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66話 防衛戦力 その2
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「まさか、ヴィンスヘルムが死ぬとは……オイラとしても予想していなかった」
「お頭、ヴィンスヘルムは影のような魔物にやられたという噂が出ているよ」
「……」
アゾッドタウンの郊外の一区画……ジープロウダの本拠点にて、気質ではない会話が行われていた。ジープロウダのお頭であり、自称「人類最強」の異名を持つ、ジオン・ラーデュイ。
それからその両翼とされている、シスマとメンフィスの二人だ。メンフィスは基本的にしゃべらないので、ラーデュイとシスマの会話になっている。
「ヴィンスヘルムを倒せるほどの魔物……例のシルバードラゴンが目撃された森から来ているかもしれんな」
「まさか……シルバードラゴンだけでも国家が滅びそうな脅威なのに。ヴィンスヘルムを殺せる魔物まで仲間に居るなんて、考えられないよ」
ラーデュイはリリーとレジナの会話までは知らないが、様々な状況などから予想を付けたのだ。見事に的中していたが、シスマは信じてはいなかった。
「……ボスである魔神が連れて来ている可能性もある」
「魔神……?」
「シルバードラゴンの主は魔神のようだからな」
ラーデュイ自身も信じてはいないことだが、天網評議会を通しての情報にはなる。魔神の存在……。
「ソウルタワーの頂上には、創設者である神が眠っているとされているが……それと同じような存在なのかね」
「眉唾な情報だね。そんな情報を信じるなんて、お頭らしくない」
シスマは現実味のない話だと、お頭の言葉を遮る。ある意味で信じたくない部分もあったのだ。シスマとメンフィスは先日、ソウルタワーにてあり得ない衝撃を目の当たりにしているのだから。
「それでお頭。アゾットタウンを占領する為に、女王国も動かす手筈だけど……シリンス家の令嬢には逃げられたよ」
「ヴィンスヘルムが負けるのは想定外だったからな、まあいい。どのみち、賞金首の戦力は揃っている」
ラーデュイが話している途中、彼の背後から人影が現れた。シスマもメンフィスもその気配に気付くことはできなかった。
「なっ……! 誰だい!?」
「ダブルブレードのアビサル・ノックスと言えば、伝わるか?」
現れたのは二本の曲刀を握った剣士風の男だ。20代と思しき風貌であり、頬骨は非常に細く、体つきもシャープであった。髪の毛は茶色であり、耳が完全に隠れるほどの長さにしていた。
「アビサル・ノックス……賞金首序列上位に名を連ねているあの……?」
「残念だが、繰り上がりで現在は1位さ。ヴィンスヘルムのカスは俺っちが倒そうとしてたんだけどな。勝手に死にやがって、雑魚が」
彼は二本の曲刀を器用に回しながら話していた。ヴィンスヘルムが死んだことについては、微塵も悲しんでいる様子はない。
アビサルとは体格からして真逆を行くラーデュイは煙草に火を付ける。自慢のドレッドヘアーに触れながら話を続けた。
「ヴィンスヘルムはシリンス家の令嬢の誘拐に成功している。正体不明の魔物にやられたのは予想外だが、仲間を卑下する発言は感心できないな」
「ラーデュイ……俺っち達、賞金首はあんたの部下じゃねぇんだぜ? 強力してやってるんだ。そこんとこ弁えて話した方が良いと思うな」
「大丈夫、オイラは十分に弁えているさ」
海の底……深海から直視されているような深い瞳で、ラーデュイはアビサルを見つめた。そこには全くと言っていいほど殺気は感じられない。しかし、アビサルの次の言葉を止めたのは明白だ。彼は無口になり、何も話さなくなった。
「現在の賞金首ランキング2位、仮面の道化師にも依頼は出していたつもりだが……無視をされたか、届かなかったか」
ラーデュイは残念そうに語る。彼からの依頼に対して音信不通などあり得ない。ヴィンスヘルムですらしない芸当だ。命知らずな犯罪者も居るものだとアビサルやシスマ達は考えていた。
「まあいい。では今一度、作戦内容をおさらいするぞ。といっても単純明快だが……」
彼は軽く手を叩き、場の空気を元に戻した。
「囮の傭兵団はアゾットタウンに侵攻し、本命のオイラ達はそのままソウルタワーを襲撃する。ソウルタワーの占拠が成功すれば、アゾットタウンはどうでもいい」
