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第一章 戦う聖女
複雑な事情に巻き込まれる第一王子
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「おーい!誰か生きている奴はいないか?ゴブリン以外で」
月明かりの下、ブラックウォールにやってきた第一王子
もとい、勇者タカヒロは、つまり俺は戦場のあとの
死体が散らばる岩の上を歩いていた。
「生きている奴はいねーのか?」
それにしてもひどい惨状だ。
この様子じゃ王国軍はほぼ全滅だろう。
「…くれぇ、…すけて…たすけて…」
「おっ、そこか?待ってろ」
岩の下からかすかな声がして、俺は慌ててそちらの方に向かう。
岩をどけてやると、岩の下から這い出てきたのは
軽装な鎧に白い服の男だった。
見慣れた王国軍の鎧と少し違うことに気づき戸惑った。
「あ、ありがとうございます。あなたは命の恩人です。
ところであなたは一体何者ですか?以前どこかでお会いしましたでしょうか?」
「俺はただのしがない旅の勇者だ。それよりあんたの恰好、王国軍じゃないのか?」
「わ、わたしは、王国軍、聖女部隊の副隊長であります」
「あー、そういえば助けた奴らが言ってたな」
ー総力戦のため、すべての聖女も戦場に動員させた。
聞いたときはなんて馬鹿なことを、と思ったし、
どうしてだれも止めなかったのだと思った。
本来は国の守りを行う聖女。
彼らの祈りには魔族を退ける力がある。
王国の結界が破られたとしても
聖女たちが王国にとどまって守ってくれたら、
王国の中心部だけでも魔族を退け、
無事でいられたかもしれない。
確かに最強の守りは攻めだというが、
これじゃあ本末転倒だ。
本当に何をやってんだ国王は。
「あんた、ほかに生き残っている聖女はいるか?」
「わかりません。多くの聖女はヌヌ石柱群に駆り出され、
そこで戦い命を落としました。ほぼ全滅です」
「あんたはなんでここに?」
「私は総指揮官であるユーリ王子の補佐として
ずっとそばに付き従い、戦っていました」
「え?なんでユーリが総指揮官なんて任されているんだ、
聖女だろあいつ」
国王の息子で在りながら、聖女の血を引くという
複雑なユーリの事情については知っていた。
俺が王国を出た時は聖女として他の聖女たちと
聖なる森で暮らしていた。
あいつは兄弟の中でも一番年下で、
しかも王子としての地位ははく奪されていたはずだ。
「ユーリ様は聖母様がお亡くなりになり、
魔族が王国を襲った時、聖女たちを率いて誰よりも勇敢に
戦われました。
そのため国民からは彼を再び王子に
という声が強くあがりました。
国王様はそれに押し切られる形で再びユーリ様を
王子として王宮に迎え入れたのです」
「俺がいない間にそんなことが…
それよりユーリはどうなったんだよ」
「魔族に捕らわれ、魔王の奴隷とされました…
わたしは何もできなかった…!
あの方が魔族たちに辱めを受けているのに、何もできなかった。
お願いです、勇者様、私に力を貸してくれませんか?
