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☆第八話 爺ちゃんによると☆

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「じ、爺ちゃんが…みんなを…っ!」
 この世界に誕生させた。
「そして、キミの御爺様…ショウノスケ氏の頼みで、ボクたちはキミを守護する為に やって来た。というワケだ」
「そ、そうなんだ…」
 としか答えられない話である。
 三人の自出を知ると、別なる疑問が湧いてきた。
「爺ちゃんは…なんでキミたちを、その…この世界に誕生させたの?」
 三人が本当に、いわゆる人造生命体なのかはともかく、章太郎の祖父である章之助の名前を知っているワケだから、関係ありと考えて差し支えはないだろう。
 章太郎の質問に、ユキが静かに答える。
「それは…章之助様が、とある研究をされていた時のお話です…」
 半年ほど前、章之助氏は銀河系に第二の地球を見つけた場合の惑星開発用の人体強化薬品を研究していた。
「爺ちゃん、そんな一足も二足も先の研究とか してるんだ…」
 人間工学と生物医学と心理学と宇宙工学の観点で薬品調合をする為に、様々な聖書や神学書や童話なども研究をしていて、更に童話世界そのものを垣間見るのにも成功。
「…なんか サラっと異次元への扉とか、発見してない…?」
 この世界と御伽噺の世界とが繋がった事で、鬼たちなどの悪意の存在を知り、悪意たちもこちらの世界の存在を知り、侵略を考えたという。
「そして、そんな悪意たちと戦う為に…」
「あたしたちが呼ばれて造られた~。みたいな感じ~?」
 この世界に誕生した時、三人は全裸だったという話も、ついでに聞かされた。
「鬼たちが、こちらの世界での実体を維持させる為には、この世界の人々の生命力が必要であり…」
「鬼たちは、特に聖力の強いショータロー、キミを狙ってくる」
「だからね~、あたしたちが章太郎くんを護る為に~、こうしてここにいるんだよ~♪」
 と、口の周りをクリームだらけにしている美鶴の説明で、一応は解った。
「つまり…爺ちゃんが異次元の扉を開いたから鬼たちがこっちの世界を知って、侵略してくるって話…?」
 全ては、章太郎の祖父である章之助氏が原因らしい。
「爺ちゃん何やってんのっ!」
 孫には優しいけどマッドサイエンティストだと認識していた少年だけど、まさか世界の危機を招いていたとは。
「そ、そうだったのか…なんか、すみません…」
 その為に、この世界に誕生させられたという三人に、申し訳ない気持ちだ。
「そうでもないぞ」
 と、ブーケが明るく応える。
「ボクたちの知らない世界が存在している事に驚いたし。なんと言うか…この世界こそが、昔語りの物語のようにも、感じられていて」
「はい。とても、わくわくしてしまいます」
「ね~。そふとくり~む? も、美味しかったし~♪」
 三人とも、この世界に誕生した事が、嬉しい様子だ。
「そ、そうなんだ…」
(もしかしたら…異世界転生モノの主人公たちとかじゃなくて、その世界の住人たちから見れば…主人公たちって、この三人みたいな感じなのだろうか…)
 とか考えてしまったり。
 三人の笑顔が、とても綺麗に輝いて見えた。
「と、とにかく…」
 お爺ちゃんの開いた異次元のゲートを通って、鬼とかが章太郎の聖力を狙ってやって来るから、章太郎を護る為に三人が戦う。
「って事なんだ…」
「そうだ」
 とりあえず、今のところのナゾは解けた。
「なるほどな…」
「章之助様は現在、うちゅうかいはつ…? をされながら、お時間を作って、鬼たちの世界との出入り口を完全封鎖する手段を 模索されております」
「そっちがメインじゃないんだ…」
 結構な緊急事態だと思うけれど、マッドサイエンティストとしては、そうでもないらしい。
「まあアレだよ~。鬼たちの世界が閉じられるまで~、あたしたちが章太郎くんを、護るから~♪」
「ど、どうも…」
 屋上で見た鬼は現実だったし、戦闘も現実。
 とか考えていたら、三人の裸での変身とかも思い出して、ちょっと自省をしたり。
「ま、まぁ…そういう事なら、俺に出来る事は 何でもするよ。遠慮無く言ってくれていいから」
「ああ、嬉しいぞ」
「よろしく、お願いいたします」
「うん~♪ エンリョしないよ~♪」
 と、三人は笑顔を返してくれた。
 とにかく、色々と祖父が原因なのだから、章太郎も三人のサポートをするのが当然だろう。
「それじゃあ…まずはみんな、家まで送るよ」
「そうか。ショータローは紳士だな」
 と、ブーケたちは輝く笑顔。
「い、いや…普通だよ」
 女子に褒められるなんて初めてな章太郎は、テレていた。
 電車に乗って、降りた目的の駅は、章太郎の最寄り駅でもある。
「このあたり? ウチに近いんだな」
「はい。あちらの…まんしょん…? というお屋敷だそうです」
「マンション住まいかー。駅前っていう事は、最近建てられた アレかな」
 駅から、章太郎の自宅とは反対側の通りへ向かうと、五階建ての新築マンション「ハイツ ワンダラー」が見えて来た。
「あれでしょ?」
「うん~。お爺ちゃんの地図と同じ~♪」
 章之助が書いた地図と住所によると、このマンションの五階が、三人の住まいとして提供されている。
「おお~、爺ちゃん奮発したな~」
 落ち着いたブラウン系のマンションは、駅から近いだけでなく、裏にはこの街最大の神社があり、住むと御利益があると評判でもあった。
 三人をマンションの正面玄関まで送ると、章太郎は実家へと向かう。
「それじゃ、これからもヨロシクね。また明日」
「ああ、またな」
 と、ブーケたちの笑顔に見送られて、章太郎は家路についた。

