119 / 126
119話 作戦会議 その1
しおりを挟む
本拠地である館に戻って来た智司たち魔神の軍勢。出迎えていたのは、レジナだった。エルメスたちは、館内部の仕事をしているのか、その場には居ない。
「お帰りなさい、サトシ様」
「ただいま、レジナ。こっちは大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫だった。途中でエステラが来てくれたから」
「ああ、そうだっけ。短時間の間に往復したらしいな、お疲れエステラ」
「あ、うん。気にしないでいいよ~~」
智司の感謝の言葉にエステラは軽く手を振りながら答えた。自らの主に対する反応としては、やや軽薄な印象があるが、彼女の根本の性格ゆえの為、ハズキも叱責はしない。智司がそう望んで作り出しているのだから。
「デュランとかいう冒険者が揺さぶりを掛けて来てさ、念の為に私が戻ったの」
「なるほど……本拠地側が手薄だと判断したのか。流石はデュラン・ウェンデッタってところか……」
アルビオン王国の最強であるランファーリを超える力を持つ人物だ。戦闘経験そのものはライラック老師よりは下かもしれないが、世界最高峰ダンジョンのソウルタワーで戦っているだけあり、瞬時の判断力などは上回っているだろう。
エステラ、ミヤビ、レドンドを相手にしても怯まない精神力も脅威と言える。
「まあ、実際にデュラン・ウェンデッタが森の方に来ていたら、少し危なかったかもしれないからな」
智司は当時の戦力を思い出していた。
「人間が来ても、オデが倒す、食う、心配ない……」
「レジナとゴーラだけでは果たして……といったところだったかな」
事実上はエステラが来ていたが、元々の警備はゴーラとレジナの2体だけだ。他にもケルベロスたちも居たが、デュランの相手にはならない。
もちろんデュランも負傷状態であった為、体力的に押し切ることは出来なかっただろうが、智司としては本拠地の守りをどの程度にすれば安心かという指標になっていた。
「智司様、アルビオン王国は如何いたしましょうか? こちらの力を見せつけた以上は、しばらくの間は攻撃はしてこないかと思われますが、安全の為にはすぐにでも滅ぼした方が良いかと……」
「いや、滅ぼすという選択肢はない。でも、デイトナをこのまま放置する気はないさ」
「と、おっしゃいますと……?」
ハズキは智司の言った意味を理解することが出来ていない。ただ、彼は出来るだけ人への被害をなくそうとしている。これも元々は人間だったがゆえか。
智司は視線をゆっくりと移動させた。そしてエステラに合わせて止める。
「エステラ」
「なに、智司?」
「お前はランシール学園に入学して、生徒を人質にしつつ、デイトナ全体を見張れ」
「わ~お、大胆な作戦っ」
レドンド以上の実力を誇り、敵の能力をコピー出来るエステラが適任だと智司は判断したのだ。なんだかんだ言いつつも、デイトナの監視は必要だと智司は判断していた。
「ハズキ、仮面の道化師として戦っていた中で、遠隔監視みたいな能力持ちは居なかった?」
「私が倒した者の中には居なかったかと……しかし、冒険者界隈では何人か心当たりがあります。情報は仕入れていますので」
「じゃあ、適当に拉致して能力コピーしておいてくれ、エステラ。あとランシール学園に入学するときは、変装してな」
学園の者達にエステラの正体がバレたところで、どうということはないが念の為だ。もう智司は敵側の最大戦力を把握しているのだから。必要以上に恐れることはない。
「なかなか重要なポジションなんだ、私……」
思いの外、エステラの仕事量は多い。智司からの信頼がそれだけ大きいことを意味している。遠隔監視の技を持つ人間を拉致しコピーし、ランシール学園に監視役として入学する。智司も一旦は学園に戻るつもりなので、他人の振りをしながら、ということになる。
「来ないとは思うけど、アルノートゥンのメンバーが来たら戦わずに退却を優先してくれ」
「わかったわ。あの二刀流の男でしょ? もう一人は倒したんだっけ?」
「一応は……でも、シャルム・ローズがあんなに簡単に死ぬとは考えにくい気もする」
智司はシャルムのことを深く知っているわけではないが、何か違和感を持っていた。彼女はまだ生きている……そんな予感が付きまとっているのだ。
「もしもシャルム・ローズが生きている場合、厄介かもしれません。単独ならまだしも、デュラン・ウェンデッタと二人がかりの場合、私やアリスと互角程度の強さになります」
「え~~~~、そんなに強いの~~~~?」
「なるほど……そういうことか」
ハズキの言葉にアリスも驚いている印象だ。智司はハズキが捕まった理由をようやく納得した感じだ。最強の冒険者パーティによる同時攻撃……ソウルタワー900階以上に進める者達による挟撃は、いくらハズキといえども対処が難しかったのだ。
