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第一章 戦う聖女

逃げ延びた王子達ー暗い森にてー

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逃げ延びた国王、並びに王子達。

「はぁ~、寒―」

王子達が焚火に当たり、暖を取っていた。

「うまくいったな」

「ああ、あいつはよくやったよ。こんな簡単に魔族どもから
逃げられると思わなかった」

「あいつ、かなり目立っててな。魔族どもはあいつに釘付け。
本当にいい囮だったよ」

「…他の目障りな聖女たちも上手く始末できたよな」

「ああ、一網打尽だ。わざと魔族に囲まれるところに
進軍させてやった。足場の悪い中、魔法もうまく使えず、
あっさり魔族どもにやられてたぞ」

「いいざまだ」

「それより隣国からの救援はまだかよ。
あんだけ大金はたいたんだから、さっさとしろよな」

「国民から搾り取れるだけ取っておいてよかった。
本当、備えあれば憂いなしだよなぁ」

「今ごろ俺たちをバカにしたバカ国民共もみんなまとめて
魔族に殺されているだろうよ」

「恩知らず共にはお似合いの最後だ」



「ご機嫌麗しゅう。王子様方」

そこに国の貴族がやってくる。
恭しく帽子を取り、お辞儀をした。

「ああ、お前か。ほかの商人と貴族共も一緒か?」

「はい、貴女様方のご慈悲のおかげで、我ら一同
無事に魔族どもから財産と家族守ることができました」

「ああ、いいっていいって。
貴族と金持ちと俺たちに味方した賢い奴らはちゃんと
守ってやるぞ。なんたって俺たちはこの国王子だからな」

「なんとお優しい。それでこそ王子」

「国は俺たちが生きてさえいればまた立て直すことができる。
国民だって自分たちの命よりも俺たちが逃げ延びたことを
喜んでいるさ。
あいつ、ユーリも同じ気持ちだったろうよ。
最後まで俺たちが無事で逃げることを望んでいた。
でも、あぁ…、血の分けた兄弟につらい役をさせちまったなぁ」

そうして月のない暗い空を見上げて、第3王子が涙をぬぐう。

「そうでございましょう。ええ。
本当につらい決断をされましたね。
ですが、決してそれは間違っておりません。
最善の選択でした。
ユーリ様は実に尊い犠牲でした」

貴族も王子に合わせて、悲痛な表情で応対する。

「おいおい、そんな湿っぽいのはなしだぜ。
これからお前たちにはまた、国を立て直すために
働いてもらわなきゃならねーのに。
今日は飲もうぜ。今だけは苦しみを忘れて飲み明かそうぜ。
そうじゃなきゃあいつらを送ってやれねーだろ」

「ええ、そうですね」

「俺たちは必ず国を立て直し、憎き魔族を皆殺しにしてやるんだ」

「では、国の安寧と魔族への復讐を願って乾杯!」

「乾杯!!」

鈍く光る盃に血のように赤いワインが注がれる。
負け戦の後とは思えないほどに陽気に宴が続いていく。

やがて、すべてが闇に隠されていった。
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