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71話 魔神の実力
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「魔神……そんな存在が、人と変わらない姿で動いているのか……」
「まあ、そうなるかな」
余計なことは言わない方がいいと判断し、智司は適当に相槌をうつ。もはや、ラーデュイの処遇は決まっているのだから。
「一つだけ、聞いておきたいことがある」
「……なにかな?」
ラーデュイも自らの死を確信している。抵抗したところで、万が一にも勝ち目がないことは明白だ。現在の智司はリミッターを外し、魔神としての能力を開放していたのだから。砂煙で姿を隠し、可能な限りあちら側には悟られないように配慮はしている。
「この世界で俺達の脅威になりそうな存在はどれだけ居るんだ?」
意外な質問……ラーデュイは思わず笑みをこぼしていた。とても、これから死が待っているとは思えない。
「……ヴィンスヘルムでも相手にならないんだ。シルバードラゴンを従える者に対抗できる存在なんて……まあ、アルノートゥンの二人組ならわからないか」
「なるほど」
やはり出て来たのはデュラン・ウェンデッタとシャルム・ローズの二人だった。彼らの力の上限はわからないが、十分に強いことは身を持ってわかっている。ラーデュイからも二人の名前が出て来たことで、より確信に近付いたわけだ。
「他には?」
「……この大陸内での二大勢力、アルビオン王国とマリアナ公国であれば居るかもな……可能性の話だが」
「ふむふむ」
アルビオン王国は既にある程度の戦力は把握している。紛いなりにも対抗できる可能性があるのは、天網評議会のトップ3くらいだろう。特に、評議会序列1位については智司達は全く知らないのだから。
「智司様、マリアナ公国はレジナも知らない」
「そうだね」
「マリアナ公国は、アルビオン王国の北にある強国だよ。貴族家系であるバートバン公爵が主君を務める、貴族国家だ。近年は特に力をつけており、アルビオン王国を狙っているとも言われているな」
最強と称されていたアルビオン王国の北にそのような強国があるとは。智司は情報を得ておいてよかったと判断した。ラーデュイが言うように、マリアナ公国にも驚異的な戦力の持ち主が居てもおかしくはないということか。
「ありがとう、大体わかったよ」
「できれば、命は助けてほしい……なんてな」
ラーデュイは言ってみたが、レジナの瞳を見て無理だと判断した。この魔物は殺す気満々なのだと。
「レジナが殺ってもいい? こいつはヴィンスヘルムと多分互角くらい、レジナでも簡単に殺せる」
「ヴィンスヘルムと互角くらいか……なるほど、自称、人類最強は伊達じゃないってことかな」
ヴィンスヘルムと同じくらいの実力を誇るラーデュイ。賞金首として1位になれるくらいの強さであれば、人類最強を自称していても恥ずかしいことではなかった。だが、ラーデュイは頭を抱えている。
「オイラが人類最強……君らを見ていると、恥ずかしくて死にそうだよ……さっさと、殺ってくれ」
「ああ、わかったよ」
奥の手を持っている可能性も考え、智司は魔神の衣を纏った。赤い闘気がほとばしり、ラーデュイに突き刺さるように降り注ぐ。
「こ、これが……魔神の実力……!?」
あまりの強大な闘気にラーデュイはうまく言葉を紡げない状態になってしまった。ここまでの力は彼も見たことがないのだろう。
「……好敵手に出会いたいなら、ソウルタワーの頂上を目指すのが近道かもね……頂上には創造神が居るという噂もあるよ……」
「わかった、考えておくよ」
その直後の踏み込みは、ラーデュイも反応できなかった。ブラッドハーケンを一撃で粉砕した攻撃と同様に、智司の動きは時空を歪め、光速に近い速度を再現していたのだから。
ラーデュイは智司の魔神の剣の一撃で粉々に粉砕……されるはずだった。しかし……
「あれ? 智司様、殺さないの?」
智司はラーデュイの首に衝撃を与え、気絶させただけに留めた。色々な情報をくれた礼という意味合いがあるのかもしれない。光速の動きからの気絶攻撃……とても無駄なエネルギーの使い方だった。
「この男は連れ去って、戦力として加えよう。なんなら、ハズキのあの能力でエルメスみたいに操ってもいいし」
「……意外」
「なにが?」
レジナは首を傾げながら智司を見ていた。彼も彼女が言っている言葉の意味が分かっていない。
「智司様は館の中には女しか入れたくないと思ってた」
レジナは流暢にしゃべれるようになってきているが、とても心外なセリフが飛んできた。彼女は智司がハーレムを館内で築いていると言っているのだ。智司の本音としては間違っていないが、納得するのはとても恥ずかしい。
「こらっ」
「いたい、智司様」
レジナの鋭い言葉に智司は突っ込みを入れた。もちろん怒ってなどいないが、彼女の頭を軽く叩いたのだ。レジナも冗談っぽく、叩かれた部分をさすり、痛くないのに痛そうにしていた。
「まあ、男を入れたくないというのも、あるにはあるけど……執事的な人間は今後、必要になる時もあるだろ。その為にもこの男は生かしておこうかと」
「わかった……じゃあ、レジナが連れて帰る」
「頼むよ、あと向こうでしばらく待機していてくれ。ないとは思うけど、反抗したら速やかに処理してね」
「うん。智司様も気を付けてね」
「ああ。ありがとう、レジナ」
