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7話 噂話 その2
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「……アレン様」
「な、なんだい? リオナ」
「あの……とても噂になっています……」
「ああ……面目ない」
リオナとアレンの二人は現在、ギュスターブ家の屋敷内に居た。正確にはロビーのソファに座っている。シリンガ宮殿内、加えて王都に居ては二人の噂話で持ち切りだからだ。自分が撒いたとはいえ、アレンは予想外の情報の広がりと、視線にさらされ護衛を付けずにリオナの家まで避難したというこになる。
とりあえず、ギュスターブの治める地域であればマシだろうという安易な考えだった。確かに王都や宮殿内に比べればマシと言えなくもないが……。
「見て見て、アレン様よ。リオナ様とお話しされてる」
「うわ~~怪しい。それに、すっごい格好いいし! さすが次期国王様になられる方よね」
ギュスターブの屋敷に仕えるメイド達は、思い切り二人の話題で盛り上がっていた。ロビーのソファに座る二人には会話内容までは聞こえていないが、自分たちのことを話していることはわかっている。
「悪かった、リオナ。お前は目立つのはあまり好きではないことを、もう少し考慮するべきだった」
「アレン様……」
アレンとしては良い噂も悪い噂も含めて、ある程度慣れている。そのため、我慢しようと思えば簡単だが、リオナへの配慮が薄かったことを反省しているのだ。控えめで無垢な彼女は、あまり目立つのは好きではない。しかし、現状に対するリオナの気持ちは少し違っていた。
「アレン様にそう言っていただけるのは、とても嬉しいです。でも……」
「ん? どうした、リオナ?」
「……今の噂は、恥ずかしい気持ちもあります。ですが……嬉しい気持ちの方が大きいんです」
「リオナ……? 本当に?」
「はい」
彼女は笑顔でアレンに笑いかけた。思わず抱きしめたくなるほどの可愛らしさだ。リオナは茶化されたり、からかわれつつも、祝福してくれている周囲の反応が嫌いではなかった。
ユリアに宣戦布告のような物言いをされた反動もあるかもしれないが、アレンとの婚約関係が公になったことを喜んでいるのだ。
今回の噂に関しては、控えめなリオナの姿はどこにもなかった。
「なにはともあれ、リオナが嫌ではないのならそれに越したことはない。安心したよ」
「はい、アレン様。お気遣いありがとうございます」
なかなか良い雰囲気と言えるだろうか。お互い顔を回せながら、とても幸せそうに笑っている。そして、見つめ過ぎたのか、同時に視線を逸らしていた。アレンも意外と初心なところがあるのかもしれない。
「このあと、如何なさいますか?」
「本日は、ビシャス殿はいらっしゃらないのか?」
「はい。お父様は出かけております」
「なるほど……なら、リオナの部屋を拝見してもいいかな?」
アレンとしては冗談半分だった。父親であるビシャスの有無も含めて。しかし、彼女にその冗談は伝わらなかったのだ。
「は、はい……ええと、アレン様がお望みでしたら……」
「……んん? リオナ?」
とても顔を赤くしているリオナ。純真無垢な彼女は、同時に想像力も豊かであったのだ。
「な、なんだい? リオナ」
「あの……とても噂になっています……」
「ああ……面目ない」
リオナとアレンの二人は現在、ギュスターブ家の屋敷内に居た。正確にはロビーのソファに座っている。シリンガ宮殿内、加えて王都に居ては二人の噂話で持ち切りだからだ。自分が撒いたとはいえ、アレンは予想外の情報の広がりと、視線にさらされ護衛を付けずにリオナの家まで避難したというこになる。
とりあえず、ギュスターブの治める地域であればマシだろうという安易な考えだった。確かに王都や宮殿内に比べればマシと言えなくもないが……。
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「悪かった、リオナ。お前は目立つのはあまり好きではないことを、もう少し考慮するべきだった」
「アレン様……」
アレンとしては良い噂も悪い噂も含めて、ある程度慣れている。そのため、我慢しようと思えば簡単だが、リオナへの配慮が薄かったことを反省しているのだ。控えめで無垢な彼女は、あまり目立つのは好きではない。しかし、現状に対するリオナの気持ちは少し違っていた。
「アレン様にそう言っていただけるのは、とても嬉しいです。でも……」
「ん? どうした、リオナ?」
「……今の噂は、恥ずかしい気持ちもあります。ですが……嬉しい気持ちの方が大きいんです」
「リオナ……? 本当に?」
「はい」
彼女は笑顔でアレンに笑いかけた。思わず抱きしめたくなるほどの可愛らしさだ。リオナは茶化されたり、からかわれつつも、祝福してくれている周囲の反応が嫌いではなかった。
ユリアに宣戦布告のような物言いをされた反動もあるかもしれないが、アレンとの婚約関係が公になったことを喜んでいるのだ。
今回の噂に関しては、控えめなリオナの姿はどこにもなかった。
「なにはともあれ、リオナが嫌ではないのならそれに越したことはない。安心したよ」
「はい、アレン様。お気遣いありがとうございます」
なかなか良い雰囲気と言えるだろうか。お互い顔を回せながら、とても幸せそうに笑っている。そして、見つめ過ぎたのか、同時に視線を逸らしていた。アレンも意外と初心なところがあるのかもしれない。
「このあと、如何なさいますか?」
「本日は、ビシャス殿はいらっしゃらないのか?」
「はい。お父様は出かけております」
「なるほど……なら、リオナの部屋を拝見してもいいかな?」
アレンとしては冗談半分だった。父親であるビシャスの有無も含めて。しかし、彼女にその冗談は伝わらなかったのだ。
「は、はい……ええと、アレン様がお望みでしたら……」
「……んん? リオナ?」
とても顔を赤くしているリオナ。純真無垢な彼女は、同時に想像力も豊かであったのだ。
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