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☆第三十話 虹色☆
しおりを挟む「では、触診をしますね」
「はい…」
対面で座った少年の上下瞼へと指を充てて、ライトで照らしてジっと見つめる真希。
「ふむふむ…」
(………)
モデル顔負けな年上美女と見つめ合うような格好になると、恥ずかしくて、つい視線を逸らしてしまったり。
「章太郎くん」
「は、はい!」
注意されてしまったと思ったら。
「斜め上だけでなく、下や左右にも、目を動かして貰えますか?」
「あ~…はい」
左右の目を診察されて、更に先端の丸いピンセットで、鼻の穴も覗かれる。
(ひいぃっ…なんかっ、恥ずかしい~っ!)
「鼻腔も綺麗ですね」
「んど、どふも…」
口を大きく開けて、ヘラで舌を押さえられると「うぇっ」とえづいたり。
頭部の診察が終わると、真希は聴診器を耳へと装着。
美貌と白衣と相まって、なんだかアダルトゲームの女医さんキャラのように、しか見えない。
「では、前を開けて下さい」
「は、はぃ…」
(なんか…エロゲー展開みたいな感じ…)
開いた胸へ聴診器が当てられると、一瞬だけ冷ヤっとした。
真希の白衣は、ナゼかプロポーションが殆ど隠されておらず、開けられた白衣の前からはスーツに包まれた巨乳が、中から押し上げられている。
しかも聴診器を充てる為に前屈みになっていて、利き腕も前に出されているからか、白いワイシャツには深い谷間も形造られていたりして、少年の視線には毒だった。
「ふむ…鼓動が早い感じですね。普段から こうなのですか?」
「い、いえ…。今日は特別だと思います…」
「?」
自分の魅力が健全な少年に与える影響とか、全く想像出来ていないらしい。
黙って診察をされているのは当然としても、やはり年頃な少年としては、剥き出しの谷間でもないワイシャツで形作られるキツキツ巨乳を前にしていると、恥ずかしさで気まずく感じてしまう。
「そ、それにしても…真希さんって、お医者さんの免許も、持ってるんですね」
と、診察を受ける身としては、そつの無い話題を振ってみた。
「いいえ。私はむしろ 物理が専門でしたので。生物の身体に関する免許としては、獣医師を持っているくらいですね」
「え?」
つまり今の章太郎の状況は、街の獣医さんに診察をされているのと同じ。
「えぇと…う、疑うワケではないですが…大丈夫なんですか…? その、倫理的にー、とか…」
気を遣って尋ねると、真希はニッコリと美しい微笑みを魅せながら、平然と答える。
「大丈夫ですよ。普段から動物たちを相手に、診察自体は手慣れてますし」
「はぁ…」
(俺は動物と同じ…?)
とか思うものの、真希にやらせているのはきっと祖父だから、倫理観とかは纏めて銀河の彼方だろう。
「それに私は、研究所で皆さんの検査をする際にも、人体専門家の先生方から 色々と任されてますので」
と、背中を向けさせられながら、また綺麗な微笑みを頂いた章太郎だ。
「な、なるほど…」
背中に聴診器を充てられながら、深呼吸をする。
向かいの壁には、犬や猫のレントゲン内臓骨格イラストのポスターが貼られていて、しかしそれはリアル寄りで、ちょっと怖い。
(………)
おかげで、真希の胸谷間で刺激をされていた意識が冷静になり。
「おや。鼓動が正常値な感じですね」
「はぃ…」
犬猫サンキューな章太郎であった。
それから、血圧なども計って、これで検査は終わり。
かと思ったら、なにやらノートパソコンのモニターを見せられた。
「見て下さい」
覗き込むと、章太郎のMRIらしいドットの色画像が、標示されている。
「これは…さっきの ですよね」
「そうです。この、胸のあたり」
指さされた画像を見ると、心臓の鼓動と合わせるように、虹色の気体らしき色が、身体の周囲へと広がっている。
その虹色は、コンピューターで標示されている割りには綺麗だ。
章太郎本体の色が、コンピューターの発色そのものだとすると、溢れる虹色は、雨上がりの空に架かる虹そのものの輝きである。
「こ、これは…」
コンピューターのバグ?
とか思ったら、やっぱりというか、違った。
「この虹のような現象が、ブーケたちの言う『聖力』という…何か、ですね」
「何か…? つまり、爺ちゃんたちの研究でも…聖力がなんなのか、ハッキリしてないって事ですか…?」
少年の質問に、美人研究員は答える。
「生命体の持つエネルギー…という点だけは、ハッキリとしています。この虹と同じ現象自体は、博士や私たち、研究所の動物たちや里山の虫たちからも、検出出来てますから」
パソコンやその辺の石、先ほど会ったメカのドッグなどからは、このような現象は確認されていないと言う。
「ついでに言えば、個体として大型の生物ほど、この虹も大きく発現をしています。ですので、生命体の持つ生命力と関連している…。と、現在の処は想定されているのです」
「へぇ…」
画面の中では、章太郎のドットシルエットの廻りで、ウヨウヨと波打って揺らめいている虹色は、霊的な印象で、不思議だ。
「そして、こちらのデータも見て下さい」
パソコンの画面に、別のレントゲン画像が割り込みで映し出される。
「これは…あっ!」
章太郎と同じく、MRIで横になっている人体の赤系ドット画像だけど、横からの姿がとても起伏に恵まれている。
バストが山のようで、ウエストと腰の後ろが括れていて、お尻がタップリ。
頭身のバランスもモデルのようで、現在の章太郎としては、思い当たる人物が一人しかいない。
「あ、あの…この画像の人って…」
「ん? ああ、私です」
シレっと答えた真希は、まるで動物の画像を見るような感覚。
横からのドット画像とはいえ、ボディーラインはクッキリしているし、よく見てしまうと胸の先端なども、認識出来そうな細かさ。
「そ、そうですか…はは…」
流石にガン見してしまうと、失礼だし怒られそうな気がして、章太郎は少年の本能的にも、目を背けてしまう。
「章太郎くん。ほら、良く見てください」
「は、はい…」
よそ見をしていると思われてしまい、逆に注意をされた。
「私の虹ですが、章太郎くんとの違いを、解りますか?」
「ええと…」
画像を見ると、真希の虹はボディーの表面に薄く纏われている感じであり、よく見てしまうとバストのトップも認識が出来てしまう。
それでも、章太郎は必死に理性を働かせて、真希の虹へと意識を集中。
すると。
「…あ、色味っていうか…」
章太郎の、CGとは全く違う虹色に対して、真希の虹はドットの表現、そのままだ。
「これは私だけでなく、博士や里山の動物たちも、ほとんど このような虹として検出がされます。つまり章太郎くんの虹は、極めて異質…と言わざるを得ません」
「それが、俺の聖力…」
画面に並べられている画像を見比べても、章太郎の聖力は機械の検出映像すら超越してしまう程、異質だという話だ。
「こ、この虹色なのが…ブーケたちの言う『美味しい聖力』っていう事なんですか?」
鬼たちにとっても大好物な、章太郎の聖力。
「そういう事でしょう。少なくとも、私たちには認識も味わいも出来ませんが…オカルト少女たちにとっても、そして鬼たちにとっても、この虹が活動源と言えるエネルギーのようですから」
「な、なるほど…」
聖力の正確な正体は、人間の認識ではまだ断定できないけれど、存在している事だけは、コンピューターでも検出出来て、証明できる。
「まあ…昔から様々な物語。特に英雄伝説などには、不思議な力が登場していたりしますから。この虹も、そういった力…生物が持つ生命力であり、その中でも章太郎くんのように、特種な力を持つ個体が…稀にであれ存在する。という認識が、博士を筆頭に現在の我々の考え方ですね」
「…英雄伝説…」
そう言われて、考えてみると。
「…桃太郎の鬼退治とか、金太郎の怪力…浦島太郎に至っては、深海冒険と時間の超越なんていう、不思議な話…」
と考えて、思い当たる。
「つまり僕も、そういう活躍っていうか…ブーケたちの戦いの役に立てる。っていう可能性も、あるんですか?」
そう考えると、少しワクワクしてくる。
少年の表情に、真希はニッコリと微笑んで、教えたくれた。
~第三十話 終わり~
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