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思わぬ出会い
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「母上、どうしてロアーナに!?」
「あなた達こそ、どうしてロアーナにいるのかしら?」
思わぬ出会いに目を丸くするヴィクトリア女王、同様にエリザベスも目を丸くして驚いている。
そんな中クリスティーナは、冷静に下級クラスの生徒達を眺めながら口を開く。
「そういえばヘンリーから聞いた……みんなで課外授業にいくって……」
「私もナターシャから聞いたな……そうか! 母上達は課外授業にきているのだな!」
合点がいったエリザベスは、スッキリとした表情で大きく頷く。しかしすぐに表情を曇らせてしまう。
「いやしかし……よりによってロアーナで課外授業とは……」
「あらエリザベス? ロアーナで課外授業をしてはダメなのかしら?」
「ダメというわけではない……しかしなぜロアーナで課外授業を?」
「ロアーナはロムルス王国の伝統や文化を現代に残す町……お母様の故郷でもある……、課外授業先としてはうってつけだと思う……」
「ふふっ、そういうことよ」
クリスティーナの説明を受けて、エリザベスは「なるほど」と納得した様子である。
するとそこへ、パンパンに膨らんだ紙袋を抱えたウルリカ様とシャルロットがやってくる。よく見るとウルリカ様は、ほっぺたまでパンパンだ。
「あむむ? あむぅ……あまあま……? あむむっ!」
もはやなにを言っているのかよく分からない。
「ちょっとウルリカ、頬張りすぎですわよ……って、お姉様達!?」
「シャルロットにウルリカじゃないか、二人もきていたのか!」
「ええ、ワタクシ達は課外授業で……お姉様達はどうしてロアーナに? もしかしてお姉様達も課外授業に参加してくれますの?」
「いいえ……私達は別の目的よ……」
「あまあま……ごくん! それは残念なのじゃ、一緒に課外授業を楽しみたかったのじゃ。あまあま……」
残念そうに眉を八の字に下げるウルリカ様、しかしお菓子を食べる手は一向に止まらない。一心不乱にお菓子を取り出しては、口の中に放り込んでいる。
「ところでウルリカ、先ほどからなにを食べている?」
「これはクイニアンマンというお菓子なのじゃ! あまあま……」
「違いますわよウルリカ、クイニーアマンですわよ」
ウルリカ様が食べているお菓子は、ロアーナの郷土菓子“クイニーアマン”である。カリカリのカラメルに覆われた、バターの香り漂う焼き菓子だ。
「あまあま……もの凄くおいしいのじゃ! みんなで一緒に食べるのじゃ!」
そう言うとウルリカ様は、紙袋に詰まったクイニーアマンを差し出す。バターの香りがふわりと漂い、とてもおいしそうだ。
しかしクリスティーナとエリザベスは、差し出されたクイニーアマンを受け取ろうとしない。
「悪いなウルリカ、今は遠慮しておくよ」
「これから頭を使わないといけない……糖分をとりすぎると眠くなる……」
「そうか……あまあま……」
「あら? もしかしてお姉様達はお仕事でロアーナにきていますの?」
「そう……お父様からのご下命で……」
「姉上! 機密事項だぞ!」
慌てた様子のエリザベスは、強引にクリスティーナの言葉を遮ってしまう。どうやらクリスティーナとエリザベスは、人に言えない事情を抱えているようだ。
「お父様? お父様からご下命を賜っておりますの?」
「それは……秘密……」
「ワタクシ達にも教えられない秘密ですの?」
「悪いなシャルロット、教えられないんだ」
納得がいかない様子で「むぅ……」と声を漏らすシャルロット。一方ヴィクトリア女王は「いいわ!」と優しく微笑む。
「詳しい事情は分からないけれど、とにかく頑張ってくるのよ!」
「ああ! もちろんだ母上!」
「うん……頑張る……」
ヴィクトリア女王に背中を押され、去っていくクリスティーナとエリザベス。二人を見送ったヴィクトリア女王は、パンッと手を叩いて生徒達の方を向く。
「さあ! 私達は課外授業を楽しみましょうね!」
「うむ! 思いっきり楽しむのじゃ──おや?」
元気いっぱいに返事をしたかと思いきや、キョトンと首を傾げてしまうウルリカ様。
「なんと! もうなくなってしまったのじゃ!」
いつの間にやら紙袋はすっからかんになっている。なんとウルリカ様はこの短時間で、大量のクイニーアマンを食べ尽くしてしまったのだ。
「ちょっとウルリカ、いくらなんでも食べすぎですわ──」
「まったく足りんのじゃ! ロティよ、おかわりを貰いにいくのじゃ!」
「ちょっと待っ──きゃあぁっ!?」
お腹を空かせたウルリカ様は、再びシャルロットの手を掴んでお店の方へと突撃していく。毎回振り回されるシャルロットはたまったものではない。
