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魔法学大全
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「これは! ウルリカ様の書かれた本ですかな!?」
本の著者名を見てギョッと目を丸くするノイマン学長。名前を呼ばれたウルリカ様もキョトンと目を丸くしている。
「うむ? それは魔界の本なのじゃ、どうしてここにあるのじゃ?」
「教室塔五階の“研究書大量教室”で見つけて、そのまま持ってきてしまいました。ところでこの本はウルリカさんの書いた本なのですか?」
「うむ! その本は妾とエミリオで一緒に書いた本なのじゃ!」
本の表紙にはウルリカ様の名前と並んで “エミリオ・アステルクロス”の名前も書いてある。
「エミリオ? それは一体どなたですの?」
「エミリオは妾の配下で、魔法の大天才なのじゃ! 魔界では大公も務めておるのじゃぞ! その本に書いてある内容は、ほとんどエミリオの研究した内容なのじゃ!」
自分の配下をとても自慢に思っているのだろう、エミリオのことを紹介するウルリカ様は凄く誇らしそうだ。
そうして騒がしくしていると、背後から静かに声をかけられる。
「あなた達……なにを騒いでいるの……?」
騒ぎを聞きつけたクリスティーナが様子を見にやって来たのだ。集まっている下級クラスをジロジロと観察して、ヘンリーの持っている本をスッと指差す。
「その本はなに……?」
「これは魔法学大全という魔界の本です。魔法を使えない人に魔法を覚えさせる方法や、魔法の階梯をあげさせる方法が書かれています」
「この本に書かれている方法で、シャルルは魔法を使えるようになったらしいですわ」
「魔界の本……? 怪しい……どんな方法……?」
「簡単に言うと、生物の魔法媒体化ですね!」
「生物の……魔法媒体化……?」
じっとりと疑いの視線を向けるクリスティーナ。
一方のヘンリーは意気揚々と魔法学大全の説明を続けている。書物や研究好きのヘンリーにとって、魔法学大全の内容はたまらなく面白いものなのだ。
「魔導力と魔法力を生物に流し込み、生物を介して魔法を発動する方法です! この本では“銀星術式”という名称で書かれてありますね!」
「エミリオは“銀星”の二つ名を持っておるからの、その名をとって銀星術式と名づけたのじゃ!」
「魔法の使えない人に魔法発動の感覚を直接覚えさせたり、あるいは上位階梯の魔法を覚えさせたり出来ます。魔法教育において銀星術式は、非常に有効な方法であると書かれていますね!」
魔法の苦手なナターシャやシャルルは、話についてこれず頭をクルクルと回してしまっている。しかしウルリカ様とヘンリーの二人は、お構いなしに魔法学大全の説明を続ける。
「魔界では銀星術式を使って、親から子供に魔法の使い方を覚えさせたりするのじゃ! 銀星術式は誰でも使える、簡単で効率のよい魔法教育の方法なのじゃ!」
「本当に素晴らしい方法ですね! 銀星術式で魔法を教えてもらえれば、あっという間に魔法の階梯をあげることも出来ますね!」
「ただし銀星術式で覚えた魔法は、放っておくとすぐに忘れてしまうのじゃ」
「覚えた感覚を忘れてしまわないよう、反復練習で身につけなくてはならないということですね! というわけでシャルルは、これから毎日特訓ですね!」
「お……おぅ……! とにかく魔法を使いまくればいいんだな!」
「そういうことです、頑張ってくださいね!」
難しい説明にクルクルと頭を回しながらも、シャルルはグッと拳を握って返事をする。
そんな中ノイマン学長は、なにやら難しい表情を浮かべている。
「これは……この本に書かれている内容は、魔法研究の歴史を覆すものですな……」
「ふむ? そうなのかの?」
「生物を魔法媒体とする方法は、魔法の可能性を広げる画期的な方法として注目されてきたのですな。しかし近年の研究で、生物の魔法媒体化は不可能だと結論づけられたのですな。それを実現したとなると、大発見どころの騒ぎではないのですな」
「そうね……その本に書かれている内容が本物ならね……」
口を開いたクリスティーナは、不信感でいっぱいの視線を魔法学大全へと向ける。
「生物の魔法媒体化は、私と仲間達で研究していたのよ……大陸中の魔法の天才を集めて、ありとあらゆる方法を試した……古今東西の理論を徹底的に検証した……そして不可能だと結論づけたのよ……」
「でもお姉様? この本にはしっかりと方法まで書いてありますわよ?」
「そうね……つまり……」
そう呟くとクリスティーナは、フイッと顔を背けてしまう。
「その本に書かれている内容は……信用出来ない……」
魔法学大全に書かれている内容は、クリスティーナと仲間達の研究結果とは真逆のものである。そのことを受け入れられずに、クリスティーナはその場から去ろうとしてしまう。その時──。
「「「ちょっと待った!!」」」
クリスティーナを呼び止める三つの声。呼び止められたクリスティーナは、不機嫌そうにゆっくりと振り向く。