彼らの目的はあくまでもソウルタワーだ。内部に眠る無尽蔵の資源こそが大本命であった。自称「人類最強」の男、ジオン・ラーデュイ。彼は作戦の失敗など微塵も考えていないのだ。
「お頭、ヴィンスヘルムは影のような魔物にやられたという噂が出ているよ」
「……」
アゾッドタウンの郊外の一区画……ジープロウダの本拠点にて、気質ではない会話が行われていた。ジープロウダのお頭であり、自称「人類最強」の異名を持つ、ジオン・ラーデュイ。
それからその両翼とされている、シスマとメンフィスの二人だ。メンフィスは基本的にしゃべらないので、ラーデュイとシスマの会話になっている。
「ヴィンスヘルムを倒せるほどの魔物……例のシルバードラゴンが目撃された森から来ているかもしれんな」
「まさか……シルバードラゴンだけでも国家が滅びそうな脅威なのに。ヴィンスヘルムを殺せる魔物まで仲間に居るなんて、考えられないよ」
ラーデュイはリリーとレジナの会話までは知らないが、様々な状況などから予想を付けたのだ。見事に的中していたが、シスマは信じてはいなかった。
「……ボスである魔神が連れて来ている可能性もある」
「魔神……?」
「シルバードラゴンの主は魔神のようだからな」
ラーデュイ自身も信じてはいないことだが、天網評議会を通しての情報にはなる。魔神の存在……。
「ソウルタワーの頂上には、創設者である神が眠っているとされているが……それと同じような存在なのかね」
「眉唾な情報だね。そんな情報を信じるなんて、お頭らしくない」
シスマは現実味のない話だと、お頭の言葉を遮る。ある意味で信じたくない部分もあったのだ。シスマとメンフィスは先日、ソウルタワーにてあり得ない衝撃を目の当たりにしているのだから。
「それでお頭。アゾットタウンを占領する為に、女王国も動かす手筈だけど……シリンス家の令嬢には逃げられたよ」
「ヴィンスヘルムが負けるのは想定外だったからな、まあいい。どのみち、賞金首の戦力は揃っている」
ラーデュイが話している途中、彼の背後から人影が現れた。シスマもメンフィスもその気配に気付くことはできなかった。
「なっ……! 誰だい!?」
「ダブルブレードのアビサル・ノックスと言えば、伝わるか?」
現れたのは二本の曲刀を握った剣士風の男だ。20代と思しき風貌であり、頬骨は非常に細く、体つきもシャープであった。髪の毛は茶色であり、耳が完全に隠れるほどの長さにしていた。
「アビサル・ノックス……賞金首序列上位に名を連ねているあの……?」
「残念だが、繰り上がりで現在は1位さ。ヴィンスヘルムのカスは俺っちが倒そうとしてたんだけどな。勝手に死にやがって、雑魚が」
彼は二本の曲刀を器用に回しながら話していた。ヴィンスヘルムが死んだことについては、微塵も悲しんでいる様子はない。
アビサルとは体格からして真逆を行くラーデュイは煙草に火を付ける。自慢のドレッドヘアーに触れながら話を続けた。
「ヴィンスヘルムはシリンス家の令嬢の誘拐に成功している。正体不明の魔物にやられたのは予想外だが、仲間を卑下する発言は感心できないな」
「ラーデュイ……俺っち達、賞金首はあんたの部下じゃねぇんだぜ? 強力してやってるんだ。そこんとこ弁えて話した方が良いと思うな」
「大丈夫、オイラは十分に弁えているさ」
海の底……深海から直視されているような深い瞳で、ラーデュイはアビサルを見つめた。そこには全くと言っていいほど殺気は感じられない。しかし、アビサルの次の言葉を止めたのは明白だ。彼は無口になり、何も話さなくなった。
「現在の賞金首ランキング2位、仮面の道化師にも依頼は出していたつもりだが……無視をされたか、届かなかったか」
ラーデュイは残念そうに語る。彼からの依頼に対して音信不通などあり得ない。ヴィンスヘルムですらしない芸当だ。命知らずな犯罪者も居るものだとアビサルやシスマ達は考えていた。
「まあいい。では今一度、作戦内容をおさらいするぞ。といっても単純明快だが……」
彼は軽く手を叩き、場の空気を元に戻した。
「囮の傭兵団はアゾットタウンに侵攻し、本命のオイラ達はそのままソウルタワーを襲撃する。ソウルタワーの占拠が成功すれば、アゾットタウンはどうでもいい」
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