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37.知能レベルが同じくらい
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「お嬢ちゃんには懐いてるみたいだな」
「知能レベルが同じくらいだからでしょうか」
「……変わったお嬢ちゃんだな」
フェイの言葉に、咄嗟に言い訳を捻り出した。
……結果としてより訝しまれている気がする。
子どもサイドから言うようなことではなかったかもしれない。
「定期訪問にしては早いんじゃない」
「いやぁ。実は大魔導士様にお会いしたいって方が来てまして。ついでに毎月のを済ませておこうって魂胆ですよ」
「は?」
ノアが怪訝そうな声を出す。
フェイがダイニングの入り口を振り返ると、おそるおそるといった様子で、一人の女性がこちらを覗き込んでいるのが視界に入った。
年齢はノアよりいくらか若い程度の、亜麻色の長い髪をした、いいところのお嬢さんを思わせる服装をした女性だ。
ノアの知り合いかと思って彼の表情を伺うも、眉間に皺を寄せて首を捻っている。
どうも知らない人のようだ。
「だ、大魔導士様! 先日はありがとうございました!」
一歩こちらに歩み出てきた女性が、淑女の礼をする。
ノアがまるで「君の知り合い?」とでも聞きたげに私に視線を送った。
私も見覚えはない……と思ったけれど、いや待て。確かあの時、森で出会ったお嬢さんのうちの一人が、こんな感じの髪の色と長さだった、ような。
「……誰?」
私がはっきりと思い出せずにいると、ノアが一足先に口から疑問を出してしまう。
まずい、本当に会ったことのあるお嬢さんだったなら、こんなことを言ったらノアの株が下がってしまう。
「自分が送ってやった女の顔も覚えてないとは、モテる男は違いますねぇ」
フェイがまたくつくつと押し殺したように笑う。ノアはあからさまに眉根を寄せてフェイを睨んだ。
ノアの「先生以外には興味ない」という言葉が脳裏をよぎる。
お嬢さんの評価が上がろうが下がろうが彼はどうでもいいのかもしれないけれど、それでは社会生活はやっていかれないのでもう少し人に興味を持ってほしい。
前世の私が社会生活をきちんとやれていたかからは目を逸らしながらそう思った。
そっけないノアの態度にわずかにたじろいだものの、お嬢さんは負けずに話を続ける。
「あの。お礼と言うにはささやかですが、今度我が家で開催するパーティーにお越しいただきたいのです」
「僕、謹慎中だから」
ノアがつんとそっぽを向いた。
しまった。椅子にさえ座っていなければ、膝の裏を蹴って「もっとちゃんとしてください」と言ってやるのに。
「ヴォルテール家の皆様にもおいでいただけるとのことで」
「は?」
「ご家族ご一緒ならと許可をいただきましたわ」
お嬢さんがきゅっと拳を握りしめて言う。ノアがぱちくりと目を見開いた。
ヴォルテールはノアの姓だったはず。ということは、ノアの家族が来るのか。
結婚式ではまともに挨拶をする機会もなかった。私の……アイシャの家の方が身分が高かったからだろうか。
ノアの父は家庭教師時代の元雇用主である。前世では何回か顔を合わせたけれど……母親の方は前世でもほとんど面識がなかった。
ぽかんとしているノアと、意気込んで彼に詰め寄るお嬢さんの顔を見回して、背後に回ってきたフェイが私の両肩にぽんと手を置いた。
「まぁ、それじゃああとは若いお二人で、ってことで」
「え、」
「俺はちょーっと、こっちのお嬢ちゃんに話があるから」
「は? ちょっと、待っ」
私に椅子を立つように促したフェイは、ノアの制止も聞かずに私を連れてリビングへと歩き始める。
ちらりと振り返ると、ノアが困惑した目で私とフェイ、そしてお嬢さんを忙しなく見比べておろおろしていた。
かわいそうに、と思いながらも、私もフェイに促されるままについていく。
女の人に少しは興味を持ってもらわなくては。興味がないとか言っている場合ではないのである。
ちょっとくらい二人きりにしてやった方がいいだろう。
「知能レベルが同じくらいだからでしょうか」
「……変わったお嬢ちゃんだな」
フェイの言葉に、咄嗟に言い訳を捻り出した。
……結果としてより訝しまれている気がする。
子どもサイドから言うようなことではなかったかもしれない。
「定期訪問にしては早いんじゃない」
「いやぁ。実は大魔導士様にお会いしたいって方が来てまして。ついでに毎月のを済ませておこうって魂胆ですよ」
「は?」
ノアが怪訝そうな声を出す。
フェイがダイニングの入り口を振り返ると、おそるおそるといった様子で、一人の女性がこちらを覗き込んでいるのが視界に入った。
年齢はノアよりいくらか若い程度の、亜麻色の長い髪をした、いいところのお嬢さんを思わせる服装をした女性だ。
ノアの知り合いかと思って彼の表情を伺うも、眉間に皺を寄せて首を捻っている。
どうも知らない人のようだ。
「だ、大魔導士様! 先日はありがとうございました!」
一歩こちらに歩み出てきた女性が、淑女の礼をする。
ノアがまるで「君の知り合い?」とでも聞きたげに私に視線を送った。
私も見覚えはない……と思ったけれど、いや待て。確かあの時、森で出会ったお嬢さんのうちの一人が、こんな感じの髪の色と長さだった、ような。
「……誰?」
私がはっきりと思い出せずにいると、ノアが一足先に口から疑問を出してしまう。
まずい、本当に会ったことのあるお嬢さんだったなら、こんなことを言ったらノアの株が下がってしまう。
「自分が送ってやった女の顔も覚えてないとは、モテる男は違いますねぇ」
フェイがまたくつくつと押し殺したように笑う。ノアはあからさまに眉根を寄せてフェイを睨んだ。
ノアの「先生以外には興味ない」という言葉が脳裏をよぎる。
お嬢さんの評価が上がろうが下がろうが彼はどうでもいいのかもしれないけれど、それでは社会生活はやっていかれないのでもう少し人に興味を持ってほしい。
前世の私が社会生活をきちんとやれていたかからは目を逸らしながらそう思った。
そっけないノアの態度にわずかにたじろいだものの、お嬢さんは負けずに話を続ける。
「あの。お礼と言うにはささやかですが、今度我が家で開催するパーティーにお越しいただきたいのです」
「僕、謹慎中だから」
ノアがつんとそっぽを向いた。
しまった。椅子にさえ座っていなければ、膝の裏を蹴って「もっとちゃんとしてください」と言ってやるのに。
「ヴォルテール家の皆様にもおいでいただけるとのことで」
「は?」
「ご家族ご一緒ならと許可をいただきましたわ」
お嬢さんがきゅっと拳を握りしめて言う。ノアがぱちくりと目を見開いた。
ヴォルテールはノアの姓だったはず。ということは、ノアの家族が来るのか。
結婚式ではまともに挨拶をする機会もなかった。私の……アイシャの家の方が身分が高かったからだろうか。
ノアの父は家庭教師時代の元雇用主である。前世では何回か顔を合わせたけれど……母親の方は前世でもほとんど面識がなかった。
ぽかんとしているノアと、意気込んで彼に詰め寄るお嬢さんの顔を見回して、背後に回ってきたフェイが私の両肩にぽんと手を置いた。
「まぁ、それじゃああとは若いお二人で、ってことで」
「え、」
「俺はちょーっと、こっちのお嬢ちゃんに話があるから」
「は? ちょっと、待っ」
私に椅子を立つように促したフェイは、ノアの制止も聞かずに私を連れてリビングへと歩き始める。
ちらりと振り返ると、ノアが困惑した目で私とフェイ、そしてお嬢さんを忙しなく見比べておろおろしていた。
かわいそうに、と思いながらも、私もフェイに促されるままについていく。
女の人に少しは興味を持ってもらわなくては。興味がないとか言っている場合ではないのである。
ちょっとくらい二人きりにしてやった方がいいだろう。
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