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☆第百二十九話 連合軍激闘!☆

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 章太郎たち「童話世界の安心を取り戻したい連合」VS「暴走をしてしまった女王の蜃鬼楼郡」の、大規模戦闘が始まった。
「行くよ~っ!」
「おぅさっ!」
「「「へぃっ!」」」
 全体隊長でもある桃太郎&お供たち&鬼連合が、数百体と数え切れない蜃鬼楼の群れのド真ん中へと、一番槍を極めて特攻。
「ハっヒっフっ!」
 最先端で刀を振るう桃太郎は、真剣な眼差しで隙の無い攻撃を繰り出しながら、口調は呑気を隠していない。
 しかも相手が敵意しかないからか、躊躇いとか情などは微塵も見せず、むしろ大量暫撃を楽しんでいる風にも、章太郎たちには見えた。
(童謡の桃太郎でも…たしか、歌詞の四番からは狼藉者とか山賊みたいに物騒なフレーズの連呼だし…根っこは戦闘好きなのかな…)
 そうで無ければ、鬼たちを伏して平和を取り戻すなんて出来ないのかも知れないし、いわゆる連合軍の総大将とかも、務まらないのかもしれない。
 鬼大将も、桃太郎に負けじと鬼神っぷりを発揮して、金棒による一撃二撃で蜃鬼楼を個別撃破している。
「「「喰らえぇっ!」」」
 お供たちや鬼兵士たちは、金太郎の近くで戦いながら、複数で一体を囲んで撃退。
「どりゃ…っ! でぁ…っ!」
 相棒のツキノを浮遊大地へ残して孤軍奮闘かと心配をした金太郎だけど、お供や鬼たちとの共同戦線で両掌に斧を握って、一振りで一体の蜃鬼楼を退治していた。
「そりやあああっ!」
 桃太郎のメカ鎧を纏った章太郎も、刀を斬罵刀のように長大化させて、一振りで複数体の蜃鬼楼たちを一気に滅してゆく。
 総大将の桃太郎がバトル・ジャンキーっぽい感じなのもあり、章太郎は、全体が俯瞰で見渡せるような位置取りもしていた。
「こっちだっ! もっと俺のトコロへ来いっ!」
 気を放出するイメージで全身に力を込めると、聖力の香りが放出をされるらしく、気付いて我先にと襲い掛かってくる蜃鬼楼の群れ。
「纏めて相手をしてやるぞっ!」
 合戦が始まってまだ十分と過ぎてはいないけれど、章太郎だけでも、もう数十体の蜃鬼楼たちを倒している。
 しかし本当の目標は、直径だけで二キロ程もある、巨大な水饅頭の如き女王である。
(蜃鬼楼の数…っ、減ってるのかなっ?)
 とか思うものの、とにかく蜃鬼楼は女王から直接、分離をする形で産まれ続けているので、退治して減らすしかないのだ。
 そして御伽噺の少女たちも、それぞれが身に着けた新しい神通力で、無重力な戦場で戦い抜く。
 大きなメカ生態のオオカミへ跨がり、蜃鬼楼たちを銃撃している赤ずきんが、更に集まってくる蜃鬼楼たちに対して、両掌のハンドガンへと聖力を込める。
「集まって来たなっ! むむむむむ…っ!」
 ハンドガンが光ったと思ったら、銃身がライフルのように伸びて、その周りを複数本のより長い銃身が包み込む。
 頭巾いがいの衣服が光変換をされて、銃身へと再構成をされていた。
 更に長い銃身がグルりと増えて周囲を取り囲み、更に数も長さも増えた銃身が周りを取り囲んで、強化された銃器が完成。
 裸な銃撃少女の両掌には、まるで大きな花束みたいに先が広がった散弾ハンドガンが、構えられていた。
 無数に増えた銃身から、蜃鬼楼の群れへ向かって、一斉発射。
「撃つぞっ! レッド・バーストっ!」
 ――っダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダンンンっ!
