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それぞれの作戦
しおりを挟む「くそ!対策がない!なんとかしてあいつに攻撃できないのか!?」
勇者の作戦により仲間たちと分断された悠馬は偶然一緒に飛ばされた恭平と共に弓の勇者の弓塚葵と戦っているのだが。
「俺らの周りをでけぇ壁で覆われて弓の勇者はその壁の中から弓を打ってくる!しかも俺らは防壁のせいで壁の中に入れないとかどうゆうことだよ!」
「壁 違う 正確には 壁に空いた穴から」
「おんなじことだ!正々堂々俺と戦いやがれ!」
恭平が葵に向かって叫ぶと葵は何も返答せずまた弓を構えた。
「兄貴。俺がなんとかしてみる。兄貴にも手伝って欲しいんだけど」
「作戦があるんだな。いいぜ!お前にかけるぜ悠馬!」
悠馬と恭平がなにやら二人で内緒話を始める。つまり作戦を伝えているのだろう。
「させない 暴風弓」
葵が弓を構えて放つ。そしてその弓矢は悠馬と恭平に近づくと緑色に光って暴風を引き起こした。
「ぐああ!」
「くっ!」
「あれ? 大したことない?」
葵は疑問に思いながらももう一度弓を構える。いくら作戦があるといってもここは白が作った防壁に守られている。つまり白かそれ以上の力ではないと破壊は出来ないのだ。
「大人しく死ね 爆裂弓!」
「行くぞ兄貴!」
「おう!」
葵の放った弓矢を悠馬が水で覆う。そして爆裂弓が爆破するが、直前で水で覆われていたのでそれ程の威力にはならない。しかし構わない。ここまま数で押し切れば、と葵が考えながら弓を構えると
「うおお!勇者長!?なんでここに!?」
恭平が訳の分からない事を叫び出した。
「勇者長!?」
葵はその言葉に反応すると恭平の方を見る。が、そこにいたのは当然恭平だけだった。
「うおおおお!」
葵が恭平を見ている間に悠馬は壁をよじ登っていた。そして全力で防壁を殴った。
「・・? 何してるの? お前の力では 無理」
「そうだな。俺の力だけじゃ無理だ。だが、こうすればっ!どうだ!」
悠馬がそう言うと悠馬の手に葵の目の前にある防壁と同じものか現れる。
「何」
「目には目を、歯には歯を、そして防壁には、防壁だ!!」
そう。魔王の悠馬は相手に触れる事によって相手の能力を奪う事が出来る。それは人間以外でも可能なのだ。
「しかし! これは白様の光の防壁 お前の力では白様の防壁は 破れない」
「だから、俺一人じゃないだろ?」
「三つ首の大盾!悠馬の元へいけぇ!!」
悠馬が防壁に両手で作った防壁をぶつけていると後ろから恭平の盾が近づいてきて悠馬を押した。
「ばかな 無駄だ 無駄」
葵が呟くと白の防壁にヒビが入る。
「!」
「いっけぇぇぇ!!」
ここぞとばかりに悠馬が全力で防壁を作り白の防壁を破った。
「な、な な な な」
「よう、弓塚とりあえずさっきのお礼だ。受け取れぇ!」
悠馬は足に風を纏って自分の速度を上げるとそのまま葵に殴りかかった。
「ぐっ!」
そして葵は軽い悲鳴を上げて壁の中の壁にぶつかる。思ったよりも軽い手応え。これは上手く殴れなかったと言うわけでは無く、単純に葵の体重が思ったより軽かったのだ。
「軽い。そんで中は案外狭いんだな。ここなら倒せそうだ」
「ぐ、舐めるな 魔王!」
葵が倒れながら弓を構える。それを見た悠馬も魔王剣を構える。一度ここに入ったら後は確実に悠馬が有利ではあるが追い出されては面倒だ。なので壁に水晶壁を作る準備をしながら葵の弓を見る。そして葵は弓を放つ時にこう言った。
「転送弓」
そう言って葵が弓を放つ。すると弓矢を放ったと同時に葵の姿が消える。飛んできた弓矢は物凄く普通の弓矢だったので簡単に避ける事ができたが悠馬は警戒し過ぎていてその後少しその場に立ち尽くした。
「あの野郎逃げたのかよ!」
悠馬は一人で穴の中で叫んだ。
◇
「あら、破られちゃったわね。流石悠馬君」
葵の様子を遠くから見ていた白は感心した様に呟く。
「まあ一個くらい破壊されても大丈夫ね。問題は葵が悠馬君に触れられたということだけど、大丈夫かしら」
白が少し考え込むと何かを閃いた様に手を叩いた。
「念には念をかけておきましょう。それで悠馬君を倒せるかは分からないけど、まあないよりはいいでしょう。楽しみだわー!悠馬君が私の物になるのが」
白は唇を少し舐めると嬉しそうにとある道具の準備を始めた。
◇
「さて、どこに逃げたんだ?サッパリ分からん」
悠馬はひとまず穴から抜けて恭平と共に周りを見渡す。しかし穴の中は暗くて目視できない。
「なあ、これまずいんじゃないのか?多分これはどっかに転送された感じであいつだけ先に戻ったとすると俺ら帰れなくね」
「はっ!そこまでは考えてなかった。どうしよ兄貴!積んだ!」
「いや、なんとかなるだろ!あいつが逃げたって事は俺らも」
「逃げていない」
恭平がなんとかしようとあたふたしていると背後から緑色の弓矢と赤色の弓矢が飛んできた。
「ぐはぁぁ!」
「兄貴!くそ、何処だ」
悠馬が弓の飛んできた方向に目を向けると、無数の穴の中の一つに弓を構える葵を見つけた。
「おいおい、まさかとは思うがそのめちゃくちゃある穴の全てに移動出来る訳じゃないよな」
悠馬が問いかけると葵が連発で転送弓を放ち様々な場所に空いている穴を移動した。
「無理ゲー!!」
「なら諦める お前は 勇者になれる 気に食わないけど」
「無理ゲーだからって勇者になるのは御免だね。あ、自我を残したままってんなら考えてもいいぜ」
「不可能 勇者になるなら 白様の所有物 お前は勇者であり白様のおもちゃになる」
さっきと言っている事が違う。所有物からおもちゃへとランクが下がって、いるのか?分からないが、とにかく勇者になる気などない。
「まあ仕方ない。じゃあ降参しよう。白の所へ連れて行ってくれ」
「は? どういう風の吹き回し まさか」
葵が警戒する様に周りを見る。先程はこの様な下らない手段で一撃入れられたので恭平が不意を突いてくるかもと思ったのだろうが。しかし恭平はぐったりと倒れていた。
「残念ながら兄貴はそこで延びてる。行くのは俺だ!転送弓!」
悠馬が作り出した転送弓を放つと葵と同じ穴の中へと転送された。
「何!? 転送弓を 奪った!?」
「そういうことだ、覚悟しろ!水刃刃!」
「っ!ならば!」
葵が迫りくる水の刃を前にして弓を構える。そして当たる寸前で矢を放った。
「転送弓」
「うん!なんとなく分かってた!転送弓!」
葵を追う様に悠馬も転送弓を放つ。しかし
「ここには弓塚がいない。外したか」
「爆裂弓」
「ぐはぁぁ!」
突然遠距離からの狙撃音と恭平の悲鳴が聞こえた。悠馬が振り返ると遠くの穴に葵がいるのがギリギリ分かる。どうやら悠馬が葵と違う穴に移動してしまった為、葵が無防備の恭平に矢を放ったようだ。
「やっべ!風よ!」
悠馬が風を纏って急いで恭平の元へ行き二発目の弓矢を弾き飛ばした。
「今度は 転送弓 使わない? 私はここ」
「分かってて言ってんだろ。ここで俺がいなくなったらまた兄貴を狙う。なら俺はここから動けないって事だ」
「そう なら 分裂弓」
葵が弓を放つと一本だった弓矢が空中に浮いた状態で二本に、二本だった弓矢が四本になっていく。
「この数の弓矢 耐えられる?」
「甘く見るなよ。この数が何だよ!黒炎の防壁!」
悠馬が黒い炎で前方に壁を作る。そして葵の放った分裂弓は全て黒い炎に触れると焼け落ちた。
「これならいける」
「転送弓 分裂弓」
「へ!?次はこっちか!」
葵が四方から分裂弓を放つ。悠馬もそれを大方焼き落としているがこのままでは消耗戦となる。消耗戦となれば恐らく悠馬は負ける。
「くっそ。何かいい方法はないか。何か、一発逆転出来る一手が!」
「魔王 次は西から打つ 嘘はつかない」
「は?いや信じれるかよ」
「信じるか信じないかは 自由」
そう言って葵は西に転送弓を放ちそこから弓を打つ。しかし。
「おい!嘘つくな!そっち東だろ!?」
「西」
悠馬は逆方向に壁を作り弓に掠っていた。
「はあ?やっぱ信用出来ん!」
(やはり、変わっていない)
悠馬と葵は中学時代共に虐められていたので二人でパシリになる事もあった。そしてその時、葵は気がついたのだ。 悠馬が方向音痴であることを。
「次は南」
「こっちか!いや、信用出来ないんだから全方位警戒して、でも黒炎の防壁は最小限に」
そして葵は南から暴風弓を打つ。
「くそ!やっぱり嘘か!」
葵は無表情の顔を少しだけ動かして「どうして方向が分からない?」と呟いた。
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