上 下
23 / 310

晴れの日の入学式

しおりを挟む
 晴れ渡る空、満開の花。
 ついにやってきた入学式の日。
 ロームルス学園は、多くの人で賑わっていた。

 この日入学する新入生、およびその家族達である。

「見てくれよ、この白い制服を! 上級クラスの証なんだぜ!!」

「私も上級クラスなのよ! 似合うかしら?」

「いいなあ……ボクは一般クラスだから、黒の制服だよ……」

「黒の制服でよかったじゃない。下級クラスだったら、紺色の制服になっていたのよ? 紺色なんてみっともないわ」

 新入生の着ている制服には、色に違いがある。

 上級クラスに合格した者は白のブレザー。
 一般クラスに合格した者は黒のブレザーだ。
 そして、ウルリカ様の合格した下級クラスは、紺色のブレザーである。

 入学式を前に、新入生もその家族も大盛りあがりだ。
 そんな中、特に盛りあがっている新入生がいる。

「入学式じゃ~! 楽しみなのじゃ~!!」

 大興奮のウルリカ様である。
 紺色の制服を着て、パタパタ走って大騒ぎだ。

「ウルリカ様~、待ってくださ~い」

「待ちきれないのじゃ~!」

 はしゃぐウルリカ様と、慌てて追いかけるオリヴィア。
 シャルロットとナターシャは、にこにこ笑顔で眺めている。
 二人はウルリカ様とお揃いの、紺色の制服だ。

 楽しそうにする四人。しかし、周囲からの視線は冷たい。

「見て、下級クラスだわ……」

「シャルロット王女様……下級クラスに入ったというのは本当だったのか……」

「なんでも精神を病んでしまったらしい……狂心王女、なんて呼ばれているらしいぜ」

「国王陛下からも見捨てられたって噂だ……お可哀そうに……」

 次々と聞こえてくる、心無い言葉。
 不穏な空気が流れる中、もの凄い勢いで走ってくる者がいる。

「ウルリカ様! お待ちしておりましたぁ!!」

 ノイマン学長である。
 飛び上がり、空中で土下座の体勢をとると、そのままウルリカ様の前へと滑り込む。
 一流の騎士や戦士でも難しいであろう、絶妙な身のこなしだ。

 それへ護衛を引き連れて、ゼノン王とヴィクトリア女王も合流する。

「ウルリカ! シャルロット!」

「みんな~、待たせたわね~」

 突然集まった豪華すぎる顔ぶれに、新入生達は開いた口が塞がらない。

「ほぉ? なかなか似合っているではないか」

「みんな可愛いわ! ステキね!!」

 ヴィクトリア女王は、入学する三人と、ついでにオリヴィアをギュッと抱きしめていく。

「わざわざ来てくださるなんて、嬉しいですわ!」

「当然だ、娘の入学式だからな」

「ふふっ……ゼノンったら、昨夜から必死で執務を終わらせてたのよ。絶対に入学式へ行くって言ってね」

「おいっ、余計なことを言うな!」

 仲睦まじい親子の光景。
 周りの新入生から、羨望と嫉妬の混じった視線が注がれる。

「国王と女王に、学長まで一緒にいる……どういうことだ?」

「王家と学園は、仲が悪いのでは……?」

「シャルロット王女は国王から見捨てられたんじゃないのか? 真逆じゃないか……」

「下級クラスのくせに……どうなってるんだよ……」

 注目を集めながら、一同は入学式の行われる講堂へと入っていく。
 その途中、ウルリカ様はふと足を止める。

「……うむ?」

「ウルリカ? どうかしたのかしら?」

「ふむ……先に行っておれ、少し用事が出来たのじゃ」

 そう言って、校庭の真ん中へと歩いていくウルリカ様。

「お~い!」

 空を見上げながら、大きく手を振る。

「妾は学校にいってくるのじゃ~!!」

 晴れ渡る空に向かって、大きな声で叫ぶ。
 そして、パチリとウィンクをして、講堂へと入っていくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

処理中です...