ユーリ様をお救いしたいのです…!どうか、どうか」
「だめだ」
「なぜですか」
「あんたは聖女だろう。本来あんたの役目は国を、国民を守ることだ。
だから生き残った聖女たちを連れて、国に戻って結界を張り直せ。
何を血迷っているんだ」
「…くっ、しかし」
「ユーリは俺が必ず助けるから」
いくら関りが少ないとはいえ、ユーリは弟だ。
それを見捨てるなんて兄として最低だろう。
そんな男が魔物ハーレムなんて作れるはずがない。
と思ったところで思い出した。
「他の王子達はどうしたんだ?ほらいただろう。第2、第3、第4王子。
いつも仲良く団子さん兄弟が。あいつらも戦場にいたんだろう」
「あの方々は…いえ、あいつらは、決して許せません」
「どうしたんだ?急に物騒だな」
「そもそもユーリ様があのような目の遭ったのもあれらのしわざなのです」
月明かりの下、ブラックウォールにやってきた第一王子
もとい、勇者タカヒロは、つまり俺は戦場のあとの
死体が散らばる岩の上を歩いていた。
「生きている奴はいねーのか?」
それにしてもひどい惨状だ。
この様子じゃ王国軍はほぼ全滅だろう。
「…くれぇ、…すけて…たすけて…」
「おっ、そこか?待ってろ」
岩の下からかすかな声がして、俺は慌ててそちらの方に向かう。
岩をどけてやると、岩の下から這い出てきたのは
軽装な鎧に白い服の男だった。
見慣れた王国軍の鎧と少し違うことに気づき戸惑った。
「あ、ありがとうございます。あなたは命の恩人です。
ところであなたは一体何者ですか?以前どこかでお会いしましたでしょうか?」
「俺はただのしがない旅の勇者だ。それよりあんたの恰好、王国軍じゃないのか?」
「わ、わたしは、王国軍、聖女部隊の副隊長であります」
「あー、そういえば助けた奴らが言ってたな」
ー総力戦のため、すべての聖女も戦場に動員させた。
聞いたときはなんて馬鹿なことを、と思ったし、
どうしてだれも止めなかったのだと思った。
本来は国の守りを行う聖女。
彼らの祈りには魔族を退ける力がある。
王国の結界が破られたとしても
聖女たちが王国にとどまって守ってくれたら、
王国の中心部だけでも魔族を退け、
無事でいられたかもしれない。
確かに最強の守りは攻めだというが、
これじゃあ本末転倒だ。
本当に何をやってんだ国王は。
「あんた、ほかに生き残っている聖女はいるか?」
「わかりません。多くの聖女はヌヌ石柱群に駆り出され、
そこで戦い命を落としました。ほぼ全滅です」
「あんたはなんでここに?」
「私は総指揮官であるユーリ王子の補佐として
ずっとそばに付き従い、戦っていました」
「え?なんでユーリが総指揮官なんて任されているんだ、
聖女だろあいつ」
国王の息子で在りながら、聖女の血を引くという
複雑なユーリの事情については知っていた。
俺が王国を出た時は聖女として他の聖女たちと
聖なる森で暮らしていた。
あいつは兄弟の中でも一番年下で、
しかも王子としての地位ははく奪されていたはずだ。
「ユーリ様は聖母様がお亡くなりになり、
魔族が王国を襲った時、聖女たちを率いて誰よりも勇敢に
戦われました。
そのため国民からは彼を再び王子に
という声が強くあがりました。
国王様はそれに押し切られる形で再びユーリ様を
王子として王宮に迎え入れたのです」
「俺がいない間にそんなことが…
それよりユーリはどうなったんだよ」
「魔族に捕らわれ、魔王の奴隷とされました…
わたしは何もできなかった…!
あの方が魔族たちに辱めを受けているのに、何もできなかった。
お願いです、勇者様、私に力を貸してくれませんか?
ユーリ様をお救いしたいのです…!どうか、どうか」
「だめだ」
「なぜですか」
「あんたは聖女だろう。本来あんたの役目は国を、国民を守ることだ。
だから生き残った聖女たちを連れて、国に戻って結界を張り直せ。
何を血迷っているんだ」
「…くっ、しかし」
「ユーリは俺が必ず助けるから」
いくら関りが少ないとはいえ、ユーリは弟だ。
それを見捨てるなんて兄として最低だろう。
そんな男が魔物ハーレムなんて作れるはずがない。
と思ったところで思い出した。
「他の王子達はどうしたんだ?ほらいただろう。第2、第3、第4王子。
いつも仲良く団子さん兄弟が。あいつらも戦場にいたんだろう」
「あの方々は…いえ、あいつらは、決して許せません」
「どうしたんだ?急に物騒だな」
「そもそもユーリ様があのような目の遭ったのもあれらのしわざなのです」
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