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12話 成敗
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いきなり飛び出て来た、隆也からの謝罪の言葉……それまで智司は人質ごっこを少し楽しんでいたが、隆也のその発言で、目的が180度変わってしまった。
「まだ、死んでもらっては困る……」
今まで虐げられていた怨みが、彼の中で増幅されていったのだ。魔神として転生した智司としても、信じられないことだ。なぜ、今さらになってこれ程の怒りが沸いてくるのか……。
智司は隆也に銃を向けている強盗集団に立ちはだかるように立ち上がった。他の客達はもちろん、強盗3人も驚いている。
「な、なんだ、てめぇ……?」
流石のリーダーの男もこの状況で立ち上がる客の姿に面食らっているようだ。上手く言葉で出て来ない。
「向こうに連れ去って、兵士として使役してもいいくらいに考えてたけど……残念だけど、隆也は死なせない」
「な、何言ってやがる……! この野郎、頭おかしいんじゃねぇのか……!?」
「いや、絶対おかしいですぜ!」
強盗集団は智司の異常行動に戸惑っているのか、銃撃に映らない。流石に一般の日本人とは感覚が違うのか……智司の強さを、少しだけ感じ取っているのかもしれない。
「さ、さとし……」
「や、ヤバイって……」
隆也、美由紀の二人は涙は枯れているようだが、クシャクシャの顔になりながら彼の名前を呼んだ。美人が台無しだ……美由紀の表情を見ながら、智司は思う。
ここまで来た以上、どのみち彼らが死ぬかどうかはわからない……運次第だろう。どのようなルートを辿ろうとも智司が大丈夫なことは明白だが。彼は心を決め、動き出した。
人間状態での智司の動き。強盗集団はほぼ、反応すらできない。リーダーと思しき男の銃を智司は奪うと同時、その腕をへし折った。
「ぎゃあ……!」
「ちっ……邪魔だ……」
リーダーの男はその場で智司に倒れこんできたのだ。一瞬の出来事ではあるが、智司の動きが少しの間止まってしまった。
バンッ! という大きな音が店内に広がる。パニックを起こした二人目の男が、無意識の内に銃弾を放ったのだ。一発は智司に、そしてもう一発が美由紀に命中してしまった。
「美由紀!」
「あっ……! ごぼ……!」
致命傷なのか、腹の辺りを押さえながら彼女は倒れこんでしまった。無傷の智司は二人目の男を後方へと蹴り飛ばす。壁に激突し、二人目の男は動かなくなった。リーダーの男も意識を失っているようだ。最後に残った三人目の男は……。
「お迎えに上がりました」
「いいタイミングだ、ハズキ」
「ありがとうございます」
あらぬ方向に関節が曲がっており、ハズキの傍で倒れていたのだ。彼女が店内に侵入し、三人目の男を粉砕したのだろう。その手には、男が持っていたであろう銃があった。
「この武器は、あちらの世界では珍しいかもしれません。改造すれば、兵士の遠距離武器として使えるかと」
「そっかわかったよ。それより、美由紀が致命傷だ。店の奥へ行かないか?」
「畏まりました」
強盗集団は鎮圧したが、周囲の客たちは放心状態でなにが起こったのか理解していない。下手をすると、智司とハズキも強盗集団の一員で仲間割れをしたのではないかと疑われる状況だ。もうすぐ警官隊も乱入してくるだろう。
そして、美由紀が死にかけであることを考慮すると智司の選択肢は一つだった。店の奥からゲートを開き館に戻る……警官隊に智司の素性がバレても面倒だからである。
ハズキは言葉を交わさなくとも事態を察知したのか、智司の発言に同調していた。
「まだ、死んでもらっては困る……」
今まで虐げられていた怨みが、彼の中で増幅されていったのだ。魔神として転生した智司としても、信じられないことだ。なぜ、今さらになってこれ程の怒りが沸いてくるのか……。
智司は隆也に銃を向けている強盗集団に立ちはだかるように立ち上がった。他の客達はもちろん、強盗3人も驚いている。
「な、なんだ、てめぇ……?」
流石のリーダーの男もこの状況で立ち上がる客の姿に面食らっているようだ。上手く言葉で出て来ない。
「向こうに連れ去って、兵士として使役してもいいくらいに考えてたけど……残念だけど、隆也は死なせない」
「な、何言ってやがる……! この野郎、頭おかしいんじゃねぇのか……!?」
「いや、絶対おかしいですぜ!」
強盗集団は智司の異常行動に戸惑っているのか、銃撃に映らない。流石に一般の日本人とは感覚が違うのか……智司の強さを、少しだけ感じ取っているのかもしれない。
「さ、さとし……」
「や、ヤバイって……」
隆也、美由紀の二人は涙は枯れているようだが、クシャクシャの顔になりながら彼の名前を呼んだ。美人が台無しだ……美由紀の表情を見ながら、智司は思う。
ここまで来た以上、どのみち彼らが死ぬかどうかはわからない……運次第だろう。どのようなルートを辿ろうとも智司が大丈夫なことは明白だが。彼は心を決め、動き出した。
人間状態での智司の動き。強盗集団はほぼ、反応すらできない。リーダーと思しき男の銃を智司は奪うと同時、その腕をへし折った。
「ぎゃあ……!」
「ちっ……邪魔だ……」
リーダーの男はその場で智司に倒れこんできたのだ。一瞬の出来事ではあるが、智司の動きが少しの間止まってしまった。
バンッ! という大きな音が店内に広がる。パニックを起こした二人目の男が、無意識の内に銃弾を放ったのだ。一発は智司に、そしてもう一発が美由紀に命中してしまった。
「美由紀!」
「あっ……! ごぼ……!」
致命傷なのか、腹の辺りを押さえながら彼女は倒れこんでしまった。無傷の智司は二人目の男を後方へと蹴り飛ばす。壁に激突し、二人目の男は動かなくなった。リーダーの男も意識を失っているようだ。最後に残った三人目の男は……。
「お迎えに上がりました」
「いいタイミングだ、ハズキ」
「ありがとうございます」
あらぬ方向に関節が曲がっており、ハズキの傍で倒れていたのだ。彼女が店内に侵入し、三人目の男を粉砕したのだろう。その手には、男が持っていたであろう銃があった。
「この武器は、あちらの世界では珍しいかもしれません。改造すれば、兵士の遠距離武器として使えるかと」
「そっかわかったよ。それより、美由紀が致命傷だ。店の奥へ行かないか?」
「畏まりました」
強盗集団は鎮圧したが、周囲の客たちは放心状態でなにが起こったのか理解していない。下手をすると、智司とハズキも強盗集団の一員で仲間割れをしたのではないかと疑われる状況だ。もうすぐ警官隊も乱入してくるだろう。
そして、美由紀が死にかけであることを考慮すると智司の選択肢は一つだった。店の奥からゲートを開き館に戻る……警官隊に智司の素性がバレても面倒だからである。
ハズキは言葉を交わさなくとも事態を察知したのか、智司の発言に同調していた。
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