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出陣!

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 一方こちらは、教室塔の三階“優雅なるお茶会教室”。
 集まっているのは、シャルロット、ナターシャ、シャルル、ヘンリー、そしてウルリカ様だ。
 五人並んで、大きなガラス窓から下を覗いている。

「うーむ……人間側はまったく連携をとれておらんのう」

「むしろ邪魔しあっているように見えますわ……」

 ガラス窓から見下ろす先では、人間と魔物の激しい戦いが繰り広げられている。
 騎士団、学園、そして魔物と入り混じって、戦場は混沌とした状態だ。

「騎士団も学園も、負けるつもりで戦っているのでしょうか……?」

「はぁ……まるで素人の戦いを見ているようだ!」

 ナターシャとシャルルも呆れた声を漏らしている。
 そんな中、ヘンリーは冷静に状況を分析する。

「学園勢力は魔法を主体とした戦術のようですね。しかし魔物と騎士団の距離が近すぎて、うまく魔法を使えていないようです。騎士団勢力は剣での近接戦闘主体ですね。しかし学園の教師や生徒を守ろうとするあまり、陣形はバラバラです」

「まったく、指揮官はなにをしていますのよ!」

「学園側の指揮官はラヴレス副学長のようですね。しかし騎士団と言い争いばかりしていて、指揮官の機能を果たしていませんね」

「だったら、騎士団側はどうなっていますの!」

「ふむ、騎士団を仕切っておるのは、ゴーヴァンという騎士のようじゃな。今はサラマンダーにかかりっきりになっておる」

 ウルリカ様の指さす先には、炎の中を駆け回るゴーヴァンの姿がある。
 巨大なサラマンダーを相手に、たった一人で見事な立ち回りだ。

「あの魔物は討伐難易度Bです、本来であれば部隊を編成して臨むべき相手です。それを一人で相手にしているのですから、流石に指揮官としての務めは果たせないでしょうね」

「つまり、どちらも指揮官不在で、好き勝手に戦っているということですの? 信じられませんわ!!」

 芳しくない状況に、シャルロットは憤りを隠せない。

「しかし不思議ですね。本来の王国騎士団であれば、小隊を組んだうえで各部隊に指揮官を配置するはずなのですが……」

 ヘンリーの疑問に、シャルロットはうなだれてしまう。

「それは……きっとお姉様の仕業ですわ……編成にも口出しして、大きな部隊に“脳筋”な騎士ばかりを詰め込んだのだと思いますわ……」

「“脳筋”ですか……」

「“脳筋”ですの……」

 暗い雰囲気の流れる中、一人のんきにクッキーを食べるウルリカ様。

「ポリポリ……さてロティよ、参戦するならば早い方がよいぞ?」

「ええ、ワタクシも我慢の限界ですもの。ベッポが戻ってきたら戦場に向かいますわ。でもウルリカは戦いに参加しなくていいですわよ」

「むぐむぐ……そうかの?」

「これはワタクシ達人間と魔物の戦いですわ。ですからワタクシ達だけで、やれるところまでは頑張りますの。ウルリカはワタクシ達を見守っていてくださいですわ!」

「むぐ! 分ふぁっふぁのじゃ!」

 口いっぱいにクッキーを頬張って、大きく頷くウルリカ様。
 とても頼もしく、そしてとても可愛らしい。

 その時、チーンと音を立てて昇降機の扉が開く。

「シャルロット様、お待たせしました!」

 汗だくで飛び込んでくるベッポ、背中には大きな荷物を背負っている。

「はぁ……はぁ……準備してきました!」

「ありがとうベッポ。さあ、行きますわよ!」

 意気込むシャルロットだったが、ピタリと足を止めてしまう。
 不安そうな表情で、じっと床を見つめている。
 その顔を、ニュッと覗き込むナターシャ

「シャルロット様、心配しないでください! 私達は負けませんから!!」

 ヨグソードを引き抜いて、ニッコリと笑って見せる。

「ナターシャ嬢の言う通り! 自分達を信じて、さあ命令を!」

 金属の鎧を着こんで、ドンッと胸を叩くシャルル。

「作戦は完璧です、勝利はボク達にあり、ですよ」

 本を杖に持ち替えて、メガネをクイッとあげるヘンリー。

「準備は万端です、いきましょうシャルロット様……ふぅ……」

 ヨロヨロと立ちあがり、パンっと荷物を叩くベッポ。

「妾もおるのじゃ! 不安など吹き飛ばして、思う存分やってやるのじゃ!! ポリポリ……」

 相変わらずクッキーを手放さない、なんとものんきなウルリカ様。
 戦いとは無縁な可愛らしい様子に、小さな笑いが起こる。

「フフッ……ウルリカもみんなも、本当にありがとうですわ」

 頼れる仲間に囲まれて、シャルロットは前を向く。
 強い光を目に宿し、大きな声で号令をかける。

「それでは、あの阿呆共を叱り飛ばしに行きますわよ!」

 さあいよいよ、下級クラスの出陣である。
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