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28話 教育的指導 その2

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「さあ、ジェーン。一切合切、吐いてもらうわよ?」

「こ、今度はなに……?」


 先ほど、先輩と言う名の同僚のメイドにミカエル王子とのことを聞かれたばかりのジェーン。如何わしいお店では特に何もなかったと回答し、解放されるかと思いきや……今度は別の質問責めにあっていた。

「ふふふ……ずばり」

「勿体ぶらないで、早く言って」

 溜息をつきながらジェーンは言った。自分が話せることなら、なんでも話すつもりだ。彼女も面倒くさくなっていた。早く解放されたいのだ。


「ファリスメイド長とのことよ」

「……ファリスメイド長?」

 意外な人物の名前が出て来た。まさかファリスの名前が挙がるとは……。

「一応、言っておくけど、ファリスメイド長とも変な関係とかはないわよ?」

「えっ、ないの?」

「ないわよ」

 ジェーンの瞳の色はさきほどのミカエル王子の時と同じだ。真実を淡々と伝えている。これ以上追及しても何も出ないと判断されたのか、ようやく質問責めから解放された。

「なぁ~んだ、ミカエル王子と謎多きファリスメイド長。どっちかとは一線を越えたかと思っていたのに」

「あのね……それぞれ性別が違うじゃない。どちらかと一線を越えるって……その二人を並べる時点でとんでもないことよ……」

 ミカエル王子とであればともかく、ファリスメイド長の場合は色々と不味い。デルタ王国は女性同士の結婚を許す法律などもないのだから。

「じゃあさ、ジェーン。本当に何もなかったのよね?」

「ええ……もちろん」

 彼女たちが期待しているようなことは何もない。しかし、隣国のアーロン王国の情勢についてはミカエルから聞いている。自分がこうして楽しくしている間にも、あちらの国は傾いているのだろうか。彼女が無意識に望んでいたこととはいえ、心苦しいものでもあった。


「ごめんなさい。ちょっと用事ができたわ、ファリスメイド長って今は部屋にいらっしゃるかしら?」

「確か、少し前までは居たと思うわ」

「ありがと」

 ジェーンはお礼を言ってファリスの私室へと向かった。黄色い歓声などは聞こえてこない。彼女が真剣な表情になっていたので、みんなは空気を読んだのだ。

「メイド長なら、ミカエルの知らないこととかも教えてくれないかな?」

 ジェーンと同じく、内政などの仕事経験のあるファリス。彼女であれば、さらに詳しい情報が聞けるという期待感があった。

 祖国をわざと追放されたジェーンではあるが、情報として現状をしっかりと把握しておきたい。そのような考えで彼女はファリスの私室の扉を叩いた。
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