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勝手
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迫りくるインプと吸血鬼、疲労に倒れるヴィクトリア女王。絶望的な状況の中、シャルロットはゆっくりと立ちあがる。
「まだ……まだ終わりではありませんわ!」
「なにをおっしゃるのですか……、まもなく町は襲われるのです……もうお終いですよ……」
ロアーナ兵は絶望のあまり完全に放心状態である。それでもシャルロットは諦めず、必死に声を振り絞る。
「まだですの! まだ町は襲われていない、住人も無事ですのよ!」
「すぐに襲われますよ……終わったも同然です……」
「このっ……弱音をはくのは止めなさーいっ!」
感情が高ぶったシャルロットは、ロアーナ兵の頬をバチーンとはたいてしまう。はたかれたロアーナ兵は驚きで言葉も出ない。
「あっ、ごめんなさい……でもお母様が倒れたからといって、諦めるわけにはいきませんわよ!」
「しかし我々の戦力は微々たるもの……しかも相手は吸血鬼……、なにも出来ませんよ……」
「そんなことありませんわ! ワタクシが……ワタクシがお母様の代わりに、住人への避難を呼びかけますわ!」
「「「「「「「なっ!?」」」」」」」
これにはロアーナ兵だけでなくクラスメイト達も驚きである。王女が自ら危地へ赴こうと言うのだ、驚かずにはいられない。
「お母様が倒れてしまった今、誰かが代りを務めなくてはいけませんわ。そしてそれは王族であるワタクシの役目ですの。民を守るのは王族の務め、それに……」
恐怖に体を震わせながらも、シャルロットは懸命に言葉を絞り出す。
「それにワタクシはロアーナの町と、町の人達が大好きですの! 誰も死なせなくありませんの! ロアーナの町を守りたいのですわ!!」
「シャルロット王女殿下……」
「ただこれはワタクシの勝手な思い、そして勝手な判断ですわ。昨日お母様に叱られたばかりですのに、これではまた叱られてしまいますわね……ふふっ」
笑ってはいるもののシャルロットの意志は固い、叱られるからといって覆るものではないだろう。
「ワタクシは町に残りますわ、でもワタクシの勝手でみんなを危険な目にはあわせられませんの。だからみんなは避難を──」
「絶対に嫌です!」
「──えっ、ナターシャ?」
「シャルロット様が戦うのなら、私も一緒に戦います!」
「へぇっ!?」
ナターシャの申し出に驚くあまり、シャルロットはすっとんきょうな声をあげてしまう。しかしシャルロットの驚きはまだまだ終わらない。
「私だって戦います! シャルロット様をおいて逃げられるはずありません!」
「自分も戦うぞ! 大切なクラスメイトを放ってはおけないからな!」
「ちょっ……相手はインプに吸血鬼ですのよ! 殺されるかもしれませんのよ!」
「大丈夫ですよシャルロット様、その程度の危険は俺達にとっちゃ日常茶飯事ですから」
「どうやら決まりですね、ボク達はシャルロット様と一緒に戦います。ちなみにこれはボク達の勝手な判断ですからね」
「ははっ、みんな一緒に勝手やったら、みんな一緒にヴィクトリア様から叱られるんじゃないか?」
「それいいですねベッポさん! みんなで一緒に叱られちゃいましょうか!」
「みんな……」
危機的状況にもかかわらず、妙な盛りあがりを見せる下級クラスの生徒達。その様子を見たロアーナ兵は静かに立ちあがる。
「町を守る立場である自分が、あんな弱音をはいてしまうとは……申し訳ございませんでした! シャルロット王女殿下、どうか我々とともにロアーナの町をお守りください!!」
「う……うぅ……、みんなありがとう……」
先ほどまでの絶望的な雰囲気はどこへやら、今や全員の瞳に強い光が宿っている。シャルロットの強い思いが絶望を吹き飛ばしたのである。その時──。
「ダメよ……そんな危険なこと……」
「お母様!」
ヴィクトリア女王が意識を取り戻したのである。
「ずっと聞えていたわよ……そんなことより早く避難しなさい……」
