無能で鬱のリーマン転生～幸運の天使でひっぱりだこに～

1章

人生初のディープキスー神父と天使って？－

焦点が合わないほどの距離に男の顔があり、目を瞑って俺の唇を貪っている。

は？

ぐちゅぐちゅっ♡ちゅっくちゅっ♡

耳に響くのは下品な水音と合間に漏れる吐息。

こうして俺は人生初のディープキスを強姦魔にあっさり奪われた。

「うー‥ん゛ー！ぁ♡ちゅっちゅっ♡」

やっと動くようになった手足をバタつかせ、がむしゃらに男の拘束から逃れようとするが、馬乗りにされた体勢では全く効果がない。

「ちゅばっ♡ぶちゅぅうう♡ぬちゅくちゅくちゅ♡ぶちゅっ♡」

お互いの唾液で口周りからだらだらになっている。

息が、息ができない。
見開いた眼はぐりんと上を向き、白目をむきかけたところで、
やっと解放された。

「げほっ、げほっ、げーっ、うぇっ、う」
「大丈夫か？」
「う、ひぃっ、近づくなっ」

気づくと至近距離に男の顔があり、
俺は手を振り回して男から離れた。

は、顔面国宝か？

目の前にいたのは顔面偏差値90越えのイケメン。
そんな男が叱られた犬のような顔でこちらを見つめている。

「近づいてはだめか？」

そんな男が首をかしげて尋ねてくるから、
思わず、『いいよ！』と言いたくなる。

いやいやいやだめだろ。
さっきまでの悪行を思い出せ。

しかしこの変態、目がつぶれるほどの美形である。

「だめです」
「なぜ？」
「なぜってあんた…寝てる人に、ぇっちないたずらはだめだと思います、からです、はい」
「でも感じていただろう？」
「…い、感じてないし」
「本当か？」
「…さてっ、そんなことよりあんたなんですか？人の体勝手にまさぐって。変態ですか？盗賊ですか？」
「神父だ」
「…ん？」
「神父だ、そして私の使命は君のような天使と交わって手に入れることだ」
「…待ってください、情報量が多い」

神父は色気たっぷりの目で意味ありげに俺を見つめている。
そして、その手が俺の手に重ねられそうになったので、すすすっとすかさず避ける。

俺は空を見上げた。
ああ、青空は変わらない。綺麗だなぁ。