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2話 パートナー その2
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「座るよ、いい?」
「えっ? あ、も、もちろんいいわよ!」
「? なんだかエルザ、焦ってない?」
普段のエルザの態度ではなかった為、パトリックは心配して彼女の顔を覗き込んだ。
「ちょっ、近いって、パトリック……!」
「あ、ご、ごめん……!」
パトリックも金髪の端整な顔立ちのエルザに近付きすぎたと悟り、顔を赤くして離れた。微妙な空気が二人の間に流れる。これもギルシャのせいだと、エルザは彼を睨んだ。
「なんだよ、なかなか良い雰囲気じゃねぇか。天気もいいし、デートでもしてきたらどうだ?」
「な、なに言ってんのよ! 第一、パトリックはここに来たばかりでしょ!」
「おっと、そうだったな。適当に酒でいいか?」
「今はハーブティーの方がいいですかね」
まだまだ陽は高い。エルザはお酒を飲んでいたが、パトリックは遠慮して、ハーブティーを頼んだ。
「ごめんね、パトリック。酒場に来てそうそうマスターの悪ふざけで」
「別に構わないよ、マスターのそれは今に始まったことじゃないしさ」
「そういえば、パトリックって、付き合い長いんだっけ?」
「色々とお世話になってるからね」
1週間前に、ギルシャからエルザのパートナー役として選ばれただけあって、二人の付き合いはそれなりに長いものであった。エルザはほぼ、1週間前からの知り合いだ。パトリックとギルシャの信頼関係は態度にも現れていた。
--------------------------
「あ、あのさエルザ……」
「なに?」
少し照れたように、パトリックがエルザに声を掛ける。
「せっかくと言ったら語弊があるけど……この後、暇なら装備を見に行かない?」
「それは構わないけど……」
……このタイミングでの誘いはデートに当たるのではないのか。照れたように発言する彼の態度からも、それは容易に理解できた。
「パトリック、念の為に聞くけど……デートの誘いしてるわけ?」
「………それは……」
「そこは、はっきり答えてほしいんだけど」
勢いや雰囲気から言ってしまったのは否めないところではあるが……パトリックは自分の気持ちを改めて考える。特に告白をしているわけでもないのに、彼の顔はさらに赤くなって行った。
「うん、その……デートの誘い……」
「あ、あそ……そんなに照れたように言わないでよね……!」
「あ、ごめん……!」
「いや、別にいいんだけど……」
カップル成立を思わせるテーブル席が完成していた。ギルシャは遠くのカウンターで、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。
「なんだよ、相性も良さそうじゃねぇか。へへへ、そうそう10代のガキなんてのは盛ってなんぼだぜ」
恋愛的になにか進展をしたわけではないが、この時のギルシャは未来まで予知していたようだ。
エルザが冒険者に転向して1週間。「出会い」は早くも訪れていた……。
「えっ? あ、も、もちろんいいわよ!」
「? なんだかエルザ、焦ってない?」
普段のエルザの態度ではなかった為、パトリックは心配して彼女の顔を覗き込んだ。
「ちょっ、近いって、パトリック……!」
「あ、ご、ごめん……!」
パトリックも金髪の端整な顔立ちのエルザに近付きすぎたと悟り、顔を赤くして離れた。微妙な空気が二人の間に流れる。これもギルシャのせいだと、エルザは彼を睨んだ。
「なんだよ、なかなか良い雰囲気じゃねぇか。天気もいいし、デートでもしてきたらどうだ?」
「な、なに言ってんのよ! 第一、パトリックはここに来たばかりでしょ!」
「おっと、そうだったな。適当に酒でいいか?」
「今はハーブティーの方がいいですかね」
まだまだ陽は高い。エルザはお酒を飲んでいたが、パトリックは遠慮して、ハーブティーを頼んだ。
「ごめんね、パトリック。酒場に来てそうそうマスターの悪ふざけで」
「別に構わないよ、マスターのそれは今に始まったことじゃないしさ」
「そういえば、パトリックって、付き合い長いんだっけ?」
「色々とお世話になってるからね」
1週間前に、ギルシャからエルザのパートナー役として選ばれただけあって、二人の付き合いはそれなりに長いものであった。エルザはほぼ、1週間前からの知り合いだ。パトリックとギルシャの信頼関係は態度にも現れていた。
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「あ、あのさエルザ……」
「なに?」
少し照れたように、パトリックがエルザに声を掛ける。
「せっかくと言ったら語弊があるけど……この後、暇なら装備を見に行かない?」
「それは構わないけど……」
……このタイミングでの誘いはデートに当たるのではないのか。照れたように発言する彼の態度からも、それは容易に理解できた。
「パトリック、念の為に聞くけど……デートの誘いしてるわけ?」
「………それは……」
「そこは、はっきり答えてほしいんだけど」
勢いや雰囲気から言ってしまったのは否めないところではあるが……パトリックは自分の気持ちを改めて考える。特に告白をしているわけでもないのに、彼の顔はさらに赤くなって行った。
「うん、その……デートの誘い……」
「あ、あそ……そんなに照れたように言わないでよね……!」
「あ、ごめん……!」
「いや、別にいいんだけど……」
カップル成立を思わせるテーブル席が完成していた。ギルシャは遠くのカウンターで、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。
「なんだよ、相性も良さそうじゃねぇか。へへへ、そうそう10代のガキなんてのは盛ってなんぼだぜ」
恋愛的になにか進展をしたわけではないが、この時のギルシャは未来まで予知していたようだ。
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