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シャルロット王女の策略

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 パラテノ森林。
 ロームルス学園に隣接する森林地域である。

 広い森を舞台に、入学試験の最後となる実地試験が行われていた。

「はぁ……ずいぶんと歩かせるわね……」

 草木をかき分け、森の奥に向かって進む集団がある。
 シャルロット王女とそのチームだ。
 先頭を歩くのは、シャルロット王女の取り巻きの一人、少年ベッポである。

「ベッポ! 目的地はまだなのかしら?」

「申し訳ございません。念には念を入れて、森の奥の方で準備をしておりますので」

 長いこと歩かされて、イライラがつのるシャルロット王女。
 ベッポはペコペコと頭を下げながら、チームを案内し続ける。

 しばらく歩いたところで、小さな広場へと到着する。
 広場には一人の男が待っていた。

「ベッポお坊ちゃん、待ってましたぜ」

「悪かったな、少し遅れた」

「いえいえ、いつもお世話になってますのでお気になさらず」

 親し気に会話をするベッポと男。
 二人の元へシャルロット王女が近づいていく。

「ベッポ、その男は?」

「商人のザンガです。父が世話になっている、いわゆる裏の業者ってやつです」

「ベッポお坊ちゃんのお父様には、ずいぶんとご贔屓にしてもらってます。奴隷の趣味が大変よろしい方でして……」

「ザンガ! 余計なことは言わなくていい!!」

「へへへっ……とにかく人間の奴隷でも魔物でも、生き物ならなんでも取り扱ってますぜ」

 手をこすりながら、いやらしく笑うザンガ。
 いかにもうさん臭い雰囲気だ。

「確かベッポの家は商会を営んでいたわよね? ずいぶん悪い商売をしているみたいじゃない、お父様に言いつけてあげようかしら?」

「勘弁してくださいよ! 姫様のためにこうして手配したんですから」

「フフフッ、冗談よ」

 シャルロット王女にからかわれて、ベッポは困り顔だ。
 そこへザンガが話に割って入る。

「お二人ともお話はその辺りにして、商品をお渡ししますぜ」

 ザンガの指差す先には、布のかかった四角い物体が置いてある。
 大人の男でも見上げるほどの大きさだ。

「中を見せてもらえるかしら?」

「もちろんです、どうぞ」

 ザンガの手によって、掛けてあった布が取り払われる。
 中から現れたのは大きな金属の檻だ。そして──。

「グルルルゥ……」

 辺り一帯に獣臭が充満する。

「ひぃ……大きい……」

「これが……討伐難易度Cの魔物……」

 檻の中でうごめく、赤いうろこに覆われた巨大な体。
 日の光に照らされて、ギラリと光る鋭い爪と牙。

「ドラゴン……見事だわ! 生き物ならなんでも用意出来るというのは本当のようね」

「レッサードラゴンです、気に入っていただけたようで光栄ですぜ」

 かしこまって一礼をするザンガ。

「人間の指示に従うよう魔法で操ってます。王女様の好きに動かせますぜ」

「ご苦労様、あとはあの生意気な田舎者を襲わせれば──」

「あっ、あの……」

 上機嫌なシャルロット王女だったが、背後から声をかけられ不機嫌な表情に変わる。

「……なにかしら?」

「やっぱり止めた方がいいのではないでしょうか……危険すぎます」

 声をかけたのは、ウルリカ様と剣術試験を戦ったナターシャだ。
 振り返ったシャルロット王女は、キッとナターシャを睨みつける。

「ナターシャは話を聞いていなかったのかしら? 魔法で操っているから平気なのよ」

「ですが魔物の取引は法律で禁止されているはずです。こんな事がバレたらタダではすみません……」

「はぁ……ナターシャ、あなたワタクシに指図するつもりなのかしら?」

「い、いえ……」

「ワタクシは第三王女なのよ? 分かっているの?」

「す、すみませんでした……」

 威圧されたナターシャは、小さく縮こまってしまう。
 フンッと鼻を鳴らし、レッサードラゴンの方を向くシャルロット王女。

「あの田舎者、タダではすまさないわ……頼んだわよ、レッサードラゴン」

 怯むことなく檻へと近づいていき、持っていた杖でコツンと檻を叩く。
 次の瞬間──。

「グルオオォォッ!!」

「なっ!?」

 突如として暴れ出すレッサードラゴン。
 金属の檻を軽々と捻じ曲げ、ゆっくりと這い出してくる。

「ひいぃっ!?」

「レッサードラゴンが出てきたぞ!」

「なんてこった、大変だ!」

 慌てて逃げ出すチームのメンバー達。
 ベッポとザンガも、一目散に森の奥へと逃げていく。

「ちょっと、あなた達どこへ行くの!? 戻ってきなさい! コイツをなんとかしなさい!!」

「グオオォォッ!!」

「──きゃあっ!?」

 取り残されたシャルロット王女。
 解き放たれたレッサードラゴンが、シャルロット王女へと襲い掛かる。
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