110 / 310
父と息子
しおりを挟む
アルテミア正教会、大聖堂内部。
輝く白亜の回廊を三つの人影が走っていた。ナターシャの救出へと向かう、オリヴィア、シャルロット、シャルルの三人である。
「教主様は礼拝堂におられるはずだ! このまま真っ直ぐ進むんだ!」
シャルルを先頭に回廊を駆け抜ける三人。しかし勢いよく角を曲がったところで、ピタリと足を止めてしまう。
「待っていたぞ、侵入者達よ!」
白い鎧を着た騎士達に通路を塞がれていたのである。ズラリと並ぶ屈強な騎士達は、ビリビリと鋭い威圧感を放っている。
「しまった! 神官騎士団だ!」
「「神官騎士団!?」」
「神官騎士団はアルテミア正教会の誇る精鋭の騎士団だ! 自分達でどうにか出来る相手ではない!」
「大変です! 挟まれてしまいました!」
オリヴィアの声に慌てて振り向くと、後方の通路も神官騎士団に塞がれてしまっている。どうやらまんまと挟み撃ちにされてしまったようだ。
「痛い思いをしたくなければ、大人しく捕まることだな!」
シャルロット達を捕らえるべく、神官騎士団はじりじりと距離を詰めてくる。前後を神官騎士団に挟まれ、絶望的な状況に追い込まれたその時、神官騎士達の隙間から一人の男が飛び出してくる。
「待ってくれ、あの子に乱暴をしないでくれ! 私の息子なんだ、少し話をさせてくれ!!」
「ふぇっ、父さん!?」
なんと飛び出してきたのはシャルルの父親だったのだ。あまりにも予想外の出来事に、シャルルは思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
「そういえば父さんは、教主様のおもてなしをしているのだったな……すっかり忘れていた……」
シャルルの父親はアルテミア正教会の神父である。教主アンナマリアをもてなすため大聖堂へ招集されていたところ、偶然にも息子が乗り込んできたというわけだ。父親からしてみれば心臓が止まるほど驚いたことだろう。
「シャルル! これは一体なんの騒ぎだ!」
「友達を……教主様に友達を誘拐されたんだ!」
「友達を誘拐? まさか……先ほど連れてこられた少女は、シャルルの友達だったのか!?」
「そうだ! 自分は友達を連れ戻しにきたのだ! 頼む父さん、道を空けてくれ!」
「くっ……ダメだ! 侵入者であるお前を、教主様にあわせるわけにはいかん!」
じっと睨みあう父と息子。
父親にはアルテミア正教会の神父という立場もある。シャルルの事情を知ったからといって、簡単に道を譲ることは出来ない。
「お前の気持ちは分かる……しかし教主様は絶対的な存在だ! どんな理由があろうとも、教主様に逆らうようなことは許されない!」
「くっ……しかし!」
「お前が罪に問われないよう、私からも頼んでみる。まだ間にあう……冷静になってくれ……」
「父さん……」
「シャルルよ……お前のことを大切に思っているんだ……。分かってくれないか……?」
そう言うと父親は、シャルルに向かってそっと手を差し伸べる。その表情や態度からは、息子を心配する気持ちが溢れている。
手を差し伸べられたシャルルは、無言で頷くと父親の元へと歩いていく。
「そんなっ、シャルル様!?」
「行ってはダメですわ! ナターシャのことはどうしますの!」
オリヴィアとシャルロットの言葉も虚しく、シャルルは父親の手を取る。
そして──。
輝く白亜の回廊を三つの人影が走っていた。ナターシャの救出へと向かう、オリヴィア、シャルロット、シャルルの三人である。
「教主様は礼拝堂におられるはずだ! このまま真っ直ぐ進むんだ!」
シャルルを先頭に回廊を駆け抜ける三人。しかし勢いよく角を曲がったところで、ピタリと足を止めてしまう。
「待っていたぞ、侵入者達よ!」
白い鎧を着た騎士達に通路を塞がれていたのである。ズラリと並ぶ屈強な騎士達は、ビリビリと鋭い威圧感を放っている。
「しまった! 神官騎士団だ!」
「「神官騎士団!?」」
「神官騎士団はアルテミア正教会の誇る精鋭の騎士団だ! 自分達でどうにか出来る相手ではない!」
「大変です! 挟まれてしまいました!」
オリヴィアの声に慌てて振り向くと、後方の通路も神官騎士団に塞がれてしまっている。どうやらまんまと挟み撃ちにされてしまったようだ。