 家に帰って、母に帰宅の挨拶をしながら自室へ。
「ただいま~」
「あ、お帰り章太郎。あのね――」
「んーなーにー…ええっ!?」
 と、二階の自室の扉を明けて、章太郎は驚いた。
 小学生の低学年からずっと慣れ親しんできた自室が、カラッポである。
「か、母さん俺の部屋っ! 何っ、泥棒っ!?」
 慌てて走って階段を下りてリビングへ向かうと、母が呆れていた。
「だから今、話そうとしてたのよ。あんたの部屋、引っ越したから」
「……え…?」
 そんなリビングに、父が帰宅。
「ただいま~っと。お、章太郎 まだウチにいたのか?」
「え? あ、父さんお帰り。ってそうじゃなくてっ! 俺の部屋、どうちゃったのっ?」
 と問い詰めると。
「あー、父さんも さっきなー。爺ちゃんからメールが来てなー。安心しろ、事情はわかった!」
「俺は何もわかんないんだけどっ!」
 父は、冷蔵庫から缶ビールを取り出しながらリビングの椅子に座り、母はグラスを用意して、隣へ座った。
「爺ちゃんがなー。鬼? からお前を護る為に、童話の主人公たち? と、一緒に住まわせるー。とか言ってきてなぁ」
 と、母がグラスへと注ぐビールを美味しそうな眼差しで眺めながら、サラっと告げる。
「童話の主人公たちって…あの三人とっ!? 一緒に住まわせるってっ!?」
 驚く息子に、父は。
「お、なんだなんだー? その童話の主人公とやらと、もう知り合ったのかー? 相手は誰だ? 金太郎か? 桃太郎か? ん?」
 章之助の話は理解しているけれど、細かい事は聞かされていないらしい。
「いや、その…あ、赤ずきんちゃんと、雪女と、鶴の恩返しの鶴、らしい…」
 自分でも、おかしな事を口走っていると思う。
「へぇ~、なんだ? 女の子ばかりじゃないか。何だ? その女の子たちが、何か鬼から、お前を護ってくれるのか? ん?」
「ま、まあ…」
 無駄に理解の早い父。
「あらまぁ、女の子? 章太郎お前、何か間違いとか、起こすんじゃ無いわよ」
 と、母は年頃の息子への心配を口にする。
「それは大丈夫だけどっ…相手は普通の女の子っていうより、メルヘンの世界の女の子たちなんだし」
 と言う自分も、そうとうファンタジーに毒されてきているな。と感じ、ついでに、もうキスはしてしまっている事も秘密である。
「まぁとにかくアレだ。爺ちゃん、言いだしたら聞かないから。付き合ってやってくれ」
 と、父はビールを美味しそうに飲み干していた。

 その日の夕方。
 章太郎は部屋に残されていたバッグ一つで「ハイツ ワンダラー」へと到着。
「あの…ヨロシクお願いいたします」
「待っていたぞ。ショータロー♪」
 玄関先で、三人が笑顔で迎えてくれた。

                        ~第八話 終わり~         
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