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11話 少女はデートしたい

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「蓮くん!デートしよ!」
「え?」
 無事に文化祭一日目を終えた蓮は二日目スタートと同時に花梨に捕まった。
「お前、そんな大声でデートとか言ったら不味いだろ!人気アイドルなんだろ!?」
「変装してるし大丈夫だよ。それに私はスキャンダルになったらアイドルより蓮くんを取るよ?」
 笑顔で恐ろしい事を言う。もし本当にスキャンダルになって花梨がアイドルを辞めたら花梨にアイドルを辞めさせた男としてファンに殺されたりしないだろうか。と一抹の不安が頭をよぎる。
「というか俺そろそろ出し物の店番の時間なんだよ。割と今日店番の時間長いし」
 店番を決める時間に蓮は居眠りをしてしまった。その結果目が覚めた時には他の人よりも多い時間が店番に取られていた。
「全くー、しょうがねぇなぁぁ!どーしてもお前が花梨とデートしたいっていうんなら大!親!友!の俺が手を貸してやるぜ?」
「という訳でデートは出来ん。冬三辺りと楽しんでくれ」
「ガン無視!?おい蓮!俺が手伝ってやるって言ってんだろ!」
 何もそんな事は頼んでいない。確かに文化祭で出し物の店番というのも嫌だが今花梨と二人きりになるのは。
「じゃあお願いね夏野先輩!」
「おう!蓮は今度ラーメン奢れよ!」
「え?あっ!ちょっと!」
 少し考え事をしている間に既に交渉は成立していた。交渉の一番の重要人物は一歳その交渉に参加していなかったが。
「さ!文化祭デートを楽しもっ!」
「あ、ああ」
「安心して、文化祭が終わるまでは告白なんてしないから。精一杯楽しもう?」
 どうやら心を読まれていた様だ。それから二人は様々な出し物を巡った。
 お化け屋敷
「恨めしやー」
「わぁ!びっくりした」
「・・・」
 驚いてはいたもののリアクションの薄い花梨と驚きすらしない蓮を見て幽霊はそのまま控室と思われるに戻っていく。なんだか申し訳ない事をした。
「蓮くんってば反応なさすぎじゃない?」
「花梨だってそんなに怖がってないじゃないか。怖いの平気なのか?」
「うーん。平気じゃないけど、怖がりでもないのかな」
 二人はそのままお化け屋敷を進んでいく。
「蓮くんは怖がりの私の方が好き?きゃーって抱きついて欲しい?」
「蝉丸なら嬉しいと思うが、俺はどうだろうな。正直分からない」
「そっかー」
 花梨が少しだけ残念そうに呟く。そこに、
「ガァァァァ!!」
「きゃぁぁぁぁあ!」
 壁を突き破ってゾンビが現れた。それも本格的なメイクをした本物そっくりのゾンビだ。
「いや、さっきのはびっくりしたな。大丈夫か花梨?」
「あ、えっと、わざとじゃないんだよ?」
 花梨の言葉に状況を確認してみる。花梨は今蓮に抱きついている状態だ。本当に驚いていたから責めるつもりはない。しかし蓮の体になにか柔らかいものが当たっている。
「き、気にするな。ほら、出口だぞ」
「う、うん」
 二人は少し頬を染めたままお化け屋敷を出た。
 (早く結婚しろよ) ゾンビはそう思った。
 メイド喫茶
「おかえりなさいませーご主人様!お嬢様!」
「へーぇ。女の子と、しかも国民的アイドルとデートしてるのにこんなところに来ちゃうんだ?」
「違う!いや違くないけど。蝉丸がここのメロンパフェがめちゃくちゃ美味いって言ってたんだよ!花梨メロン好きだろ?」
「れ、蓮くん!」
 蓮が少し頬を赤くしながら答えると花梨は少し嬉し涙を浮かべる。
「蓮くん!大好き!!」
「え!?告白はまだって言ったじゃねえか!」
 花梨は嬉しさのあまり席を立って蓮に抱きつく。蓮も驚きながらも回避したりはしない。
「末永く爆発して下さいね!ご主人様!お嬢様!」
 占い屋
「見える。見えるぞ。お主らの相性は六九%じゃ」
「それって高いのか?低いのか?」
「知らん。ワシ相性占い初めてやった」
 とんがり帽子を被って長い白髪のカツラを被りメイクで老婆を演じている生徒がぶっちゃける。せめて高いって言えよそこは。
「大丈夫!例え相性が悪かったとしてもそんな相性なんて私がぶっ壊してあげる!」
「おお!その粋じゃ!」
「占いってなんだ?」
 忍者屋敷?
「見てみて蓮くん!クノイチ!」
 どうやら忍者屋敷に入る前には専用の服に着替えなくてはいけないらしく蓮と花梨は忍者の服装へと着替えていた。
「これ、客一人一人に用意してるのか?めちゃくちゃ金かかってんじゃん」
「クラスの一人が強く希望したらしいよ。この服もその子が自腹切ったって」
「どんだけガチってんだよ」
 そして忍者屋敷へ突入。
「ようこそ忍者屋敷へ。拙者は風磨太郎と申すものです。今からあなた達を立派な忍びにしてあげましょう」
「ど、どうも」
「よろしくお願いします!」
 どうやらここでは忍者になる為の特訓をする、という設定の出し物の様だ。
「まずは手裏剣!的に手裏剣を当てて下さい!すべて当たらないと訓練は終わりませんよ!」
「ガチが過ぎる!!」
 忍者屋敷をクリアする頃には蓮は体力気力共にゼロに近かった。
「はぁ、はぁ、はぁ。何なんだよあそこはよ」
「大変だったね。はい水」
 花梨から渡された水を受け取ると即座に口に流し込む。
「はぁ、生き返る」
「さて、この後どうしよっか?まだ三時だしもう少し時間あるよ」
「まだそんな時間なのか。かなり遊んだからもっと経ってるもんだと」
 蓮も時間を確認するが確かに時刻は三時。しかしもう一通り文化祭は回ってしまった。残るは普通の文化祭には無さそうな出し物ばかりだ。
「じゃあ」
 蓮が向かったのは部室だった。そこには出し物など何もなくいつもの空気が流れている。
「やっぱここは落ち着くな」
「うん。確かにね」
 それから暫く二人は他愛無い会話をした。文化祭準備中の面白い出来事や最近読んだ漫画の話など。
「あはっ!みーつけたぁー」
 しかし、平凡な時間は突如響いた女の声がにかき消された。
「は?」
 その女の顔を見た蓮はどんどん顔色が悪くなり、体が静かに震える。そんな事にはお構いなく女は蓮に近づいてくる。
「久しぶりぃ。元気してたぁ?」
「なんで、なんでここにいるんだ!八乙女!」
 茶色の長い髪を揺らしながら八乙女と呼ばれた化粧の濃い女は口元を緩めながら蓮に近づいてくる。
「待って下さい!」
 そして蓮の目の前に立つ、その前に花梨が二人の間に入った。
「だぁれ?」
「私は桜沢花梨。蓮くんの幼馴染です」
「へぇー。あなたが自己紹介するなら私も自己紹介しないとねぇー」
 八乙女はニヤリと笑って自己紹介を始める。
「はじめまして桜沢ちゃん、私は八乙女菜乃。れんの元カノでぇーす」
「蓮くんの、元カノ!?」
 蓮の元カノ。詳しいことは知らないが大まかな情報なら寧々に教えてもらった。昔は女性不信ではなかった蓮が何故女性不審になってしまったのか。その原因は、中学生の頃に付き合っていた彼女だと。
「蓮くんっ」
 八乙女の言っている事が嘘じゃないことは蓮の様子を見れば分かる。こんなに苦しそうな蓮を見たことはないという程苦しそうだ。
「その元!カノさんが蓮くんに何の用ですか?」
「んー。ここで話してもいいんだけどぉ、場所を変えない?もっとムードがある所がいいなぁ」
 わざと元を強調してみたが八乙女は何も反応しない。どうするべきか。確かに蓮の憩いの場所であるこの部室を過去のトラウマを持つ女との話し合いの場所にしたくない。しかし、この女を蓮に近づけるだけで危険な感覚がする。
「菜乃!てめぇ何しに来やがった!!」
「夏野先輩!?」
 そんな悩みと戦っている間に蝉丸が扉を勢いよく開け放ち、部室へ転がり込んできた。
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