上 下
27 / 30

27話 票固め その3

しおりを挟む
 票固めに走ることになったアレンとリオナの二人はそれぞれ支持層を拡大する為に、演説を行うことになった。腹違いの妹のシャルッテに演説の為の文書作製を依頼し、民の為の国家樹立をスローガンに掲げるアレンと、グレンに婚約破棄された事実を再び蒸し返すことになりながらも、アレンの為に貴族層の確保を目論むリオナ。

 アレンの演説は当然のことながら、リオナの演説も一部の貴族層を除いて順調に支持をされていく結果になった。二人からしても予想外に順調なスタートと言えるだろう。


「なかなか上手く行っているみたいだな」

「はい、そうですね。貴族の方々の反応は悪くないように思えます」


 シャルロッテの私室で落ち合っている二人。近くには当然のようにシャルロッテも居るが、お互いの演説による効果を実感しているところであった。

「選挙戦本番は1か月後になります。このスタートダッシュを本番直前まで維持したいところではありますね」


 アレン側についているシャルロッテもスタートダッシュの順調さを実感していた。それだけに、何かの拍子に人気が勢いが落ちないかという不安がよぎってしまう。


「スタートダッシュの勢いがグレン側にとって予想外か、想定の範囲内なのか……もしも想定外であれば、そろそろ何かを仕掛けて来ても不思議ではないな」

 最初の1週間の演説では、特に邪魔立ては入らなかった。このまま何事もなく進めば、アレンの勝利はほぼ間違いないと言える。グレン側としては、決して余裕を見せていられる状況でもないだけに、仕掛けて来るとすればそろそろではないか。

 アレンの脳裏にはそのような考えが巡っていた。


「考えられることだと思います。アレンお兄様の演説開始から1週間……そろそろ、グレン様もなにかを仕掛けてくるでしょう。同時に、わたくしという腹違いの子供がいることの公表も明日に迫っています」

「それがありましたね……」

 リオナは顔色を悪くしていた。ヨハン国王によるシャルロッテという隠し子の存在公表が明日に迫っているのだ。多かれ少なかれ、民衆の王族に対する信頼は揺らいでしまうだろう。グレンはもしかしたら、その機会を狙って何かを仕掛けてくるのかもしれない。


「とにかく、何があっても良いように万全の対応策を考えておかないとな」

「はい……」

 アレンの言葉に二人は頷いた。選挙戦本番前の演説は始まりを告げた。どのような結果が待っていようとも全力で突っ切る以外に道はない。リオナとしてもそれだけは、何よりも理解出来ていたのだ。
しおりを挟む

処理中です...