21 / 23
21話 遺跡 その5
しおりを挟む
シャイレーン遺跡の地下8階……現代の人間たちが辿り着いている最下層であり、出て来る魔物たちも強力になっている。ほんの一部のパーティでなければ、そもそも辿り着くことさえ難しい領域ではあるのだが……。
「これ、未知の領域にも行けるんじゃないの?」
後方支援と攻撃に専念するはずのエルザだが、先陣を切っている二人が強すぎる為、出番が回って来ていない。ラジールとパトリックの二人は地下8階に出現する強化ゾンビの集団も、難なく撃破していったのだ。
「ほほう、流石はパトリックと言ったところか! なかなかやるではないか!」
「いえ……俺なんて、まだまだですよ。ラジール王子の強さには驚嘆いたします」
ミュヘル第二王子を簡単に倒したパトリックではあるが、強化ゾンビを殲滅するスピードなどからも、自らの力が、ラジールに及んでいるかは甚だ疑問であった。
強化ゾンビの損傷具合からも、明らかにパワー面では負けている。速度もそこまでの差がないことを鑑みると、パトリックとはいえラジールを倒せるかは非常に怪しいと言えるだろう。
後ろに立つエルザの出番がない状態が続いている。パトリックは一方的なライバル心をラジール王子に向けていた。彼としても状況はわかっているが、エルザに対する恋慕などがないことをパトリックに告げるのは勿体ないと踏んでいるのだ。
久方ぶりに骨のある相手に出会えたのだから……パトリックの闘争心をより高めたいとラジール王子は考えていた。
「え……なによ、この状況……」
流石のエルザもパトリックが何に対して執着しているのかわかって来た。しかし、それを認めるのはとても恥ずかしい。ただでさえ、「私のために争わないで!」というキャラではないからだ。しかし、彼がラジール王子に対して敵意を剥き出しにする理由はそれしか考えられない。
「考えようによっては……私ってモテる?」
後方でほくそ笑んでしまうエルザ。パトリックやラジール王子が自分の取り合いをしていると言う光景はとても嬉しいと言える。ラジール王子に関しては、取り合いに参加していないことはわかっていたが、パトリックの気持ちは純粋に嬉しい。
そして、エルザの出番がないまま彼らは次の階層へと至る階段前に進むことに成功した。つまりは前人未到の領域だ。しかし、地下9階層に至る階段の前には、死神と思しき怪物の姿があった。この階層のボス的存在と言えるだろうか。
「パトリックよ。お主の気持ちは分かっているつもりだ」
「なんですか、急に……」
エルザへの想い……ラジールに図星を突かれたと思ったのか、彼は非常に動揺していた。
「クハハハハッ! 隠すな、少年よ! お主くらいの年齢であれば、それが自然だろう? どうだ、あの怪物をどちらが早く倒せるか、勝負と行かないか?」
パトリックの気持ちに気付きながらも、ラジール王子は全く加減する様子は見せていない。エルザの前で、自らの力を誇示してみろと言っているのだ。
「……わかりました、勝負と行きましょうか」
「ふははっ、そうでなくてはな!」
ラジールとパトリックの二人は、正体不明の死神を前にしても全く怯んでいる様子はない。むしろ、お互いの勝負の為の格好の獲物と捉えているまである。後方からはエルザが見守る中、二人の戦いが始まった。
「これ、未知の領域にも行けるんじゃないの?」
後方支援と攻撃に専念するはずのエルザだが、先陣を切っている二人が強すぎる為、出番が回って来ていない。ラジールとパトリックの二人は地下8階に出現する強化ゾンビの集団も、難なく撃破していったのだ。
「ほほう、流石はパトリックと言ったところか! なかなかやるではないか!」
「いえ……俺なんて、まだまだですよ。ラジール王子の強さには驚嘆いたします」
ミュヘル第二王子を簡単に倒したパトリックではあるが、強化ゾンビを殲滅するスピードなどからも、自らの力が、ラジールに及んでいるかは甚だ疑問であった。
強化ゾンビの損傷具合からも、明らかにパワー面では負けている。速度もそこまでの差がないことを鑑みると、パトリックとはいえラジールを倒せるかは非常に怪しいと言えるだろう。
後ろに立つエルザの出番がない状態が続いている。パトリックは一方的なライバル心をラジール王子に向けていた。彼としても状況はわかっているが、エルザに対する恋慕などがないことをパトリックに告げるのは勿体ないと踏んでいるのだ。
久方ぶりに骨のある相手に出会えたのだから……パトリックの闘争心をより高めたいとラジール王子は考えていた。
「え……なによ、この状況……」
流石のエルザもパトリックが何に対して執着しているのかわかって来た。しかし、それを認めるのはとても恥ずかしい。ただでさえ、「私のために争わないで!」というキャラではないからだ。しかし、彼がラジール王子に対して敵意を剥き出しにする理由はそれしか考えられない。
「考えようによっては……私ってモテる?」
後方でほくそ笑んでしまうエルザ。パトリックやラジール王子が自分の取り合いをしていると言う光景はとても嬉しいと言える。ラジール王子に関しては、取り合いに参加していないことはわかっていたが、パトリックの気持ちは純粋に嬉しい。
そして、エルザの出番がないまま彼らは次の階層へと至る階段前に進むことに成功した。つまりは前人未到の領域だ。しかし、地下9階層に至る階段の前には、死神と思しき怪物の姿があった。この階層のボス的存在と言えるだろうか。
「パトリックよ。お主の気持ちは分かっているつもりだ」
「なんですか、急に……」
エルザへの想い……ラジールに図星を突かれたと思ったのか、彼は非常に動揺していた。
「クハハハハッ! 隠すな、少年よ! お主くらいの年齢であれば、それが自然だろう? どうだ、あの怪物をどちらが早く倒せるか、勝負と行かないか?」
パトリックの気持ちに気付きながらも、ラジール王子は全く加減する様子は見せていない。エルザの前で、自らの力を誇示してみろと言っているのだ。
「……わかりました、勝負と行きましょうか」
「ふははっ、そうでなくてはな!」
ラジールとパトリックの二人は、正体不明の死神を前にしても全く怯んでいる様子はない。むしろ、お互いの勝負の為の格好の獲物と捉えているまである。後方からはエルザが見守る中、二人の戦いが始まった。
0
お気に入りに追加
632
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
「婚約破棄、ですね?」
だましだまし
恋愛
「君とは婚約破棄をする!」
「殿下、もう一度仰ってください」
「何度聞いても同じだ!婚約を破棄する!」
「婚約破棄、ですね?」
近頃流行りの物語にある婚約破棄騒動。
まさか私が受けるとは…。
でもしっかり聞きましたからね?
【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・
月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。
けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。
謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、
「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」
謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。
それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね――――
昨日、式を挙げた。
なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。
初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、
「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」
という声が聞こえた。
やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・
「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。
なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。
愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。
シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。
設定はふわっと。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる