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7話 メイドのお仕事 その1

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 プリムラからメイドとしての適性問題なしという判定を受けたアンネは、その翌日から正式に公爵家の使用人という立場で働くことになった。同時に、プリムラ以外の仕事仲間の紹介もされた。執事や複数名のメイド、秘書など、それなりの人物が働いているようだ。

「よろしく、アンネ。僕たちも全て、ワケアリの面子さ。君の過去についての詮索などはしないし、ドルトムント家に売るような真似は決してしないと約束しよう。これからは、家族と思って接してくれ」

 紹介された者の一人、アレク公爵の秘書官を務めるマーベル・ディケイトが、皆を代表してアンネに話しかけた。婚約破棄をされ追放された身……王国の立場で言えば、生きる権利を剥奪されたに近い存在のアンネ。

 そんな自分に優しく接してくれるマーベルやプリムラ、そしてアレク公爵……マーベルの後ろに立っている者達も言葉こそ発してはいないが、笑顔でアンネに視線を合わせている。新たな家族が来たことを喜んでいるようだ。


「ありがとうございます。本当に信頼の於ける家族になれるよう、誠心誠意働かせていただきます」

 この場には居ないアレク公爵も見据えながら、アンネは深々と頭を下げた。彼女の新しい生活が幕を開けた瞬間であった……。



----------------------------


 それから数日の間、アンネはプリムラと一緒に仕事をこなしていくことが多かった。適性は問題なしでも、まだ慣れない作業も多い為、その都度プリムラが教えていく寸法だ。そんな中、清掃に訪れた書斎にて、アレク公爵と秘書官のマーベルが会話しているところに出くわした。

「公爵閣下、書類の提出のついでに日用品の買い出しは必要ありませんと、以前にも申し上げておりますが……」

「今回はまだ購入はしていない。しかし、通り道である以上は私が買い物を行うのが現実的だろう?」

「……それはそうかもしれませんが……」


 アンネは二人の会話を聞いて察した。特にシリアスな状況というわけではなさそうだ。アレク公爵が出かける用事のついでに日用雑貨などの買い出しも行うと言っているのか……。確かに、公爵の立場にある者がそれを行うのは違和感があるが。こういった施設を運営しているのであれば、そこまで違和感というわけでもない。

 アンネはアレク公爵の人となりを感じながら、二人に声を掛ける。

「あの……よろしければ、私が買い出しに向かいましょうか?」

「アンネ……? いや、しかしそれは……」

 アンネの存在に気付いたマーベルは苦い表情をしていた。いきなり新人の彼女に頼むのもどうかと考えたからだ。


「そういえばアンネはまだ買い出しは初めてであったか。ならば、私と同行してくれるか?」

「アレク公爵とですか? は、はい喜んで」


 アレク公爵はどのみち買い出しをする気満々のようだ。アンネは初めての買い出しという名目で、彼と一緒に出掛けることになったのである。彼女の内心は少し高揚していた。
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