「心配はない……各個撃破をしていけば問題はないだろう。二人を合わせなければいい、単体ならレドンドでもある程度の戦いは出来そうだからな」
智司の見立ては以上だった。シャルムやデュランといえども、単独の場合はレドンドクラスを簡単に倒すことは難しいはず。その間にもう一人を始末すれば良いのだから。
「ただ怖いのはデュランのリファインコマンド……確か行動を最適化し、自身を強化していく能力のはずだ」
以前のデュランよりも、現在は強くなっている可能性がある。智司にとって、アルノートゥンのメンバーだけは警戒に値するレベルとなっていた。
「あの能力をエステラがコピーした場合、エステラが最強の配下になるかもな」
「え、本当に? じゃあ、最優先でコピーしよっかな~~?」
エステラは相手の能力をより高次元でコピーすることができる。ただえさえ強い彼女がリファインコマンドを手に入れた場合、ハズキやアリスを超えられる可能性もあった。エステラとしては単純に強くなれる上に、智司の片腕になれるかもしれない為にウキウキしているのだ。
「それから……館の守りだけど……」
「はい、智司様」
智司の話しは本拠地の守りへと移行していった……。
「お帰りなさい、サトシ様」
「ただいま、レジナ。こっちは大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫だった。途中でエステラが来てくれたから」
「ああ、そうだっけ。短時間の間に往復したらしいな、お疲れエステラ」
「あ、うん。気にしないでいいよ~~」
智司の感謝の言葉にエステラは軽く手を振りながら答えた。自らの主に対する反応としては、やや軽薄な印象があるが、彼女の根本の性格ゆえの為、ハズキも叱責はしない。智司がそう望んで作り出しているのだから。
「デュランとかいう冒険者が揺さぶりを掛けて来てさ、念の為に私が戻ったの」
「なるほど……本拠地側が手薄だと判断したのか。流石はデュラン・ウェンデッタってところか……」
アルビオン王国の最強であるランファーリを超える力を持つ人物だ。戦闘経験そのものはライラック老師よりは下かもしれないが、世界最高峰ダンジョンのソウルタワーで戦っているだけあり、瞬時の判断力などは上回っているだろう。
エステラ、ミヤビ、レドンドを相手にしても怯まない精神力も脅威と言える。
「まあ、実際にデュラン・ウェンデッタが森の方に来ていたら、少し危なかったかもしれないからな」
智司は当時の戦力を思い出していた。
「人間が来ても、オデが倒す、食う、心配ない……」
「レジナとゴーラだけでは果たして……といったところだったかな」
事実上はエステラが来ていたが、元々の警備はゴーラとレジナの2体だけだ。他にもケルベロスたちも居たが、デュランの相手にはならない。
もちろんデュランも負傷状態であった為、体力的に押し切ることは出来なかっただろうが、智司としては本拠地の守りをどの程度にすれば安心かという指標になっていた。
「智司様、アルビオン王国は如何いたしましょうか? こちらの力を見せつけた以上は、しばらくの間は攻撃はしてこないかと思われますが、安全の為にはすぐにでも滅ぼした方が良いかと……」
「いや、滅ぼすという選択肢はない。でも、デイトナをこのまま放置する気はないさ」
「と、おっしゃいますと……?」
ハズキは智司の言った意味を理解することが出来ていない。ただ、彼は出来るだけ人への被害をなくそうとしている。これも元々は人間だったがゆえか。
智司は視線をゆっくりと移動させた。そしてエステラに合わせて止める。
「エステラ」
「なに、智司?」
「お前はランシール学園に入学して、生徒を人質にしつつ、デイトナ全体を見張れ」
「わ~お、大胆な作戦っ」
レドンド以上の実力を誇り、敵の能力をコピー出来るエステラが適任だと智司は判断したのだ。なんだかんだ言いつつも、デイトナの監視は必要だと智司は判断していた。
「ハズキ、仮面の道化師として戦っていた中で、遠隔監視みたいな能力持ちは居なかった?」
「私が倒した者の中には居なかったかと……しかし、冒険者界隈では何人か心当たりがあります。情報は仕入れていますので」
「じゃあ、適当に拉致して能力コピーしておいてくれ、エステラ。あとランシール学園に入学するときは、変装してな」
学園の者達にエステラの正体がバレたところで、どうということはないが念の為だ。もう智司は敵側の最大戦力を把握しているのだから。必要以上に恐れることはない。
「なかなか重要なポジションなんだ、私……」