レジナは智司と軽く会話を交わすとラーデュイを拘束し、そのまま地面に隠れるようにして消えて行った。今宵、新たなる戦力が魔神の軍勢に加わったのだ。
「まあ、そうなるかな」
余計なことは言わない方がいいと判断し、智司は適当に相槌をうつ。もはや、ラーデュイの処遇は決まっているのだから。
「一つだけ、聞いておきたいことがある」
「……なにかな?」
ラーデュイも自らの死を確信している。抵抗したところで、万が一にも勝ち目がないことは明白だ。現在の智司はリミッターを外し、魔神としての能力を開放していたのだから。砂煙で姿を隠し、可能な限りあちら側には悟られないように配慮はしている。
「この世界で俺達の脅威になりそうな存在はどれだけ居るんだ?」
意外な質問……ラーデュイは思わず笑みをこぼしていた。とても、これから死が待っているとは思えない。
「……ヴィンスヘルムでも相手にならないんだ。シルバードラゴンを従える者に対抗できる存在なんて……まあ、アルノートゥンの二人組ならわからないか」
「なるほど」
やはり出て来たのはデュラン・ウェンデッタとシャルム・ローズの二人だった。彼らの力の上限はわからないが、十分に強いことは身を持ってわかっている。ラーデュイからも二人の名前が出て来たことで、より確信に近付いたわけだ。
「他には?」
「……この大陸内での二大勢力、アルビオン王国とマリアナ公国であれば居るかもな……可能性の話だが」
「ふむふむ」
アルビオン王国は既にある程度の戦力は把握している。紛いなりにも対抗できる可能性があるのは、天網評議会のトップ3くらいだろう。特に、評議会序列1位については智司達は全く知らないのだから。
「智司様、マリアナ公国はレジナも知らない」
「そうだね」
「マリアナ公国は、アルビオン王国の北にある強国だよ。貴族家系であるバートバン公爵が主君を務める、貴族国家だ。近年は特に力をつけており、アルビオン王国を狙っているとも言われているな」
最強と称されていたアルビオン王国の北にそのような強国があるとは。智司は情報を得ておいてよかったと判断した。ラーデュイが言うように、マリアナ公国にも驚異的な戦力の持ち主が居てもおかしくはないということか。
「ありがとう、大体わかったよ」
「できれば、命は助けてほしい……なんてな」
ラーデュイは言ってみたが、レジナの瞳を見て無理だと判断した。この魔物は殺す気満々なのだと。
「レジナが殺ってもいい? こいつはヴィンスヘルムと多分互角くらい、レジナでも簡単に殺せる」
「ヴィンスヘルムと互角くらいか……なるほど、自称、人類最強は伊達じゃないってことかな」
ヴィンスヘルムと同じくらいの実力を誇るラーデュイ。賞金首として1位になれるくらいの強さであれば、人類最強を自称していても恥ずかしいことではなかった。だが、ラーデュイは頭を抱えている。
「オイラが人類最強……君らを見ていると、恥ずかしくて死にそうだよ……さっさと、殺ってくれ」
「ああ、わかったよ」
奥の手を持っている可能性も考え、智司は魔神の衣を纏った。赤い闘気がほとばしり、ラーデュイに突き刺さるように降り注ぐ。
「こ、これが……魔神の実力……!?」
あまりの強大な闘気にラーデュイはうまく言葉を紡げない状態になってしまった。ここまでの力は彼も見たことがないのだろう。
「……好敵手に出会いたいなら、ソウルタワーの頂上を目指すのが近道かもね……頂上には創造神が居るという噂もあるよ……」
「わかった、考えておくよ」
その直後の踏み込みは、ラーデュイも反応できなかった。ブラッドハーケンを一撃で粉砕した攻撃と同様に、智司の動きは時空を歪め、光速に近い速度を再現していたのだから。
ラーデュイは智司の魔神の剣の一撃で粉々に粉砕……されるはずだった。しかし……
「あれ? 智司様、殺さないの?」
智司はラーデュイの首に衝撃を与え、気絶させただけに留めた。色々な情報をくれた礼という意味合いがあるのかもしれない。光速の動きからの気絶攻撃……とても無駄なエネルギーの使い方だった。
「この男は連れ去って、戦力として加えよう。なんなら、ハズキのあの能力でエルメスみたいに操ってもいいし」
「……意外」
「なにが?」
レジナは首を傾げながら智司を見ていた。彼も彼女が言っている言葉の意味が分かっていない。
「智司様は館の中には女しか入れたくないと思ってた」
レジナは流暢にしゃべれるようになってきているが、とても心外なセリフが飛んできた。彼女は智司がハーレムを館内で築いていると言っているのだ。智司の本音としては間違っていないが、納得するのはとても恥ずかしい。
「こらっ」
「いたい、智司様」
レジナの鋭い言葉に智司は突っ込みを入れた。もちろん怒ってなどいないが、彼女の頭を軽く叩いたのだ。レジナも冗談っぽく、叩かれた部分をさすり、痛くないのに痛そうにしていた。
「まあ、男を入れたくないというのも、あるにはあるけど……執事的な人間は今後、必要になる時もあるだろ。その為にもこの男は生かしておこうかと」
「わかった……じゃあ、レジナが連れて帰る」
「頼むよ、あと向こうでしばらく待機していてくれ。ないとは思うけど、反抗したら速やかに処理してね」
「うん。智司様も気を付けてね」
「ああ。ありがとう、レジナ」
レジナは智司と軽く会話を交わすとラーデュイを拘束し、そのまま地面に隠れるようにして消えて行った。今宵、新たなる戦力が魔神の軍勢に加わったのだ。
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