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11話 王と王妃 その1
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ラウコーン王国のシリンガ宮殿。次期国王最有力のアレン・ハンフリーやその弟のグレン・ハンフリーは基本的に、シリンガ宮殿を拠点に活動している。彼らの私室も宮殿内にあり、その他貴族用の客室なども設けられている。
しかしシリンガ宮殿は、国王とその妃の為にあると言えるだろう。つまり、将来的にはアレンとリオナの物になる確率が高いのだ。
玉座の間に座る国王ヨハン・ハンフリー。その隣に立っているのは、王妃であるリズリットだ。二人共まだ40代であり、他国と比較してトップとしての経験は浅い方だ。
「ヨハン……やはり、私のせいでしょうか」
「いやリズのせいではないさ。余が……いや、俺が自由にさせ過ぎたのだ」
背中まで伸びた金色の髪をなびかせたリズリット。40歳を超えているとはいえ、しわもほとんどなく、まだまだ美しさが保たれている。そんな彼女が悩んでいるのは、第二王子のグレンに関してだ。以前から、それなりに心配はしていたが……。
「やはり一度、このことについて話し合う必要があろう。ギュスターブの令嬢にも悪いことをしてしまったようだ」
「そうね。まったく、あの子は……」
リズリットは頭を抱えている。子供たちの中で、アレンは長男だからか上手く育ってくれた。しかし次男であるグレンは甘やかされた節があるのだ。ある意味ではたくましく育ってはいるのだが、それは王族という立場を無視した別方向での育ちになっている。
もしも彼が子爵程度の家系ならば、とっくに潰されていた可能性が高い。いままで自由に出来たのも、第二王子という非常に高い肩書きがあるからだ。
しかし、リオナ・ギュスターブと婚約破棄をし、さらにユリア・サンマイトと付き合うふしだらな行動に出たのだ。リオナに関してはアレンという救いが生まれたが、王族の行いとしてあまりに無謀だ。
ギュスターブは伯爵という地位ではあるが、有力貴族の一つになっているのだ。他の貴族と組んで反旗でも翻されたらたまったものではない。
下手をすれば、ハンフリー一族に大打撃を起こしかねない事態であった。実際はリオナもビシャスも温厚な性格の為、そのような事態にはなっていないが、可能性としては十分に考えられた。
「数日前にグレンの奴はギュスターブ邸を訪れている。その時にメイド長に無礼を働いたようだ」
「メイド長……ギュスターブ邸のメイド長は確かテラネかしら。さすがにそれは見過ごせないわ」
リズリットはメイド長であるテラネのことを知っている。テラネは貴族の一人でもあるのだ。テラネの一族から抗議が来てもおかしくはない。彼女は最悪の事態を想定し、早めに動く方が良いと考えた。
「ヨハン、すぐにでもグレンとユリア・サンマイトの二人を呼び寄せましょう。あまり時間がないかもしれないわ」
「うむ……そうだな。では、早速手配をしてみよう」
ヨハンはあまり気乗りはしていないようだ。もちろん、リズリットも内心ではグレンを叱責したいなどとは思っていない。しかしこのまま放置していては、示しがつかないばかりか、取り返しのつかない事態を引き起こすかもしれない。
ラウコーン王国のトップに君臨する者として、それだけは避けなければならなかった。
しかしシリンガ宮殿は、国王とその妃の為にあると言えるだろう。つまり、将来的にはアレンとリオナの物になる確率が高いのだ。
玉座の間に座る国王ヨハン・ハンフリー。その隣に立っているのは、王妃であるリズリットだ。二人共まだ40代であり、他国と比較してトップとしての経験は浅い方だ。
「ヨハン……やはり、私のせいでしょうか」
「いやリズのせいではないさ。余が……いや、俺が自由にさせ過ぎたのだ」
背中まで伸びた金色の髪をなびかせたリズリット。40歳を超えているとはいえ、しわもほとんどなく、まだまだ美しさが保たれている。そんな彼女が悩んでいるのは、第二王子のグレンに関してだ。以前から、それなりに心配はしていたが……。
「やはり一度、このことについて話し合う必要があろう。ギュスターブの令嬢にも悪いことをしてしまったようだ」
「そうね。まったく、あの子は……」
リズリットは頭を抱えている。子供たちの中で、アレンは長男だからか上手く育ってくれた。しかし次男であるグレンは甘やかされた節があるのだ。ある意味ではたくましく育ってはいるのだが、それは王族という立場を無視した別方向での育ちになっている。
もしも彼が子爵程度の家系ならば、とっくに潰されていた可能性が高い。いままで自由に出来たのも、第二王子という非常に高い肩書きがあるからだ。
しかし、リオナ・ギュスターブと婚約破棄をし、さらにユリア・サンマイトと付き合うふしだらな行動に出たのだ。リオナに関してはアレンという救いが生まれたが、王族の行いとしてあまりに無謀だ。
ギュスターブは伯爵という地位ではあるが、有力貴族の一つになっているのだ。他の貴族と組んで反旗でも翻されたらたまったものではない。
下手をすれば、ハンフリー一族に大打撃を起こしかねない事態であった。実際はリオナもビシャスも温厚な性格の為、そのような事態にはなっていないが、可能性としては十分に考えられた。
「数日前にグレンの奴はギュスターブ邸を訪れている。その時にメイド長に無礼を働いたようだ」
「メイド長……ギュスターブ邸のメイド長は確かテラネかしら。さすがにそれは見過ごせないわ」
リズリットはメイド長であるテラネのことを知っている。テラネは貴族の一人でもあるのだ。テラネの一族から抗議が来てもおかしくはない。彼女は最悪の事態を想定し、早めに動く方が良いと考えた。
「ヨハン、すぐにでもグレンとユリア・サンマイトの二人を呼び寄せましょう。あまり時間がないかもしれないわ」
「うむ……そうだな。では、早速手配をしてみよう」
ヨハンはあまり気乗りはしていないようだ。もちろん、リズリットも内心ではグレンを叱責したいなどとは思っていない。しかしこのまま放置していては、示しがつかないばかりか、取り返しのつかない事態を引き起こすかもしれない。
ラウコーン王国のトップに君臨する者として、それだけは避けなければならなかった。
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