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27話 教育的指導 その1

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「ジェーン、こっちこっち」

「ええ、今行くわ」


 宮殿に戻り、いつものメイドとしての生活をしていた矢先……。彼女は他の仲間達に手招きをされ、物陰に呼ばれる事態に巡り合った。先輩たちの教育的指導の始まりである……。

「ジェーン、あんたって物覚えいいし、頼りになるわよね」

「そうかしら? そう言ってもらえるとありがたいけれど……」

 少し照れながら視線を逸らすジェーン。同僚や先輩たちにそのように言われるのは嬉しいことだ。彼女は決して偉ぶることはないが、誇らしさは持っていた。


「でも、私達の方が先輩なわけ……つまり、そこんところを勘違いしてほしくないの」

「は、はあ……?」

 いつも仲良く話しているメイドたちだ。今日に限って態度がやけに違う。さすがのジェーンも意味がわからずに戸惑っていた。

「ジェーンは包み隠さずに話す義務があると思うの。なんせ、私達の方が先輩なんだから。後輩にプライベートなんてないのよ」

「えっ? なにを言ってるの?」

 話が妙な方向へと進んでいる。ジェーンはとても嫌な予感がした。ここは退散した方が良さそうだと本能が告げている……しかし、先輩という名の同僚のメイド達は、それを許してくれなかった。


「逃がすわけないでしょ? ほら、正直に言って」

「な、なにを……?」

「決まってるでしょ? ミカエル王子とどこまでいったのよ!」

「……はい?」

 ジェーンは思いがけない人物の名前が出たことで、正気に戻れた気がした。

「ミカエル王子がどうしたの……?」

「だ・か・ら! この前、如何わしいお店にミカエル王子と入ったんでしょ? どうなったの?」

 話が錯綜している……ファリスメイド長の仕業だろうか……? 真偽の方はわからないが、事実ではないところも含まれている。ジェーンは恥ずかしくなるよりも溜息が先にこぼれて来た。

「出所がよくわからないけど……なにもないわよ。少なくとも、あなた達が期待しているようなことはね」

「え、本当に……?」

「ええ」

 ジェーンの真っすぐな視線は、それが真実であると伝えていた。彼女が下手に取り乱したりすれば、さらに追及してきたであろう状態。はっきりと真実を伝えることで、彼女はそれを回避したのだ。もっとも、追及されたからと言って何かがあったわけでもないが……。

「そっか~~つまらないわね。それじゃあ、もう一つの真実も答えてもらおうかしら?」

「もう一つの真実……?」


 そちらは全く心当たりがない。同僚たちはさらに怪しく笑っているので、なんらかの話題はあるのだろうが……。ジェーンはその後、適当な客間へと通された。同僚たちの追及はまだまだ続く。
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