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一番の友達

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 ウルリカ様の帰省という衝撃的すぎる知らせは、瞬く間にゼノン王の耳へと届いた。そして開かれる緊急の会議、ただ帰省するだけで大騒動である。
 集まっているのはウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの仲良し四人組。そしてゼノン王とヴィクトリア女王、アルフレッド、クリスティーナ、エリザベス、ロムルス王国の王族一家勢揃いだ。

「してウルリカよ、魔界に帰省するというのは本当か?」

「うむ、先日ヴァーミリアとも約束したのじゃ。これを機に魔界へ帰省してみようと思うのじゃ!」

 リィアン襲撃の際にヴァーミリアと交わしていた「気が向いたら帰るのじゃ」という約束。その約束をしっかりと覚えていたらしい、配下思いの優しい魔王様である。

「ウルリカ一人で魔界へ帰省するのか?」

「誰かを一緒に連れていくことも可能じゃ」

「ほほう……」

 ゼノン王は心なしか笑っている様子。悩んでいるというよりは、何かを企んでいるような表情だ。

「ならばウルリカ、友達を魔界へ招待してはどうだ?」

「ふむ?」

「友達の家に招かれる、そして友達を家に招く。友達同士の招きあいは、より仲を深めると思わんか?」

「なるほどなのじゃ!」

「あらあなた、いいこと言うわね」

「そうだろう?」

 ニヤリと微笑むゼノン王、裏のありそうな暗い微笑みである。

「ウルウルの友達といえばシャルロット、オリヴィア、ナターシャの三人でしょうか?」

「そうだな……魔界へ連れていける人数に上限はあるか?」

「時空間魔法の影響を考慮すると……四人程度じゃな!」

「ならばシャルロット、オリヴィア、ナターシャの三人はウルリカの親しき友人として魔界へ同行し、ウルリカとの仲を深めてくるといい!」

「わあっ、ありがとうですわ!」

 ゼノン王の決定に声をあげて喜ぶシャルロット、もちろんオリヴィアとナターシャも大喜びだ。三人仲よく手を取りあってキャイキャイと大はしゃぎである。

「ではシャルロット、オリヴィア、ナターシャ、そして俺の四人で魔界へいってくる! 後のことは頼んだぞ!」

「そう……お父様も含めた四人で魔界へ……?」

 しばしの沈黙、そして──。

「「「「はぁ!?」」」」

 ゼノン王を除いたロムルス王族一家全員、見事に揃って驚きの声をあげる。

「待て父上、いきなり何を言うのだ!」

「ありえない……おかしい……」

「お前達こそ何を言う!」

 娘達の言葉を一蹴するゼノン王、普段の優しいお父さんはどこへやら。

「人間界でウルリカと最初に友達になったのは俺だ! つまり俺はウルリカにとって一番の友達、もはや親友といっても過言ではない!」

「うむ、親友なのじゃ!」

「ならば親友である俺が同行しないわけにはいかんだろう、だよなウルリカ!」

「うむ、その通りなのじゃ!」

 どうやらこの国王様、実は誰よりも魔界へいきたかった様子。ウルリカ様を味方につけ完全にしてやったり顔である。

「しかし父上、国政はどうされるのです?」

「ヴィクトリアとアルフレッド、そして先日集まった大臣達! 盤石すぎる体制ではないか、何も心配はない!」

「でもあなた……」

「そもそもヴィクトリアよ、この時のためにお前を王妃ではなく女王にしたのだ」

「違うでしょ!」

「ともかく俺も魔界へ遊びに……げふんっ! 魔界へ視察にいく、楽しみだなウルリカ!」

「楽しみなのじゃ、一緒に魔界へいくのじゃ!」

 ウルリカ様を味方につけてしまえば誰も逆らえない。こうしてゼノン王も魔界へ遊びに──視察にいくことが決定したのであった。


 ✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡


「ところで父上、溜め散らかした執務はどうされるつもりですか?」

「ふむ……ウルリカよ、出発の予定はいつだ?」

「そうじゃな、三日後の朝にしようかの」

「一週間あっても終わらない量の執務です、諦めるしかないですね?」

「ならば本気を出すしかあるまいて、俺の全力をみせてやろう!」

「はぁ、普段から本気を出してくださいよ……」

 活力に満ちた父親の姿に、すっかり呆れ果てるアルフレッドなのであった。
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