ちなみにこのあとウルリカ様は、クイニーアマンの食べ過ぎでお腹を壊してしまうことになる。しかしそれはまた別のお話──。
「あなた達こそ、どうしてロアーナにいるのかしら?」
思わぬ出会いに目を丸くするヴィクトリア女王、同様にエリザベスも目を丸くして驚いている。
そんな中クリスティーナは、冷静に下級クラスの生徒達を眺めながら口を開く。
「そういえばヘンリーから聞いた……みんなで課外授業にいくって……」
「私もナターシャから聞いたな……そうか! 母上達は課外授業にきているのだな!」
合点がいったエリザベスは、スッキリとした表情で大きく頷く。しかしすぐに表情を曇らせてしまう。
「いやしかし……よりによってロアーナで課外授業とは……」
「あらエリザベス? ロアーナで課外授業をしてはダメなのかしら?」
「ダメというわけではない……しかしなぜロアーナで課外授業を?」
「ロアーナはロムルス王国の伝統や文化を現代に残す町……お母様の故郷でもある……、課外授業先としてはうってつけだと思う……」
「ふふっ、そういうことよ」
クリスティーナの説明を受けて、エリザベスは「なるほど」と納得した様子である。
するとそこへ、パンパンに膨らんだ紙袋を抱えたウルリカ様とシャルロットがやってくる。よく見るとウルリカ様は、ほっぺたまでパンパンだ。
「あむむ? あむぅ……あまあま……? あむむっ!」
もはやなにを言っているのかよく分からない。
「ちょっとウルリカ、頬張りすぎですわよ……って、お姉様達!?」
「シャルロットにウルリカじゃないか、二人もきていたのか!」
「ええ、ワタクシ達は課外授業で……お姉様達はどうしてロアーナに? もしかしてお姉様達も課外授業に参加してくれますの?」
「いいえ……私達は別の目的よ……」
「あまあま……ごくん! それは残念なのじゃ、一緒に課外授業を楽しみたかったのじゃ。あまあま……」
残念そうに眉を八の字に下げるウルリカ様、しかしお菓子を食べる手は一向に止まらない。一心不乱にお菓子を取り出しては、口の中に放り込んでいる。
「ところでウルリカ、先ほどからなにを食べている?」
「これはクイニアンマンというお菓子なのじゃ! あまあま……」
「違いますわよウルリカ、クイニーアマンですわよ」
ウルリカ様が食べているお菓子は、ロアーナの郷土菓子“クイニーアマン”である。カリカリのカラメルに覆われた、バターの香り漂う焼き菓子だ。
「あまあま……もの凄くおいしいのじゃ! みんなで一緒に食べるのじゃ!」
そう言うとウルリカ様は、紙袋に詰まったクイニーアマンを差し出す。バターの香りがふわりと漂い、とてもおいしそうだ。
しかしクリスティーナとエリザベスは、差し出されたクイニーアマンを受け取ろうとしない。
「悪いなウルリカ、今は遠慮しておくよ」
「これから頭を使わないといけない……糖分をとりすぎると眠くなる……」
「そうか……あまあま……」
「あら? もしかしてお姉様達はお仕事でロアーナにきていますの?」
「そう……お父様からのご下命で……」
「姉上! 機密事項だぞ!」
慌てた様子のエリザベスは、強引にクリスティーナの言葉を遮ってしまう。どうやらクリスティーナとエリザベスは、人に言えない事情を抱えているようだ。
「お父様? お父様からご下命を賜っておりますの?」
「それは……秘密……」
「ワタクシ達にも教えられない秘密ですの?」
「悪いなシャルロット、教えられないんだ」
納得がいかない様子で「むぅ……」と声を漏らすシャルロット。一方ヴィクトリア女王は「いいわ!」と優しく微笑む。
「詳しい事情は分からないけれど、とにかく頑張ってくるのよ!」
「ああ! もちろんだ母上!」
「うん……頑張る……」
ヴィクトリア女王に背中を押され、去っていくクリスティーナとエリザベス。二人を見送ったヴィクトリア女王は、パンッと手を叩いて生徒達の方を向く。
「さあ! 私達は課外授業を楽しみましょうね!」
「うむ! 思いっきり楽しむのじゃ──おや?」
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「なんと! もうなくなってしまったのじゃ!」
いつの間にやら紙袋はすっからかんになっている。なんとウルリカ様はこの短時間で、大量のクイニーアマンを食べ尽くしてしまったのだ。
「ちょっとウルリカ、いくらなんでも食べすぎですわ──」
「まったく足りんのじゃ! ロティよ、おかわりを貰いにいくのじゃ!」
「ちょっと待っ──きゃあぁっ!?」
お腹を空かせたウルリカ様は、再びシャルロットの手を掴んでお店の方へと突撃していく。毎回振り回されるシャルロットはたまったものではない。
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