 数え切れない程の銃弾が同時発射をされると、一発で一体の蜃鬼楼が撃ち抜かれて、くぐもった悲鳴を上げながら消滅をしてゆく。
 超銃撃を放った赤ずきんの周囲に、もはや蜃鬼楼の影はなく、衣服も戻った少女は銃身の束が消えて普通のハンドガンとなった愛銃の、煙を漂わせる銃口へ「ふ…」と吐息を吹いた。
 隣の戦場では、メカ生体なキングコングの肩へ腰を据えた雪女が、連携プレイで蜃鬼楼たちと戦っている。
「ひゅ…っ! ふぅっ…っ!」
 襲い来る蜃鬼楼たちそれぞれへ、脣から発生をさせた氷の刃を飛ばし、個体毎に一刀両断。
 メカコングもその剛力をいかんなく発揮して、大きな蜃鬼楼たちを相手に、ステゴロで殴る蹴るの大暴れをしていた。
 個別では捌ききれない程の集団が迫って、雪女も、新たに身に着けた神通力を発揮。
「はぁぁああ…っ!」
 メカ生態コングの肩から離れると、精神集中をして、身体が白く発光をする。
 和装が光粒となって裸身となった雪女の周囲へ、蜃鬼楼の群れだけでなく空気中の水分も集まって、空気が冷却される。
 集中が終わり、普段は優しい眼差しをカっと見開くと、オニキスのような瞳がその黒色で輝いた。
「っお覚悟をっ、超絶対零度…っ!」
 まるで、周囲の空間そのものへ命令するかのように、静かに強く唱えると、次の一瞬で雪女の廻り数十メートルが、完全停止。
 雪女は、自分の周囲空間を宇宙の温度と言われているマイナス二百七十度ほどよりも更に低いとされている、マイナス二百七十三度ほどの超絶対零度。
 宇宙の深淵に存在していると言われている、物理的に最も低い温度にまで、任意の空間の温度を低下させたのである。
 蜃鬼楼の群れ全体がビクっと反応をしたかと思ったら、そのままの形で氷結をされて原子結合が破壊され、空気の振動だけで粉微塵へと粉砕をされていった。
「ふぅ…」
 周囲をスカスカにした雪女は、常温へ戻った無重力空間からメカゴリラの肩へと静かに降りて、和装が戻って一息ついた。
 更にその隣では、鶴系魔法少女とメカ生体の怪鳥が、鳥重合体モードで無重力の青空を飛翔している。
「えいえいえ~いっ!」
 前後合体をしている鶴と怪鳥は、共に翼を閉じて高速飛行をしながら蜃鬼楼の群れへと突っ込み、鋭い翼の刃で一体また一体と両断をしてゆく。
 それでも、大型戦闘機みたいな鳥コンビのスピードに追いつける飛行型蜃鬼楼たちが、獲物の聖力を喰らわんと集まってきた。
「こういう時は…っ!」
 鳥重合体のまま、鶴から魔法少女へ姿を戻すと飛行を止めて、空中停止のまま両腕を拡げて、気を込める。
「ぅぅうううっ! 羽根~っ!」
 そのままな掛け声の通り、衣装が光に分解をされて裸となった魔法少女の両腕と怪鳥の羽根が、全長の数倍という巨大な羽根へと変化をした。
「飛ばしちゃうよ~っ! 仙鶴大嵐(せんかく おおあらし)~つ!」
 聖力で光った裸身いっぱいに、群れへ向かって羽ばたくと、巨大な竜巻が発生。
 直径百メートルを越える巨大な竜巻は、襲い来る飛行型蜃気楼たちを纏めて飲み込み、超高速旋回で翻弄をする。
 暴風に巻き上げられる蜃気楼たちは、竜巻で浮遊大地へ叩き付けられて爆散をしたり竜巻の中でぶつかって共に消滅をしたりと、さまざまなダメージで撃退されて行った。
「ふふん~♪ お家の洗濯機を見て、思いついたんだからね~♪」
 辺り一面の高速飛行型蜃気楼を纏めて葬った魔法少女は、衣装が戻りながら胸を張り、誇らしげ。
 三人よりも金太郎に近い浮遊大陸の大地では、植物ビキニを纏った木製戦士ピノッキアードが大陸の樹木を操りながら、鈍重だけど巨大な陸上蜃気楼を相手に奮戦していた。
「来るだけ倒すぜっ! おりゃああっ!」
 緑色の長髪を伸ばして大樹たちへ意識を送り、ズシズシと歩み寄る巨体蜃気楼たちの足下から、長さ十メートルにも届く巨大な牙状の木製槍を突き上げる。
 複数本の木製牙を一斉に貫通される巨体蜃気楼たちは、確実にダメージを受けて消滅。
 そんな大きな牙すらモノともしない程の、超巨体蜃気楼が接近をしてくると、ピノッキアードも鍛えた神通力を発揮する。
「デカいからって、やりようはあるんだせっ! ぅおおおおっ!」
 葉と蔦のビキニを光へ変換をした裸のピノッキアードは、伸ばした長髪で樹木の牙を操りながら、更に拡げた両腕の爪の先から緑色の新たな光を発して、超巨体蜃気楼の周囲の樹木へと、意識を送った。
 途端に、聖力を集中させたピノッキアードの身体と、繋がった樹木たちが緑色に輝き、樹木たちがニョキニョキと伸びながら蠢いて、蜃気楼の身体へと絡みつき始める。
 ――ッブグオオオッ!
 太い蔦たちに巻き付かれた超巨体蜃気楼は、植物の強力な拘束力で間もなく動きそのものが封じ頃られ、更にギリギリと締め上げられる。
 動けなくなった巨体が絞められて生ハムみたいになって、数秒後。
 ――ッブァァァアアアアアッ!
 五つほどに分断をされた超巨体蜃気楼は、それぞれの塊で消滅をした。
 ビキニが戻ったピノッキアードの周囲も、一時的にガラ空きとなる。
「ふぅ…金太郎も大丈夫そうだし。ちょっと章太郎から、聖力を貰わないとな♪」
 植物ビキニの少女戦士は、足下の植物を伸ばして、章太郎へと近づいて行った。
「ショータロー」
「章太郎様」
「章太郎く~ん」
「ショータ」
「! みんなっ…ん?」
 御伽噺少女たちの声が四方から聞こえて、周囲の蜃気楼たちを撃退したタイミングの章太郎は、何かあったのかと周囲をキョロキョロ。
 見ると、それぞれの少女たちがそれぞれの方向から、章太郎の許へと集まって来た。
「みんなつ、何かあったのかっ?」
「いや、そうではなく、聖力の補充をしたいのだ」
「そうかっ――え…?」
 戦闘中にキスをするのか。
 と思って、一瞬焦った章太郎だけど。
「それでは、聖力を戴きます」
「「「「ちゅ…」」」」
 四人は、左右の頬へとキスをくれて、聖力の補充を完了させる。
「ぇ、あ、えぇと…っ!」
 頬とはいえ、唐突にキスをされて、一瞬だけど呆ける少年。
「それじゃ~♪ 頑張ろうね~♪」
 少女たちは、やる気に満ちた笑顔で、それぞれの戦場へと戻って行った。

                        ~第百二十九話 終わり~
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