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92話 周辺国家との会談 その1

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 ブルードラゴンを召喚したランファーリ。ブルードラゴンは、レドンドとは違い少し丸みを帯びた外見をしていた。性別的にはメスに該当するようだ。

「フルルルルルル……」

「うわ、やめろってメナス……相変わらず、可愛い奴だな」

 メナスと呼ばれたブルードラゴンは、ランファーリの顔辺りを優しく舐め始めた。サイズが違うので、身体も舐めた形になっているが。


「ランファーリ、あんた以前はドラゴンなんて面識ないみたいじゃなかったかい?」

「シルバードラゴンとの話だろ? そりゃ、シルバードラゴンとなんて面識ねぇし」

「……もう、いいさね」


 ランファーリの思考は、ある意味ではアルビオン王国の教えに基づいている。仲間であろうと、極力自らの能力は見せない。彼女は無意識の内にそれを実行していたのだ。


「ブルードラゴンか……戦闘力的にはシルバードラゴンには及ばんであろうが……大したものじゃな」

「そりゃ、シルバードラゴンは竜族の双頭って言われてるくらいだからな。いくらメナスでも、それよりは下だろうよ」


「フルルルルル……」


 メナスは納得言っている様子ではないが、的を射ているのか多少うなだれてみせた。ランファーリはそんなメナスを優しく撫でて励ましている。


「ドラゴンの召喚なんて……あり得ない……」


 常に自らの上に君臨しているランファーリにネロは非常に悔しい思いを抱いていた。ここに来て、さらに引き離された感じだ。


「さて、ランファーリの能力もわかったし、アウグス帝国やコアルドイ女王国などの周辺国家からの重鎮に備えようかね。数年振りの複数の国家間による集まりさね」


 今回の一件を受けて、周辺国家から重鎮を招き、今後の対応策についての検討が行われる会議……。その規模は今までの中でも最大級になるであろうことは、簡単に予想できた。智司率いる魔神の軍勢クラスの敵が現れたことは彼らにとっても経験がなかったからだ。


-----------------------


「……えっ? リリーのお母さんが来るって……?」

「うん、まあ……。一応、母さんはコアルドイ女王国の幹部だから……」


 デイトナの学園に戻っていた智司は寮でリリーと話しをしていた。内容は彼女のお母さんについてだ。近々、デイトナを訪れるようだ。シリンス家に嫁いだリリーの母親は、女王陛下の側近の一人を務めていた。アルビオン王国の周辺国家の重鎮が招集される会談に、彼女も出席することになっているのだ。


 休戦協定の破棄を経て、智司はどのような状況になっているのかを確認しにきたわけだが……ちなみに現在、ランシール学園の学業自体は休止になっている。


「でさ……智司、あんまりそういう状況じゃないのはわかってるんだけど……」

「ん?」


 リリーは指先を髪の毛に絡めて明後日の方向を向いていた。なんとも可愛らしいしぐさだ。


「せっかくだからさ、母さんに会ってもらえないかな?」

「……えっ?」

 周辺国家の会談のお付きとして訪れるであろうリリーの母親。そんなシリアスな雰囲気とは別の甘酸っぱい空気が智司とリリーの間には流れていたという……。
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