「お母様……」
「あとは……私がなんとかするから……」
そうは言うもののヴィクトリア女王は、起きあがることすら出来ないようである。そんなヴィクトリア女王をウルリカ様は優しく抱きかかえる。
「まあまあヴィクトリアよ、ここはロティに任せてみるのじゃ」
「う……ウルリカちゃん……?」
「大丈夫なのじゃ、ロティには妾がついておるのじゃ。ヴィクトリアは安心して休むのじゃ……」
「うぅ……」
やはり限界だったのだろう、ヴィクトリア女王は再び意識を失ってしまう。ウルリカ様はヴィクトリア女王を抱きかかえたまま、コクリとシャルロットに向かってうなずく。
「ヴィクトリアのことは妾に任せておくのじゃ、ロティは思うままやってみるのじゃ。心配はいらんぞ、妾が見守っておるからの!」
「ウルリカ……ありがとう……」
「ちなみにこれは妾の勝手な判断なのじゃ、これで妾も一緒に叱られるはずじゃ。妾だけ仲間外れは嫌じゃからな!」
「ふふっ、そうですわね……!」
溢れる涙を拭い去り、シャルロットは顔をあげる。
こうしてロアーナの町を守るべく、シャルロット達の戦いが幕を開ける。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
数分後、ウルリカ様とヴィクトリア女王は町の宿屋を訪れていた。ヴィクトリア女王を休ませるため、近くの宿屋に飛び込んだのである。
「とりあえずヴィクトリアはここに寝かせておくかの」
ヴィクトリア女王をベッドに寝かせると、ウルリカ様もベッドの端に腰かける。
「それにしても……ロティもみんなも日々成長しておるのう。妾がなんとかしようと思ったのじゃが、しばらくは様子見じゃな……」
そう言うとウルリカ様は空中に魔法陣を展開させる。次の瞬間には魔法陣から、大量のコウモリが溢れ出してくる。部屋を埋めつくすほどの大群だ。
「使い魔達よ、散らばるのじゃ!」
「「「「「キィッ」」」」」
ウルリカ様の命を受け、コウモリ達は一斉に飛び立っていく。
「さて、妾は使い魔達の“目”を通して、みんなの頑張りを見守るとするかの」
そう言うとウルリカ様は、静かに瞼を閉じるのだった。
「まだ……まだ終わりではありませんわ!」
「なにをおっしゃるのですか……、まもなく町は襲われるのです……もうお終いですよ……」
ロアーナ兵は絶望のあまり完全に放心状態である。それでもシャルロットは諦めず、必死に声を振り絞る。
「まだですの! まだ町は襲われていない、住人も無事ですのよ!」
「すぐに襲われますよ……終わったも同然です……」
「このっ……弱音をはくのは止めなさーいっ!」
感情が高ぶったシャルロットは、ロアーナ兵の頬をバチーンとはたいてしまう。はたかれたロアーナ兵は驚きで言葉も出ない。
「あっ、ごめんなさい……でもお母様が倒れたからといって、諦めるわけにはいきませんわよ!」
「しかし我々の戦力は微々たるもの……しかも相手は吸血鬼……、なにも出来ませんよ……」
「そんなことありませんわ! ワタクシが……ワタクシがお母様の代わりに、住人への避難を呼びかけますわ!」
「「「「「「「なっ!?」」」」」」」
これにはロアーナ兵だけでなくクラスメイト達も驚きである。王女が自ら危地へ赴こうと言うのだ、驚かずにはいられない。
「お母様が倒れてしまった今、誰かが代りを務めなくてはいけませんわ。そしてそれは王族であるワタクシの役目ですの。民を守るのは王族の務め、それに……」
恐怖に体を震わせながらも、シャルロットは懸命に言葉を絞り出す。
「それにワタクシはロアーナの町と、町の人達が大好きですの! 誰も死なせなくありませんの! ロアーナの町を守りたいのですわ!!」
「シャルロット王女殿下……」
「ただこれはワタクシの勝手な思い、そして勝手な判断ですわ。昨日お母様に叱られたばかりですのに、これではまた叱られてしまいますわね……ふふっ」
笑ってはいるもののシャルロットの意志は固い、叱られるからといって覆るものではないだろう。
「ワタクシは町に残りますわ、でもワタクシの勝手でみんなを危険な目にはあわせられませんの。だからみんなは避難を──」
「絶対に嫌です!」
「──えっ、ナターシャ?」
「シャルロット様が戦うのなら、私も一緒に戦います!」
「へぇっ!?」
ナターシャの申し出に驚くあまり、シャルロットはすっとんきょうな声をあげてしまう。しかしシャルロットの驚きはまだまだ終わらない。
「私だって戦います! シャルロット様をおいて逃げられるはずありません!」
「自分も戦うぞ! 大切なクラスメイトを放ってはおけないからな!」
「ちょっ……相手はインプに吸血鬼ですのよ! 殺されるかもしれませんのよ!」
「大丈夫ですよシャルロット様、その程度の危険は俺達にとっちゃ日常茶飯事ですから」
「どうやら決まりですね、ボク達はシャルロット様と一緒に戦います。ちなみにこれはボク達の勝手な判断ですからね」
「ははっ、みんな一緒に勝手やったら、みんな一緒にヴィクトリア様から叱られるんじゃないか?」
「それいいですねベッポさん! みんなで一緒に叱られちゃいましょうか!」
「みんな……」
危機的状況にもかかわらず、妙な盛りあがりを見せる下級クラスの生徒達。その様子を見たロアーナ兵は静かに立ちあがる。
「町を守る立場である自分が、あんな弱音をはいてしまうとは……申し訳ございませんでした! シャルロット王女殿下、どうか我々とともにロアーナの町をお守りください!!」
「う……うぅ……、みんなありがとう……」
先ほどまでの絶望的な雰囲気はどこへやら、今や全員の瞳に強い光が宿っている。シャルロットの強い思いが絶望を吹き飛ばしたのである。その時──。
「ダメよ……そんな危険なこと……」
「お母様!」
ヴィクトリア女王が意識を取り戻したのである。
「ずっと聞えていたわよ……そんなことより早く避難しなさい……」
「お母様……」
「あとは……私がなんとかするから……」
そうは言うもののヴィクトリア女王は、起きあがることすら出来ないようである。そんなヴィクトリア女王をウルリカ様は優しく抱きかかえる。
「まあまあヴィクトリアよ、ここはロティに任せてみるのじゃ」
「う……ウルリカちゃん……?」
「大丈夫なのじゃ、ロティには妾がついておるのじゃ。ヴィクトリアは安心して休むのじゃ……」
「うぅ……」
やはり限界だったのだろう、ヴィクトリア女王は再び意識を失ってしまう。ウルリカ様はヴィクトリア女王を抱きかかえたまま、コクリとシャルロットに向かってうなずく。
「ヴィクトリアのことは妾に任せておくのじゃ、ロティは思うままやってみるのじゃ。心配はいらんぞ、妾が見守っておるからの!」
「ウルリカ……ありがとう……」
「ちなみにこれは妾の勝手な判断なのじゃ、これで妾も一緒に叱られるはずじゃ。妾だけ仲間外れは嫌じゃからな!」
「ふふっ、そうですわね……!」
溢れる涙を拭い去り、シャルロットは顔をあげる。
こうしてロアーナの町を守るべく、シャルロット達の戦いが幕を開ける。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
数分後、ウルリカ様とヴィクトリア女王は町の宿屋を訪れていた。ヴィクトリア女王を休ませるため、近くの宿屋に飛び込んだのである。
「とりあえずヴィクトリアはここに寝かせておくかの」
ヴィクトリア女王をベッドに寝かせると、ウルリカ様もベッドの端に腰かける。
「それにしても……ロティもみんなも日々成長しておるのう。妾がなんとかしようと思ったのじゃが、しばらくは様子見じゃな……」
そう言うとウルリカ様は空中に魔法陣を展開させる。次の瞬間には魔法陣から、大量のコウモリが溢れ出してくる。部屋を埋めつくすほどの大群だ。
「使い魔達よ、散らばるのじゃ!」
「「「「「キィッ」」」」」
ウルリカ様の命を受け、コウモリ達は一斉に飛び立っていく。
「さて、妾は使い魔達の“目”を通して、みんなの頑張りを見守るとするかの」
そう言うとウルリカ様は、静かに瞼を閉じるのだった。
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