「痛い思いをしたくなければ、大人しく捕まることだな!」
シャルロット達を捕らえるべく、神官騎士団はじりじりと距離を詰めてくる。前後を神官騎士団に挟まれ、絶望的な状況に追い込まれたその時、神官騎士達の隙間から一人の男が飛び出してくる。
「待ってくれ、あの子に乱暴をしないでくれ! 私の息子なんだ、少し話をさせてくれ!!」
「ふぇっ、父さん!?」
なんと飛び出してきたのはシャルルの父親だったのだ。あまりにも予想外の出来事に、シャルルは思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
「そういえば父さんは、教主様のおもてなしをしているのだったな……すっかり忘れていた……」
シャルルの父親はアルテミア正教会の神父である。教主アンナマリアをもてなすため大聖堂へ招集されていたところ、偶然にも息子が乗り込んできたというわけだ。父親からしてみれば心臓が止まるほど驚いたことだろう。
「シャルル! これは一体なんの騒ぎだ!」
「友達を……教主様に友達を誘拐されたんだ!」
「友達を誘拐? まさか……先ほど連れてこられた少女は、シャルルの友達だったのか!?」
「そうだ! 自分は友達を連れ戻しにきたのだ! 頼む父さん、道を空けてくれ!」
「くっ……ダメだ! 侵入者であるお前を、教主様にあわせるわけにはいかん!」
じっと睨みあう父と息子。
父親にはアルテミア正教会の神父という立場もある。シャルルの事情を知ったからといって、簡単に道を譲ることは出来ない。
「お前の気持ちは分かる……しかし教主様は絶対的な存在だ! どんな理由があろうとも、教主様に逆らうようなことは許されない!」
「くっ……しかし!」
「お前が罪に問われないよう、私からも頼んでみる。まだ間にあう……冷静になってくれ……」
「父さん……」
「シャルルよ……お前のことを大切に思っているんだ……。分かってくれないか……?」
そう言うと父親は、シャルルに向かってそっと手を差し伸べる。その表情や態度からは、息子を心配する気持ちが溢れている。
手を差し伸べられたシャルルは、無言で頷くと父親の元へと歩いていく。
「そんなっ、シャルル様!?」
「行ってはダメですわ! ナターシャのことはどうしますの!」
オリヴィアとシャルロットの言葉も虚しく、シャルルは父親の手を取る。
そして──。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました
あーもんど
恋愛
ずっと腹違いの妹の方を優遇されて、生きてきた公爵令嬢セシリア。
正直不満はあるものの、もうすぐ結婚して家を出るということもあり、耐えていた。
でも、ある日……
「お前の人生を妹に譲ってくれないか?」
と、両親に言われて?
当然セシリアは反発するが、無理やり体を押さえつけられ────妹と中身を入れ替えられてしまった!
この仕打ちには、さすがのセシリアも激怒!
でも、自分の話を信じてくれる者は居らず……何も出来ない。
そして、とうとう……自分に成り代わった妹が結婚準備のため、婚約者の家へ行ってしまった。
────嗚呼、もう終わりだ……。
セシリアは全てに絶望し、希望を失うものの……数日後、婚約者のヴィンセントがこっそり屋敷を訪ねてきて?
「あぁ、やっぱり────君がセシリアなんだね。会いたかったよ」
一瞬で正体を見抜いたヴィンセントに、セシリアは動揺。
でも、凄く嬉しかった。
その後、セシリアは全ての事情を説明し、状況打破の協力を要請。
もちろん、ヴィンセントは快諾。
「僕の全ては君のためにあるんだから、遠慮せず使ってよ」
セシリアのことを誰よりも愛しているヴィンセントは、彼女のため舞台を整える。
────セシリアをこんな目に遭わせた者達は地獄へ落とす、と胸に決めて。
これは姉妹の入れ替わりから始まる、報復と破滅の物語。
■小説家になろう様にて、先行公開中■
■2024/01/30 タイトル変更しました■
→旧タイトル:偽物に騙されないでください。本物は私です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる