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ゲームと奇襲

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「ゲームってたまに矛盾が生じますよね」
おままごと事件後のゆったりとした時間。遥香がスマホらしきものとにらめっこしながら呟いた。
「なになに。どうしたのよ急に」
悠馬がバスタオルで頭を拭きながら遥香にたずねる。
「いや、ゲームってのは暇な時間を楽しく過ごす為に作られたものっすよね?それなのになんで自分はゲームからストレスをうけてるんっすか?」
「いや、ゲームってそういうもんだろ?」
さっきから風呂も入らずに何をしているのかと思えば、ずっとゲームをしていたらしい。
「メイさんがいるときはメイさんがやりたいっていうから自分出来ないんですよね。で、メイさん今桜さんとお風呂っすから今なら堂々とできるんすよ」
「そうか。いや俺何も聞いてないんだけど?」
「なんか聞いてきそうだったので」
遥香ヘラヘラと笑う。勇者が水の勇者の下についていた頃よりも自分の感情を表に出しているのを改めて感じて少し安心した顔をする。
「おーい遥香ー!お風呂上がったから一緒にゲームしよー!」
「こらメイ!まだ体びしょびしょですよ!」
メイがお風呂から出でくる。メイはびしょびしょの体にバスタオル一枚という格好で遥香に飛び込んだ。桜はまだ着替え終わっていないのか姿はなかった。
「メイ。遥香ゲーム中なんだし突っ込むのはよくないぞ。いやどんな時でも突っ込むのは良くない」
「分かった!じゃあゲームしよ!」
「ゲームは一日三時間だぞ」
「はーい」
悠馬がジグス(ジキルグレートスペシャル)で作ったゲーム機を渡す。そして浴場から
「そこは一時間じゃないんですか!?」
という声が聞こえたが一時間では足りないだろう。多分。
「そうえば遥香もメイの言うこと全部聞かなくてもいいんだぞ?」
「はは。大丈夫っすよ。自分はメイさんのしもべっすからね!」
全然大丈夫じゃないことを言いながら遥香とメイはゲームを始めた。
  ◇
「夜ー!!!!」
遥香は皆が寝静まった静かな魔導車ないで叫んだ。
「夜。夜はいい。メイさんも寝静まっているからいくらでもゲームができるっす」
そういうと遥香は早速ゲームの電源スイッチを入れる。
そしてゲームをすること三時間。時刻にして午前二時。遥香はゲームの電源スイッチを切る。人間は眠って二時間くらいが一番深い眠りにあるらしい。つまり悠馬と桜の眠りが一番深いこの時間なら深夜にゲームをしていたことをバレずに眠りにつけるのである。まあ絶対この時間じゃないといけないわけじゃないが(笑笑)
「さあ寝るっす」
遥香があくびをしながら布団に入ろうとした瞬間。
「!!」
遥香は背筋に悪いものを感じた。風で編まれた針が凄まじいスピードで悠馬の心臓を狙っていて飛んできていたのだ。
「悠馬さん!!」
遥香はとっさに手裏剣を出すと悠馬の真上に向かって投げた。そして針と手裏剣が悠馬の真上でぶつかり合い地面に刺さった。
「うおう!何?何なの!?」
「敵襲です!桜さんと恭平さん起こして下さいっす!」
遥香が手裏剣を森に投げるとすぐ様魔導車を出た。
「まだ起きているなんて、健康に悪いわよお嬢さん」
「あいにくこっちは忍者でね。夜更かしくらいじゃ健康は崩さないっすよ」
深夜二時の森の中。風の勇者とくノ一の殺し合いが始まる。
「桜!兄貴!起きろ!」
「なんだよこんな時間に」
「どうしたんでふか?ムラムラしてるんれふか?」
「違うし!あと夜弱すぎ!先行くから早くきてよ!」
そう言うと悠馬は遥香を追って森に出た。
「な、なんだこれ!」
しかし悠馬は直ぐに足を止めた。なぜなら魔導車の周りには桑などの武器を持った村人達が待ち構えていた。
「なっ!どうなってんだこりゃ!」
「悠馬さんが村を壊したのそんなに怒ってたんですか!?」
「絶対違うだろ」
悠馬はそう言うと魔王剣を取り出した。
「パパ。殺しちゃダメだよ?この人達は洗脳されてるだけだから」
「メイ!桜、メイまで起こしたのか!?」
「起こしてませんよ!」
するとメイは手を広げて
「あんなにうるさくしてたら誰でも起きるよ?」
と呆れた様に言った。
「それにパパは遥香を助けに行った方がいいでしょ。ここは私達に任せて」
「いやお前が仕切るなよ。お前は戦わないだろうが」
「は?メイ戦わないなんて言ってないしっ!」
メイが恭平の腹を全力で蹴る。そして恭平ミサイルが村人にクリーンヒットした。
「ほらパパ。行って」
「悪い。頼んだぞメイ!桜!」
悠馬が遥香を追って姿を消した。
「おい悠馬。俺の名前も呼べ」
  ◇
「どうしたの?悠馬君じゃないと勇者とは渡り合えないのかかしら!?」
「くっ!」
美樹が風で編まれた鞭で遥香のクナイを弾く。と同時に風で玉を作り出し遥香のお腹へ当てた。
「ぐふっ!」
遥香が後方に吹き飛ばされるとその体が優しく止まる。
「来たわね 悠馬君」
「ああ。あれくらいじゃ死んではいないと思ってたが一日もせず襲ってくるとはな」
「ええ。思わぬ来客があってね。早く貴方を殺さなきゃいけないの!!」
美樹が風のミサイルを五発飛ばす。が悠馬はそのミサイルを華麗にかわす。
「まだよ!次の一撃はかわしきれるかしら!」
先程より大きなミサイル。しかし悠馬は間一髪でかわす。
「危ねぇな。もうちょい大きいと当たってたな」
するとミサイルは悠馬の方を向いて追尾を開始した。
「ホーミング!?」
悠馬は咄嗟に腕をクロスさせミサイルをうけた。
「ぐっ!」
「さあまだまだあるわよ。全部かわせるかしら?」
「じゃあかわさなきゃいいんだな」
悠馬の両手に炎と水が作り出された。悠馬はそれを合わせると水蒸気爆発を起こした。
「な、水蒸気爆発でミサイルを打ち消すなんて」
「こっちの番だ。水晶壁!」
水晶壁は本来なら防御に使う技だったが悠馬はそれを細くして美樹の後ろから殴った。
「くっ!これは水の能力」
「その通りだ!」
悠馬は隙をついて美樹に殴りかかったが美樹は体に風を纏い悠馬を吹き飛ばす。
「風絶神居ってやつか」
「ええ。弱い私を守ってくれる最強の防御。これで私の能力は奪えないでしょう?」
「情報が早いな。真怜からの情報か」
そう。悠馬はこれまでに炎の勇者、赤石紅と水の勇者、水原真怜を倒してこの能力を奪っている。その能力を奪う鍵は相手に触れること。
「そうよ。これで貴方は風を使えない。くらいなさい!」
美樹がカマイタチを作り出す。
だが悠馬はカマイタチに正面から突っ込んだ。
「な!?死にたいの?」
「バカ言え」
「うおらぁぁぁ!」
遥香がカマイタチに爆弾を投げる。その爆弾から凄まじい熱量の爆発がおきた。
「く!でも私の風絶神居は敗れっ!」
美樹は息を詰まらせた。だがそれも仕方ないだろう。自分が最強の防御とまでいった風絶神居が消えかかっていたからだ。
「何故!何故風が私から離れていくの!?」
「風は気圧の低い方へと流れる。さっきの爆弾は俺が作った新作だ。その爆発で空気を温めて上昇気流を作り出したんだ」
悠馬は自分の腕に炎を纏い美樹に殴りかかる。
「お前の能力!貰ったあ!!」
そして悠馬の拳が美樹にあた らなかった。
「えっ」
突然悠馬の横腹に光線が飛んできて悠馬を飛ばし遥香に突撃する様な形になった。
「あ!白様!!!」
美樹が希望に満ちた目で光線が飛んできた方を見た。
そこには白く長い髪を魔女の様な帽子で隠し、胸元と下の部分しか隠せない服を着た女性が杖を構えていた。

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