これで最後っす……それっ!」
「ギュエエェ……ッ!?」
「はぁ……はぁ……、ああもう、無駄な時間を使わされたっす」
「こうも容易く我が眷属を退けるとは、勇者の名は伊達ではない……だが少し遅かったな、すでに余の魔力は全域へと広がった」
「うげぇ、気色悪い魔力まみれっす……ふぅ」
大量の魔力を放出したにもかかわらず、未だガレウスは溢れんばかりの魔力を漲らせている。
対照的にアンナマリアは疲弊している様子、やはりヨグソードなしの戦闘では限界があるのだろう。
「まったく面倒なことをしやがるっすね……」
「どうした勇者アルテミア、減らず口を忘れているぞ」
「おっと、まさかのご指摘っす。ははぁ、さてはまた私に口汚く罵られたくて下手な煽りを……気持ち悪っす!」
「まだまだ元気そうだな、そんな貴様に一つ教えよう……」
ガレウスは遥か彼方、沈む夕日で真っ赤に染まる地平線を差して一言。
「これより世界は夜を迎える、この意味は分かるな?」
日は沈み、闇に連なる者達の時間が訪れる──。
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