「なに……?」
不穏な空気の流れる中、特別授業はまだまだ続く。
本の著者名を見てギョッと目を丸くするノイマン学長。名前を呼ばれたウルリカ様もキョトンと目を丸くしている。
「うむ? それは魔界の本なのじゃ、どうしてここにあるのじゃ?」
「教室塔五階の“研究書大量教室”で見つけて、そのまま持ってきてしまいました。ところでこの本はウルリカさんの書いた本なのですか?」
「うむ! その本は妾とエミリオで一緒に書いた本なのじゃ!」
本の表紙にはウルリカ様の名前と並んで “エミリオ・アステルクロス”の名前も書いてある。
「エミリオ? それは一体どなたですの?」
「エミリオは妾の配下で、魔法の大天才なのじゃ! 魔界では大公も務めておるのじゃぞ! その本に書いてある内容は、ほとんどエミリオの研究した内容なのじゃ!」
自分の配下をとても自慢に思っているのだろう、エミリオのことを紹介するウルリカ様は凄く誇らしそうだ。
そうして騒がしくしていると、背後から静かに声をかけられる。
「あなた達……なにを騒いでいるの……?」
騒ぎを聞きつけたクリスティーナが様子を見にやって来たのだ。集まっている下級クラスをジロジロと観察して、ヘンリーの持っている本をスッと指差す。
「その本はなに……?」
「これは魔法学大全という魔界の本です。魔法を使えない人に魔法を覚えさせる方法や、魔法の階梯をあげさせる方法が書かれています」
「この本に書かれている方法で、シャルルは魔法を使えるようになったらしいですわ」
「魔界の本……? 怪しい……どんな方法……?」
「簡単に言うと、生物の魔法媒体化ですね!」
「生物の……魔法媒体化……?」
じっとりと疑いの視線を向けるクリスティーナ。
一方のヘンリーは意気揚々と魔法学大全の説明を続けている。書物や研究好きのヘンリーにとって、魔法学大全の内容はたまらなく面白いものなのだ。
「魔導力と魔法力を生物に流し込み、生物を介して魔法を発動する方法です! この本では“銀星術式”という名称で書かれてありますね!」
「エミリオは“銀星”の二つ名を持っておるからの、その名をとって銀星術式と名づけたのじゃ!」
「魔法の使えない人に魔法発動の感覚を直接覚えさせたり、あるいは上位階梯の魔法を覚えさせたり出来ます。魔法教育において銀星術式は、非常に有効な方法であると書かれていますね!」
魔法の苦手なナターシャやシャルルは、話についてこれず頭をクルクルと回してしまっている。しかしウルリカ様とヘンリーの二人は、お構いなしに魔法学大全の説明を続ける。
「魔界では銀星術式を使って、親から子供に魔法の使い方を覚えさせたりするのじゃ! 銀星術式は誰でも使える、簡単で効率のよい魔法教育の方法なのじゃ!」
「本当に素晴らしい方法ですね! 銀星術式で魔法を教えてもらえれば、あっという間に魔法の階梯をあげることも出来ますね!」
「ただし銀星術式で覚えた魔法は、放っておくとすぐに忘れてしまうのじゃ」
「覚えた感覚を忘れてしまわないよう、反復練習で身につけなくてはならないということですね! というわけでシャルルは、これから毎日特訓ですね!」
「お……おぅ……! とにかく魔法を使いまくればいいんだな!」
「そういうことです、頑張ってくださいね!」
難しい説明にクルクルと頭を回しながらも、シャルルはグッと拳を握って返事をする。
そんな中ノイマン学長は、なにやら難しい表情を浮かべている。
「これは……この本に書かれている内容は、魔法研究の歴史を覆すものですな……」
「ふむ? そうなのかの?」
「生物を魔法媒体とする方法は、魔法の可能性を広げる画期的な方法として注目されてきたのですな。しかし近年の研究で、生物の魔法媒体化は不可能だと結論づけられたのですな。それを実現したとなると、大発見どころの騒ぎではないのですな」
「そうね……その本に書かれている内容が本物ならね……」
口を開いたクリスティーナは、不信感でいっぱいの視線を魔法学大全へと向ける。
「生物の魔法媒体化は、私と仲間達で研究していたのよ……大陸中の魔法の天才を集めて、ありとあらゆる方法を試した……古今東西の理論を徹底的に検証した……そして不可能だと結論づけたのよ……」
「でもお姉様? この本にはしっかりと方法まで書いてありますわよ?」
「そうね……つまり……」
そう呟くとクリスティーナは、フイッと顔を背けてしまう。
「その本に書かれている内容は……信用出来ない……」
魔法学大全に書かれている内容は、クリスティーナと仲間達の研究結果とは真逆のものである。そのことを受け入れられずに、クリスティーナはその場から去ろうとしてしまう。その時──。
「「「ちょっと待った!!」」」
クリスティーナを呼び止める三つの声。呼び止められたクリスティーナは、不機嫌そうにゆっくりと振り向く。
「なに……?」
不穏な空気の流れる中、特別授業はまだまだ続く。
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