思いの外、エステラの仕事量は多い。智司からの信頼がそれだけ大きいことを意味している。遠隔監視の技を持つ人間を拉致しコピーし、ランシール学園に監視役として入学する。智司も一旦は学園に戻るつもりなので、他人の振りをしながら、ということになる。
「来ないとは思うけど、アルノートゥンのメンバーが来たら戦わずに退却を優先してくれ」
「わかったわ。あの二刀流の男でしょ? もう一人は倒したんだっけ?」
「一応は……でも、シャルム・ローズがあんなに簡単に死ぬとは考えにくい気もする」
智司はシャルムのことを深く知っているわけではないが、何か違和感を持っていた。彼女はまだ生きている……そんな予感が付きまとっているのだ。
「もしもシャルム・ローズが生きている場合、厄介かもしれません。単独ならまだしも、デュラン・ウェンデッタと二人がかりの場合、私やアリスと互角程度の強さになります」
「え~~~~、そんなに強いの~~~~?」
「なるほど……そういうことか」
ハズキの言葉にアリスも驚いている印象だ。智司はハズキが捕まった理由をようやく納得した感じだ。最強の冒険者パーティによる同時攻撃……ソウルタワー900階以上に進める者達による挟撃は、いくらハズキといえども対処が難しかったのだ。
「心配はない……各個撃破をしていけば問題はないだろう。二人を合わせなければいい、単体ならレドンドでもある程度の戦いは出来そうだからな」
智司の見立ては以上だった。シャルムやデュランといえども、単独の場合はレドンドクラスを簡単に倒すことは難しいはず。その間にもう一人を始末すれば良いのだから。
「ただ怖いのはデュランのリファインコマンド……確か行動を最適化し、自身を強化していく能力のはずだ」
以前のデュランよりも、現在は強くなっている可能性がある。智司にとって、アルノートゥンのメンバーだけは警戒に値するレベルとなっていた。
「あの能力をエステラがコピーした場合、エステラが最強の配下になるかもな」
「え、本当に? じゃあ、最優先でコピーしよっかな~~?」
エステラは相手の能力をより高次元でコピーすることができる。ただえさえ強い彼女がリファインコマンドを手に入れた場合、ハズキやアリスを超えられる可能性もあった。エステラとしては単純に強くなれる上に、智司の片腕になれるかもしれない為にウキウキしているのだ。
「それから……館の守りだけど……」
「はい、智司様」
智司の話しは本拠地の守りへと移行していった……。
0
お気に入りに追加
1,310
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~
クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。
ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。
下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。
幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない!
「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」
「兵士の武器の質を向上させる!」
「まだ勝てません!」
「ならば兵士に薬物投与するしか」
「いけません! 他の案を!」
くっ、貴族には制約が多すぎる!
貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ!
「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」
「勝てば正義。死ななきゃ安い」
これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。
修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す
佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。
誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。
また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。
僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。
不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。
他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる