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学期末

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 ご機嫌な日差し、戯れるそよ風、命あるものは生を謳歌する。今日もロームルス学園は平和そのもの、邪神復活とはまったくの無縁だ。

「──という経緯から南の大国、南ディナール王国とロムルス王国は友好国となったのよ」

 教室塔二階の大教室では、普段通りの授業が行われていた。教壇にヴィクトリア女王、生徒の中にシャルロット、二人は王族だがロームルス城での合同軍事演習発表には参加していない。なぜなら授業はとても大切だから、という建前で重苦しい集まりから逃げてきたのである。

「反対に北の大国“アルキア王国”とは、長年難しい関係が続いているわ。アルキア王国とロムルス王国は、ロアーナ山脈を挟んで交易を──」

 この日の授業は他国とロムルス王国の関係性について、生徒達はヴィクトリア女王の授業に聞き入っている。それなりに難しい内容だが、ヴィクトリア女王の巧みな話術は生徒達を飽きさせないのである。

「というわけで……あら、もうこんな時間? それでは今日の授業をお終いにしましょう!」

「はーいなのじゃ、楽しかったのじゃ!」

 相変わらずウルリカ様は元気いっぱい、元気すぎて立ちあがった拍子に机を引っくり返してしまう。慌てて机を元に戻すと、今度は椅子を引っくり返して大慌て。

「あわっ、あわっ……」

「落ち着いてウルリカちゃん、お知らせがあるから最後まで座って聞いてね」

「ふむ、なんじゃろうな?」

「お知らせ一つ目……来週末は上級生の卒業式よ、皆で盛大に送り出しましょうね」

「なんと! はじめての卒業式じゃ、ワクワクするのじゃ!」

 入学して間もなく一年、ウルリカ様にとっては進級の時期であり、上級生にとっては卒業の時期となる。初の卒業式参加を前に、ウルリカ様はワクワクを抑えられない様子。

「お知らせ二つ目……卒業式の後はしばらく休校になるわ、お休みの過ごし方を考えておいてね」

「なんと!? どういうことじゃ、お休みは嫌なのじゃ!」

 卒業式にワクワクしていたかと思いきや、床に寝そべりバタバタと猛抗議。どうにもウルリカ様は、お休みというものを受け入れ難い模様。

「聞いてウルリカちゃん」

「聞きたくないのじゃ!」

「皆のお休み中、学園では新入生の入学試験を行うのよ」

「嫌じゃ、聞きたくな……入学試験じゃと?」

「ウルリカちゃんの後輩になるかもしれない子達を、受け入れるために必要なお休みなの」

「後輩じゃとーっ!?」

「ウルリカちゃんは立派な先輩になるんだから、後輩達のためにお休みを我慢しなくちゃね?」

「分かったのじゃ、妾は立派な先輩だから我慢するのじゃ!」

 この上なく綺麗に言いくるめられ、すっかりウルリカ様は上機嫌。進級はまだ先だというのに、気分はすっかり上級生である。
 先輩っぽさを意識しているのか、スンとすまし顔で立ちあがり埃をポンポン、とその時──。

「ふむ?」

 ドンッという鈍い音、「ぐえっ」という痛々しい悲鳴。どうやら教室塔の一階で何かあったらしく、ドスンバタンと異様に騒がしい。

「誰かの悲鳴でしたわよね?」

「何か暴れているような音です……」

「降りて確かめてみるのじゃ」

 悲鳴の主は果たして誰か、騒ぎの原因は果たして何か、厄介事でないことを祈るばかりである。
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