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謝罪とお招き 6

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「す、ストーカーは困りますけど、シュリさんのは違いますよね?」
「ああ。アレは、ミーナバカだが、そういう陰湿(いんしつ)な真似(マネ)はしない」
 スーハーと何度か深呼吸をして、どうにかこうにか笑いを落ち着かせて、目尻ににじんでいる涙を拭いながら言った私の言葉に、キッパリと王様がなかなか辛辣(しんらつ)なそれを返してくれれば、フォレストのみな様がそれぞれ「そうですね」と同意で重々しく頷いてくれていた。
 ちょっと!!言い出したのは私だけど、少しはフォローしたげなよ!?
 ……って、逆なのかな??
 もう、私と出会う前から様々(さまざま)な対象、色んなパターンがあって、こうやってフォローするのも毎度過ぎて疲れちゃってるのかな??
 でも、もしそうならそうだよね~。
 毎度毎度のこととなると、ディーバさんの手慣(てな)れた見えない大きな手での対処法も、彼にしては珍しい辛辣な言葉遣(ことばづか)いも「またか」と思えばそうなるのも納得がいくし、こんな状況で言うのもなんだが、なんというか、「これぞ兄妹!!」という、お互いに離れていても会話しなくてもなんとなく判りあってる感じが良いなと思えてしまう。
 そういう風に感じるのは、私がそういう絶対的な繋(つな)がりに憧(あこが)れを抱(いだ)いているからなのかもしれないけれど。
 どこか暴走しがちなイメージのある妹なシュリさんに、幼(おさな)い頃のお兄ちゃんなディーバさんが半泣きで後ろから追いかけていき、現在の首脳陣であるこども達が苦笑いしながらついていく姿が脳裏に映(うつ)る。
 それは私の勝手な想像、妄想でしかないけれど、きっとそう間違ってはいないと思うし、アルゴスくんとマルケスくんの姿もそうあれば良いなと願っている。
「しかし、シュリ様が同性の女性を崇拝するとは、ミーナ様の人柄がなせる技でしょうな~」
「っ!!」
 うんうんとアゴヒゲを撫でながら告げるフリストさんには悪いが、人柄云々(ひとがらうんぬん)より、シュリさんの私へかける情熱は「美味しい食べ物大好き!!」な食い気の方に比重(ひじゅう)がある気がしないでもない。
 自己紹介で「ミーナ様の作る料理が大好きです」とか話してた気がするしね~。
 でも、私の身の安全を守るためにもと前もって王様達が「私の素性(すじょう)はもちろん、新たな料理を作り出していることは伏せる」と言ってくれていたから、迂闊(うかつ)なポロリが無いように緩(ゆる)みがちな気持ちにストッパーをかけて、言動には注意しなければいけない。
「そんな、誰からも好かれるミーナ様にお願いがあります」
 ふっ!?どうした!?
 本気に真剣なんだけど!!
 これは茶化(ちゃか)しちゃダメなやつ!!
「お願い、ですか??」
「はい」
 雰囲気(ふんいき)すら変えていきなり切り込んできたフリストさんの言葉に、わざとおうむ返しで答えれば、彼は背中をピッと伸ばし、小さく頷いてくれた。
 王様は?皆は……?知らない、か。
 唐突(とうとつ)なそれに、「みんなは知っているのか??」と視線を回してみれば、場の空気に流されたフリストさんの独断だったのか、フォレストの皆はもちろん、オーシャンの方々も目を丸くしている。
 そして、フリストさんは私の目と、膝に置かれているのであろう彼自身の手との間を何度か視線を彷徨(さまよ)わせてから、意を決したのか、再び口を開いた。
「突然の申し出になりますことをお許し頂きたい。ですが、願わくば、子供達の希望を叶えたいと……」
 まっすぐに私の目を見つめるそれは子供達への慈愛(じあい)に、いや、同じくヘナチョコな大人に育てたくないという強い意志に彩(いろど)られている。
  子供達の希望。
 って、まさか!!
 この場に居る全員が、フリストさんの次の言葉に思い至ったのか、ガバッと音がしそうな勢いで振りあおいだ。
 私ともどもこの場に居た人間が予想するのは『こどものクルクル(貿易)にて結ばれた縁より、アルゴスくんとマルケスくんをオーシャンへご招待』という、ランくんとリーンくんがカブトムシのお礼にと二人に言った希望(きぼう)を叶(かな)える魔法の言葉ではないかと思ったのだ。
 はたして、フリストさんのお願いは?
「ランとリーンの願いに則(のっと)り、アルゴス様とマルケス様を含めた皆さんで、我が国オーシャンへお越しいただけないかと思います」
 キター!!
 本気と書いてマジと読むレベルで、予想が当たったー!!
 予想はしていたけれど、衝撃が強いね!?
 それはオーシャン組もフォレスト組も皆、同じだったようで、いくら互いに懇親会にしようと了承(りょうしょう)しあったとは言えども、外交の場ということを忘れたように目を真ん丸にし、ポカンと呆(ほう)けた表情を露(あらわ)にしていている。
「もちろん、急な話しになりますので今すぐということが難しいのは承知(しょうち)の上です。ですが、遠い未来でも生涯の内、気の置けない関係で素直に笑い合える。そんな光景が見たいと……、思ってしまいました」
 政治としては難しいかもしれないと理解した上で告げられたフリストさんの言葉は所々震えていたけれど、聞いている者の心を温め、そんな未来があったら良いなと素直に思わせるチカラがあった。
 ああ。素敵だ。
 国のしがらみなんてもろともせずに、子供達が手に手を取り合って、無邪気に笑いあう。
 本当に素敵だ。
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