273 / 310
学期末
しおりを挟む
ご機嫌な日差し、戯れるそよ風、命あるものは生を謳歌する。今日もロームルス学園は平和そのもの、邪神復活とはまったくの無縁だ。
「──という経緯から南の大国、南ディナール王国とロムルス王国は友好国となったのよ」
教室塔二階の大教室では、普段通りの授業が行われていた。教壇にヴィクトリア女王、生徒の中にシャルロット、二人は王族だがロームルス城での合同軍事演習発表には参加していない。なぜなら授業はとても大切だから、という建前で重苦しい集まりから逃げてきたのである。
「反対に北の大国“アルキア王国”とは、長年難しい関係が続いているわ。アルキア王国とロムルス王国は、ロアーナ山脈を挟んで交易を──」
この日の授業は他国とロムルス王国の関係性について、生徒達はヴィクトリア女王の授業に聞き入っている。それなりに難しい内容だが、ヴィクトリア女王の巧みな話術は生徒達を飽きさせないのである。
「というわけで……あら、もうこんな時間? それでは今日の授業をお終いにしましょう!」
「はーいなのじゃ、楽しかったのじゃ!」
相変わらずウルリカ様は元気いっぱい、元気すぎて立ちあがった拍子に机を引っくり返してしまう。慌てて机を元に戻すと、今度は椅子を引っくり返して大慌て。
「あわっ、あわっ……」
「落ち着いてウルリカちゃん、お知らせがあるから最後まで座って聞いてね」
「ふむ、なんじゃろうな?」
「お知らせ一つ目……来週末は上級生の卒業式よ、皆で盛大に送り出しましょうね」
「なんと! はじめての卒業式じゃ、ワクワクするのじゃ!」
入学して間もなく一年、ウルリカ様にとっては進級の時期であり、上級生にとっては卒業の時期となる。初の卒業式参加を前に、ウルリカ様はワクワクを抑えられない様子。
「お知らせ二つ目……卒業式の後はしばらく休校になるわ、お休みの過ごし方を考えておいてね」
「なんと!? どういうことじゃ、お休みは嫌なのじゃ!」
卒業式にワクワクしていたかと思いきや、床に寝そべりバタバタと猛抗議。どうにもウルリカ様は、お休みというものを受け入れ難い模様。
「聞いてウルリカちゃん」
「聞きたくないのじゃ!」
「皆のお休み中、学園では新入生の入学試験を行うのよ」
「嫌じゃ、聞きたくな……入学試験じゃと?」
「ウルリカちゃんの後輩になるかもしれない子達を、受け入れるために必要なお休みなの」
「後輩じゃとーっ!?」
「ウルリカちゃんは立派な先輩になるんだから、後輩達のためにお休みを我慢しなくちゃね?」
「分かったのじゃ、妾は立派な先輩だから我慢するのじゃ!」
この上なく綺麗に言いくるめられ、すっかりウルリカ様は上機嫌。進級はまだ先だというのに、気分はすっかり上級生である。
先輩っぽさを意識しているのか、スンとすまし顔で立ちあがり埃をポンポン、とその時──。
「ふむ?」
ドンッという鈍い音、「ぐえっ」という痛々しい悲鳴。どうやら教室塔の一階で何かあったらしく、ドスンバタンと異様に騒がしい。
「誰かの悲鳴でしたわよね?」
「何か暴れているような音です……」
「降りて確かめてみるのじゃ」
悲鳴の主は果たして誰か、騒ぎの原因は果たして何か、厄介事でないことを祈るばかりである。
「──という経緯から南の大国、南ディナール王国とロムルス王国は友好国となったのよ」
教室塔二階の大教室では、普段通りの授業が行われていた。教壇にヴィクトリア女王、生徒の中にシャルロット、二人は王族だがロームルス城での合同軍事演習発表には参加していない。なぜなら授業はとても大切だから、という建前で重苦しい集まりから逃げてきたのである。
「反対に北の大国“アルキア王国”とは、長年難しい関係が続いているわ。アルキア王国とロムルス王国は、ロアーナ山脈を挟んで交易を──」
この日の授業は他国とロムルス王国の関係性について、生徒達はヴィクトリア女王の授業に聞き入っている。それなりに難しい内容だが、ヴィクトリア女王の巧みな話術は生徒達を飽きさせないのである。
「というわけで……あら、もうこんな時間? それでは今日の授業をお終いにしましょう!」
「はーいなのじゃ、楽しかったのじゃ!」
相変わらずウルリカ様は元気いっぱい、元気すぎて立ちあがった拍子に机を引っくり返してしまう。慌てて机を元に戻すと、今度は椅子を引っくり返して大慌て。
「あわっ、あわっ……」
「落ち着いてウルリカちゃん、お知らせがあるから最後まで座って聞いてね」
「ふむ、なんじゃろうな?」
「お知らせ一つ目……来週末は上級生の卒業式よ、皆で盛大に送り出しましょうね」
「なんと! はじめての卒業式じゃ、ワクワクするのじゃ!」
入学して間もなく一年、ウルリカ様にとっては進級の時期であり、上級生にとっては卒業の時期となる。初の卒業式参加を前に、ウルリカ様はワクワクを抑えられない様子。
「お知らせ二つ目……卒業式の後はしばらく休校になるわ、お休みの過ごし方を考えておいてね」
「なんと!? どういうことじゃ、お休みは嫌なのじゃ!」
卒業式にワクワクしていたかと思いきや、床に寝そべりバタバタと猛抗議。どうにもウルリカ様は、お休みというものを受け入れ難い模様。
「聞いてウルリカちゃん」
「聞きたくないのじゃ!」
「皆のお休み中、学園では新入生の入学試験を行うのよ」
「嫌じゃ、聞きたくな……入学試験じゃと?」
「ウルリカちゃんの後輩になるかもしれない子達を、受け入れるために必要なお休みなの」
「後輩じゃとーっ!?」
「ウルリカちゃんは立派な先輩になるんだから、後輩達のためにお休みを我慢しなくちゃね?」
「分かったのじゃ、妾は立派な先輩だから我慢するのじゃ!」
この上なく綺麗に言いくるめられ、すっかりウルリカ様は上機嫌。進級はまだ先だというのに、気分はすっかり上級生である。
先輩っぽさを意識しているのか、スンとすまし顔で立ちあがり埃をポンポン、とその時──。
「ふむ?」
ドンッという鈍い音、「ぐえっ」という痛々しい悲鳴。どうやら教室塔の一階で何かあったらしく、ドスンバタンと異様に騒がしい。
「誰かの悲鳴でしたわよね?」
「何か暴れているような音です……」
「降りて確かめてみるのじゃ」
悲鳴の主は果たして誰か、騒ぎの原因は果たして何か、厄介事でないことを祈るばかりである。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる