12 / 310
シャルロット王女の策略
しおりを挟む
パラテノ森林。
ロームルス学園に隣接する森林地域である。
広い森を舞台に、入学試験の最後となる実地試験が行われていた。
「はぁ……ずいぶんと歩かせるわね……」
草木をかき分け、森の奥に向かって進む集団がある。
シャルロット王女とそのチームだ。
先頭を歩くのは、シャルロット王女の取り巻きの一人、少年ベッポである。
「ベッポ! 目的地はまだなのかしら?」
「申し訳ございません。念には念を入れて、森の奥の方で準備をしておりますので」
長いこと歩かされて、イライラがつのるシャルロット王女。
ベッポはペコペコと頭を下げながら、チームを案内し続ける。
しばらく歩いたところで、小さな広場へと到着する。
広場には一人の男が待っていた。
「ベッポお坊ちゃん、待ってましたぜ」
「悪かったな、少し遅れた」
「いえいえ、いつもお世話になってますのでお気になさらず」
親し気に会話をするベッポと男。
二人の元へシャルロット王女が近づいていく。
「ベッポ、その男は?」
「商人のザンガです。父が世話になっている、いわゆる裏の業者ってやつです」
「ベッポお坊ちゃんのお父様には、ずいぶんとご贔屓にしてもらってます。奴隷の趣味が大変よろしい方でして……」
「ザンガ! 余計なことは言わなくていい!!」
「へへへっ……とにかく人間の奴隷でも魔物でも、生き物ならなんでも取り扱ってますぜ」
手をこすりながら、いやらしく笑うザンガ。
いかにもうさん臭い雰囲気だ。
「確かベッポの家は商会を営んでいたわよね? ずいぶん悪い商売をしているみたいじゃない、お父様に言いつけてあげようかしら?」
「勘弁してくださいよ! 姫様のためにこうして手配したんですから」
「フフフッ、冗談よ」
シャルロット王女にからかわれて、ベッポは困り顔だ。
そこへザンガが話に割って入る。
「お二人ともお話はその辺りにして、商品をお渡ししますぜ」
ザンガの指差す先には、布のかかった四角い物体が置いてある。
大人の男でも見上げるほどの大きさだ。
「中を見せてもらえるかしら?」
「もちろんです、どうぞ」
ザンガの手によって、掛けてあった布が取り払われる。
中から現れたのは大きな金属の檻だ。そして──。
「グルルルゥ……」
辺り一帯に獣臭が充満する。
「ひぃ……大きい……」
「これが……討伐難易度Cの魔物……」
檻の中でうごめく、赤いうろこに覆われた巨大な体。
日の光に照らされて、ギラリと光る鋭い爪と牙。
「ドラゴン……見事だわ! 生き物ならなんでも用意出来るというのは本当のようね」
「レッサードラゴンです、気に入っていただけたようで光栄ですぜ」
かしこまって一礼をするザンガ。
「人間の指示に従うよう魔法で操ってます。王女様の好きに動かせますぜ」
「ご苦労様、あとはあの生意気な田舎者を襲わせれば──」
「あっ、あの……」
上機嫌なシャルロット王女だったが、背後から声をかけられ不機嫌な表情に変わる。
「……なにかしら?」
「やっぱり止めた方がいいのではないでしょうか……危険すぎます」
声をかけたのは、ウルリカ様と剣術試験を戦ったナターシャだ。
振り返ったシャルロット王女は、キッとナターシャを睨みつける。
「ナターシャは話を聞いていなかったのかしら? 魔法で操っているから平気なのよ」
「ですが魔物の取引は法律で禁止されているはずです。こんな事がバレたらタダではすみません……」
「はぁ……ナターシャ、あなたワタクシに指図するつもりなのかしら?」
「い、いえ……」
「ワタクシは第三王女なのよ? 分かっているの?」
「す、すみませんでした……」
威圧されたナターシャは、小さく縮こまってしまう。
フンッと鼻を鳴らし、レッサードラゴンの方を向くシャルロット王女。
「あの田舎者、タダではすまさないわ……頼んだわよ、レッサードラゴン」
怯むことなく檻へと近づいていき、持っていた杖でコツンと檻を叩く。
次の瞬間──。
「グルオオォォッ!!」
「なっ!?」
突如として暴れ出すレッサードラゴン。
金属の檻を軽々と捻じ曲げ、ゆっくりと這い出してくる。
「ひいぃっ!?」
「レッサードラゴンが出てきたぞ!」
「なんてこった、大変だ!」
慌てて逃げ出すチームのメンバー達。
ベッポとザンガも、一目散に森の奥へと逃げていく。
「ちょっと、あなた達どこへ行くの!? 戻ってきなさい! コイツをなんとかしなさい!!」
「グオオォォッ!!」
「──きゃあっ!?」
取り残されたシャルロット王女。
解き放たれたレッサードラゴンが、シャルロット王女へと襲い掛かる。
ロームルス学園に隣接する森林地域である。
広い森を舞台に、入学試験の最後となる実地試験が行われていた。
「はぁ……ずいぶんと歩かせるわね……」
草木をかき分け、森の奥に向かって進む集団がある。
シャルロット王女とそのチームだ。
先頭を歩くのは、シャルロット王女の取り巻きの一人、少年ベッポである。
「ベッポ! 目的地はまだなのかしら?」
「申し訳ございません。念には念を入れて、森の奥の方で準備をしておりますので」
長いこと歩かされて、イライラがつのるシャルロット王女。
ベッポはペコペコと頭を下げながら、チームを案内し続ける。
しばらく歩いたところで、小さな広場へと到着する。
広場には一人の男が待っていた。
「ベッポお坊ちゃん、待ってましたぜ」
「悪かったな、少し遅れた」
「いえいえ、いつもお世話になってますのでお気になさらず」
親し気に会話をするベッポと男。
二人の元へシャルロット王女が近づいていく。
「ベッポ、その男は?」
「商人のザンガです。父が世話になっている、いわゆる裏の業者ってやつです」
「ベッポお坊ちゃんのお父様には、ずいぶんとご贔屓にしてもらってます。奴隷の趣味が大変よろしい方でして……」
「ザンガ! 余計なことは言わなくていい!!」
「へへへっ……とにかく人間の奴隷でも魔物でも、生き物ならなんでも取り扱ってますぜ」
手をこすりながら、いやらしく笑うザンガ。
いかにもうさん臭い雰囲気だ。
「確かベッポの家は商会を営んでいたわよね? ずいぶん悪い商売をしているみたいじゃない、お父様に言いつけてあげようかしら?」
「勘弁してくださいよ! 姫様のためにこうして手配したんですから」
「フフフッ、冗談よ」
シャルロット王女にからかわれて、ベッポは困り顔だ。
そこへザンガが話に割って入る。
「お二人ともお話はその辺りにして、商品をお渡ししますぜ」
ザンガの指差す先には、布のかかった四角い物体が置いてある。
大人の男でも見上げるほどの大きさだ。
「中を見せてもらえるかしら?」
「もちろんです、どうぞ」
ザンガの手によって、掛けてあった布が取り払われる。
中から現れたのは大きな金属の檻だ。そして──。
「グルルルゥ……」
辺り一帯に獣臭が充満する。
「ひぃ……大きい……」
「これが……討伐難易度Cの魔物……」
檻の中でうごめく、赤いうろこに覆われた巨大な体。
日の光に照らされて、ギラリと光る鋭い爪と牙。
「ドラゴン……見事だわ! 生き物ならなんでも用意出来るというのは本当のようね」
「レッサードラゴンです、気に入っていただけたようで光栄ですぜ」
かしこまって一礼をするザンガ。
「人間の指示に従うよう魔法で操ってます。王女様の好きに動かせますぜ」
「ご苦労様、あとはあの生意気な田舎者を襲わせれば──」
「あっ、あの……」
上機嫌なシャルロット王女だったが、背後から声をかけられ不機嫌な表情に変わる。
「……なにかしら?」
「やっぱり止めた方がいいのではないでしょうか……危険すぎます」
声をかけたのは、ウルリカ様と剣術試験を戦ったナターシャだ。
振り返ったシャルロット王女は、キッとナターシャを睨みつける。
「ナターシャは話を聞いていなかったのかしら? 魔法で操っているから平気なのよ」
「ですが魔物の取引は法律で禁止されているはずです。こんな事がバレたらタダではすみません……」
「はぁ……ナターシャ、あなたワタクシに指図するつもりなのかしら?」
「い、いえ……」
「ワタクシは第三王女なのよ? 分かっているの?」
「す、すみませんでした……」
威圧されたナターシャは、小さく縮こまってしまう。
フンッと鼻を鳴らし、レッサードラゴンの方を向くシャルロット王女。
「あの田舎者、タダではすまさないわ……頼んだわよ、レッサードラゴン」
怯むことなく檻へと近づいていき、持っていた杖でコツンと檻を叩く。
次の瞬間──。
「グルオオォォッ!!」
「なっ!?」
突如として暴れ出すレッサードラゴン。
金属の檻を軽々と捻じ曲げ、ゆっくりと這い出してくる。
「ひいぃっ!?」
「レッサードラゴンが出てきたぞ!」
「なんてこった、大変だ!」
慌てて逃げ出すチームのメンバー達。
ベッポとザンガも、一目散に森の奥へと逃げていく。
「ちょっと、あなた達どこへ行くの!? 戻ってきなさい! コイツをなんとかしなさい!!」
「グオオォォッ!!」
「──きゃあっ!?」
取り残されたシャルロット王女。
解き放たれたレッサードラゴンが、シャルロット王女へと襲い掛かる。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
一族に捨てられたので、何とか頑張ってみる。
ユニー
ファンタジー
魔法至上主義の貴族選民思想を持っている一族から、魔法の素質が無いと言う理由だけで過酷な環境に名前ごと捨てられた俺はあの一族の事を感情的に憤怒する余裕もなく、生きていくだけで手一杯になった!知識チート&主人公SUGEEEE!です。
□長編になると思う多分□年齢は加算されるが、見た目は幼いまま成長しません。□暴力・残虐表現が多数発生する可能性が有るのでR15を付けました□シリアルなのかコメディなのか若干カオスです。□感想を頂くと嬉しいです。□小説家になろうに投稿しています。
http://ncode.syosetu.com/n8863cn/
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる