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119話 作戦会議 その1

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 本拠地である館に戻って来た智司たち魔神の軍勢。出迎えていたのは、レジナだった。エルメスたちは、館内部の仕事をしているのか、その場には居ない。


「お帰りなさい、サトシ様」

「ただいま、レジナ。こっちは大丈夫だったか?」

「うん、大丈夫だった。途中でエステラが来てくれたから」

「ああ、そうだっけ。短時間の間に往復したらしいな、お疲れエステラ」


「あ、うん。気にしないでいいよ~~」


 智司の感謝の言葉にエステラは軽く手を振りながら答えた。自らの主に対する反応としては、やや軽薄な印象があるが、彼女の根本の性格ゆえの為、ハズキも叱責はしない。智司がそう望んで作り出しているのだから。


「デュランとかいう冒険者が揺さぶりを掛けて来てさ、念の為に私が戻ったの」

「なるほど……本拠地側が手薄だと判断したのか。流石はデュラン・ウェンデッタってところか……」


 アルビオン王国の最強であるランファーリを超える力を持つ人物だ。戦闘経験そのものはライラック老師よりは下かもしれないが、世界最高峰ダンジョンのソウルタワーで戦っているだけあり、瞬時の判断力などは上回っているだろう。

 エステラ、ミヤビ、レドンドを相手にしても怯まない精神力も脅威と言える。


「まあ、実際にデュラン・ウェンデッタが森の方に来ていたら、少し危なかったかもしれないからな」


 智司は当時の戦力を思い出していた。

「人間が来ても、オデが倒す、食う、心配ない……」

「レジナとゴーラだけでは果たして……といったところだったかな」


 事実上はエステラが来ていたが、元々の警備はゴーラとレジナの2体だけだ。他にもケルベロスたちも居たが、デュランの相手にはならない。

 もちろんデュランも負傷状態であった為、体力的に押し切ることは出来なかっただろうが、智司としては本拠地の守りをどの程度にすれば安心かという指標になっていた。


「智司様、アルビオン王国は如何いたしましょうか? こちらの力を見せつけた以上は、しばらくの間は攻撃はしてこないかと思われますが、安全の為にはすぐにでも滅ぼした方が良いかと……」

「いや、滅ぼすという選択肢はない。でも、デイトナをこのまま放置する気はないさ」

「と、おっしゃいますと……?」


 ハズキは智司の言った意味を理解することが出来ていない。ただ、彼は出来るだけ人への被害をなくそうとしている。これも元々は人間だったがゆえか。


 智司は視線をゆっくりと移動させた。そしてエステラに合わせて止める。


「エステラ」

「なに、智司?」

「お前はランシール学園に入学して、生徒を人質にしつつ、デイトナ全体を見張れ」

「わ~お、大胆な作戦っ」


 レドンド以上の実力を誇り、敵の能力をコピー出来るエステラが適任だと智司は判断したのだ。なんだかんだ言いつつも、デイトナの監視は必要だと智司は判断していた。

「ハズキ、仮面の道化師として戦っていた中で、遠隔監視みたいな能力持ちは居なかった?」

「私が倒した者の中には居なかったかと……しかし、冒険者界隈では何人か心当たりがあります。情報は仕入れていますので」

「じゃあ、適当に拉致して能力コピーしておいてくれ、エステラ。あとランシール学園に入学するときは、変装してな」


 学園の者達にエステラの正体がバレたところで、どうということはないが念の為だ。もう智司は敵側の最大戦力を把握しているのだから。必要以上に恐れることはない。


「なかなか重要なポジションなんだ、私……」


 思いの外、エステラの仕事量は多い。智司からの信頼がそれだけ大きいことを意味している。遠隔監視の技を持つ人間を拉致しコピーし、ランシール学園に監視役として入学する。智司も一旦は学園に戻るつもりなので、他人の振りをしながら、ということになる。


「来ないとは思うけど、アルノートゥンのメンバーが来たら戦わずに退却を優先してくれ」

「わかったわ。あの二刀流の男でしょ? もう一人は倒したんだっけ?」

「一応は……でも、シャルム・ローズがあんなに簡単に死ぬとは考えにくい気もする」


 智司はシャルムのことを深く知っているわけではないが、何か違和感を持っていた。彼女はまだ生きている……そんな予感が付きまとっているのだ。


「もしもシャルム・ローズが生きている場合、厄介かもしれません。単独ならまだしも、デュラン・ウェンデッタと二人がかりの場合、私やアリスと互角程度の強さになります」


「え~~~~、そんなに強いの~~~~?」


「なるほど……そういうことか」


 ハズキの言葉にアリスも驚いている印象だ。智司はハズキが捕まった理由をようやく納得した感じだ。最強の冒険者パーティによる同時攻撃……ソウルタワー900階以上に進める者達による挟撃は、いくらハズキといえども対処が難しかったのだ。


「心配はない……各個撃破をしていけば問題はないだろう。二人を合わせなければいい、単体ならレドンドでもある程度の戦いは出来そうだからな」


 智司の見立ては以上だった。シャルムやデュランといえども、単独の場合はレドンドクラスを簡単に倒すことは難しいはず。その間にもう一人を始末すれば良いのだから。


「ただ怖いのはデュランのリファインコマンド……確か行動を最適化し、自身を強化していく能力のはずだ」


 以前のデュランよりも、現在は強くなっている可能性がある。智司にとって、アルノートゥンのメンバーだけは警戒に値するレベルとなっていた。


「あの能力をエステラがコピーした場合、エステラが最強の配下になるかもな」

「え、本当に? じゃあ、最優先でコピーしよっかな~~?」


 エステラは相手の能力をより高次元でコピーすることができる。ただえさえ強い彼女がリファインコマンドを手に入れた場合、ハズキやアリスを超えられる可能性もあった。エステラとしては単純に強くなれる上に、智司の片腕になれるかもしれない為にウキウキしているのだ。


「それから……館の守りだけど……」

「はい、智司様」


 智司の話しは本拠地の守りへと移行していった……。
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